その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は勝間和代さんの『 40歳からの「仕事の壁」を越える勝間式思考 5年後、望む仕事で稼ぎ続ける自分になる戦略 』です。

【はじめに “常識”にとらわれず幸せを求めて働くべき理由】

 我慢している人がとにかく多い、いや、多すぎる!

 これは、私が常々感じていることです。私は2011年4月から「勝間塾」という私塾を運営しています。運営方針は「なりたい自分になるために、仲間と支え合いながら学んで成長できる場」にすべく、目標達成のためのノウハウを伝授しながらサポートするというものです。30代~40代の方が多く、スキルアップや転職を目指す会社員や公務員、個人事業主から会社の経営者になった人、得意の料理でケータリングサービスを始めた主婦などさまざまです。が、男女を問わず、皆さんに共通しているのは、入塾する前まで、人生を変えたいと思いながらじっと我慢してきた、ということです。

 今、これを読んでくださっている皆さんも、きっといろんなことを我慢していると思います。ラッシュ時の満員電車をはじめ、仕事量と給料が見合わないこと、有休の取りにくさや望まない異動、サイコパス気味な上司、パートナーの無理解、ワンオペの育児や介護など。しかも、それらは我慢するのが当たり前だと思っている人が多いですよね。だって、私たちは小さいころから、何かにつけて「我慢しなさい」と言われ続けているから。そう思うのは仕方がないのです。

 いろいろなことを我慢していると、自分の希望よりも周囲の意見や指示を優先し、社会の風潮に従うようになるので、言動がとても常識的になります。それを評価されると、我慢してきた甲斐があった、と「大人の自分」に納得感を得られます。そして、我慢した先に成功があると信じてさらなる我慢をした結果、継続力や向上心を養えるのは確かなことです。しかしその半面で、やりたいことを封印して、夢や理想について考えないようにしているはずです。それは、思考停止に他なりません。そう、我慢をしすぎる一番の問題は思考停止に陥ることにあって、やりたいことを実現する思考力や行動力を発揮できなくなってしまうのです。

 では、我慢しすぎることも常識に捉われることもなく、思考力や行動力を取り戻すにはどうしたらいいのでしょうか。その答えは意外と簡単でして、自分が何を大事にして生きていきたいか、ということを意識して、それを優先して生活するだけでOKです。

 私たちは働くことを通じて世の中に貢献し、その報酬として収入を得て、自分の生活を豊かにするために使う、という循環の中で生きています。これが本来の働く意義ですが、実際はどうでしょうか。タスクやノルマに追われるだけの生活になっていませんか? ちゃんと、自分の心身を満たして、幸せを感じることができていますか? 

 一口に「報酬」と言っても、給料やボーナスを得る金銭的報酬や、やりがいや生きがいを得る精神的報酬、スキルや経験が増える技術的報酬、人の役に立つことが喜びになる貢献的報酬、評価と次の機会を得られる信頼的報酬など、さまざまな種類の報酬があります。報酬は1つだけではなく、何個も求めていいのですが、「自分が何を大事にして生きていきたいか」ということが報酬と一致していないと、幸せは得られません。例えば、仕事に金銭的報酬と精神的報酬の両方を求めているのに、片方だけだと不満とストレスがたまりますよね。逆に、金銭的報酬だけを求めているなら、やりがいを感じられなくても、また職場の人間関係が悪くてもスパッと割り切ることができます。

 今、あなたが得ている報酬は何で、本当に求めている報酬は何でしょうか?

「40歳の壁」の裏には「選別」がある

 昨今「40歳の壁」というのが話題になっていますが、40代になって自分の生き方や働き方に疑問を抱いている人も、実際に得ている報酬と本当に求めている報酬が一致していない可能性が高いでしょう。そのせいで迷いが生じてしまっている状態だと思います。

 そもそも、40代になると壁を感じやすいのは、働き方や生き方において「選別」が始まるからです。会社で出世できる・できない。役員になれる・なれない。独立や起業ができる・できない。結婚や離婚ができる・できない・マイホームを買える・買えない、など。20代や30代は、特別なことをしなくても、周囲と大差なく過ごしてこられたのに、40代になると急に分岐が始まって、差が明らかになるわけです。ミッドライフクライシス(中年の危機)のような現象は昔からあったことですが、社会の急激な変化や生き残り競争の激化から、それが早まっているように感じます。

 もっとも、自分の働き方や生き方に対して疑問を抱いたり、もんもんと悩んだりすることは全く悪いことではありません。それだけ、真剣に向き合っている証拠です。働き方も生き方も多様になったことで、自分にはどれが合うかを自分で選ぶ必要が出てきただけだと考えるといいでしょう。

 今の40代50代が社会人になった頃は終身雇用制度が大前提で、就職したら定年まで1つの会社にいるのが“普通”でした。会社の先輩のあとについていけば、壁もラクに乗り越えられて、自動的に人生が進みました。が、もはや終身雇用制度は神話となり、転職や独立が一般的になって、あとをついていきたい先輩の存在もない。つまり、自分の働き方は自分で開拓していく時代になったということです。

 この開拓を、新らたなチャレンジの機会として前向きに捉えることができるか。それとも危ない橋は渡れないと背を向けて、我慢し続けるか。それが、40歳の壁を乗り越えられる人と、そうでない人の大きな違いだと思います。

正しいリスクテイクが自分の未来を拡大する

 もし、自分で開拓したいと思っているのに勇気が出ない人は、「失敗も学習」である、と考えてみてください。恐れるべきは失敗することではなく、失敗を避けることで学習の機会を逃してしまうことです。学習の機会損失を続ける限り、残念ながら、なりたい自分にはなれません。

 失敗をリスクと考えると、二の足を踏む気持ちはよく分かります。しかし、リスクとリターンは表裏一体で、リスクを負わずにリターンを得ることは不可能です。だから、いきなり大きな挑戦をするのではなく、小さな挑戦からトライして、リスクを取ることに慣れていきましょう。例えば、1人旅をしてみる、苦手な人からの誘いは断る、新機能が備わった家電やデジタル機器を買う、など。そういったことで小さな成功体験を積んで「リスク耐性」をつけてから、資格取得や転職活動、独立準備に進むイメージです。リスクテイクは、さまざまな経験や失敗をする中でさじ加減を学んでいくものです。段階的に習慣化することが、リスクテイクの上達のコツです。

 大丈夫、開拓する力は誰にでも備わっています。そう思えないのは、再三繰り返している通り、我慢をしすぎてきたせいです。知らず知らずのうちに、自分を小さな枠にはめてしまっているだけ。まずは自分に、枠から出ていいんだよ、と許可を出してあげてください。

 本書では、私が主宰する勝間塾で皆さんにお伝えしている「5年後、なりたい自分になるため」の行動指針を第1章で紹介した後に、第2章からは皆さんが直面していそうな働き方や生き方の具体的な悩みをロジカルに解決しています。読み進めるうちに、悩んでいるのは自分だけではない、こういうふうに考えればいいのか、と心の風通しがよくなると思います。また、それぞれの悩みに効く書籍も挙げておきました。どれも私が実際に読んで、行動変容につながった名著ばかりです。それらが、皆さんの開拓する力につながるように祈っています。

勝間和代


【目次】

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