その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は西村則康さんの『 中学受験成功への鍵は「親メンタル」! 「受験で勝てる子」の育て方 』です。
【はじめに】
みなさんは「中学受験」に対して、どんなイメージをお持ちですか?
「中学受験の勉強は難しいようだから、自分が教えられるか心配……」
「親のサポートが不可欠らしいけど、共働きだと不利になるのでは?」
「低学年から塾に通っている子もいるのに、今からでも間に合うの?」
などなど、なんだかとてつもなく大変な世界に飛び込むようなイメージを持っている方が多いような気がします。
確かに今の中学受験は、12歳の子どもの頭で覚えるには、学習範囲の量も内容の難しさも限界に達していると感じます。また、近年首都圏では中学受験者数が増加傾向にあります。ライバルが増えたことによって、これまで以上に第1志望校の合格の壁が高くなっています。
ですが、中学受験の勉強を始める時期や毎日の家庭学習の進め方、正しい勉強のやり方といった「受験の基本」は、実はこれまでとそれほど大きくは変わっていません。
今は情報過多の時代。ひと昔前までは中学受験情報といえば、ごく一部の専門家のアドバイスが親御さんたちの道しるべになっていましたが、今は中学受験のプロだけでも相当数いますし、子どもを難関校に合格させた先輩ママの合格体験記ブログや、現在進行中の受験パパの受験攻略インスタなど、中学受験情報はあふれんばかりです。こうした情報を追っかけてしまうと、「やってこなかったこと」「できないこと」「できそうにないこと」ばかりが頭に浮かび、まだ何も始まっていない今から不安と焦りでいっぱいになってしまいがちです。
「えっ? 中学受験の勉強って小学4年生からスタートするんじゃなかったっけ?1年生から塾に入れないとダメなの?」
「子どもに毎日勉強を教えていたって先輩ママが言っていたけど、私にはそんなことできそうにないな⋮……」
「今でさえ、毎日の生活が綱渡り状態なのに、仕事をしながら子どもの受験サポートなんてムリムリ」
などのようにです。
仕事でもそうですが、たくさんのタスクを抱えていると、「一体、何から始めたらいいの?」と取りかかる前からオロオロしたり、「果たしてちゃんとうまく回っていくだろうか?」と漠然とした不安に襲われたりするものです。でも、「いつ」「何を」「どのように」進めていけばいいか、あらかじめ予定や見通しが立っていれば、「今の時期はこれだけやればいいんだな」「ここに気をつけたらいいんだな」とやるべきことが明確なため、慌てることはありません。中学受験もそれと同じで、あらかじめこれからの3年間がどのような日々になっていくかを知っておけば、ひどく恐れることはないのです。
ただ、仕事と大きく違う点は、相手が成長途中にいる小学生の子どもだということ。子育ては大人同士で構築される仕事と違って、「これをやっておけばスムーズに事が運ぶ」といった単純な展開にはなりません。本書でも長年中学受験のプロとしてたくさんの子どもとその親御さんと接してきた私が考える正しい勉強のやり方や進め方をご紹介していきます。しかしこれらはご家庭で受験勉強を進めていく上でのヒントにはなると思いますが、「これをやったら、必ず勉強ができる子になる」というわけではありません。
中学受験の「難しさ」は、問題の難しさだけにとどまりません。むしろ、本当の難しさは別のところにあります。
体力的にも、精神的にもまだ未熟な小学生の子どもは、数年後に控えている入試に向けて、毎日同じモチベーションで頑張り続けることはできません。ノリノリで勉強をする日もあれば、頑張れない日もあります。また、受験をするのは子どもなのに、いつまでたってもやる気を見せてくれないこともあります。そんな幼さが残る小学生の子どもを勉強に向かわせるには、子どもの気持ちが乗ってくるような大人のかかわりが必要です。
でも、人間一人ひとりの性格が違うように、どのような環境で、どのような言葉がけをしてあげると気持ちが乗ってくるかは、子どもによって違います。だから、中学受験のプロが言うことも、先輩パパ&ママが言うことも、わが家には当てはまらないことの方が多かったりします。
「今、この子はどんな気持ちで勉強しているのかな?」
「この子が気持ちよく勉強に向かえるようになるには、どんな言葉が響くのだろう?」
結局のところ、中学受験の準備期間は、試行錯誤の日々。このやり方をすれば正しい答えが出るといった「受験勉強の公式」は存在しないのです。ですが、わが家なりに試行錯誤をくり返していく中で、「この子は大げさに褒めるよりも、ふとしたときにさりげなくいいところを言ってあげるとうれしそうな顔をするんだなぁ」と子どもの喜ぶポイントに気づけたり、「ちょっと前までは早く宿題を終わらせようとして、字が雑になっていたときもあったけれど、最近は丁寧に書くようになったな。本人なりに意識するようになったんだな」と小さな成長を発見できたりします。この親子で向き合う時間こそが、かけがえのないものなのです。
近年、中学受験で主流になりつつある共働き家庭の中には、親である自分が忙しいために、子どもの勉強を十分にサポートできないという罪悪感を抱いている方がいます。また、自分が仕事をしていることで、子どもの受験が不利になることがないようにと、幼児や低学年のうちからたくさんの勉強をやらせている方もいます。
ですが、中学受験の勉強自体は必ずしも親が教えなければいけないというわけではないし、早くから勉強をやらせたからといって有利になるというわけではありません。確かに親のサポートは必要ですが、頑張らなきゃいけないのはそこではないのです。いいえ、頑張る必要もないのです。ただ、ちょっとした努力は必要です。
大事なのは、今の時代の中学受験を知った上で、どうしたらわが子が気持ちよく勉強に向かえるかを考え続け、子どもに寄り添う姿勢を持つこと。これに尽きます。
中学受験の目標は志望校に合格することですが、それがゴールではありません。これから続いていくお子さんの人生のほんの通過点に過ぎません。だから、結果がすべてではないのです。
それよりも、「中学受験」という家族のビッグプロジェクトの中で、親子で泣いたり笑ったりした日々の方がずっと後に残る思い出になります。渦中にいるときはそんな心の余裕はないかもしれませんが、親御さんがちょっと意識を変えてみるだけで、過酷なイメージばかりが先行してしまう中学受験が、「私たち親子を成長させてくれる良い機会」と家族の絆をより強固なものにしていけるチャンスと捉えられるようになります。その経験ができるというだけで、すでにもう幸せなのです。
そんな親子の絆は、お子さんに安心と自信を与えます。そうして高学年で失速することなく、「受験で勝てる子」へと変貌を遂げていくのです。そんなわが子の勇姿を見届けることができたとき、親子で「後悔しない受験」を終えることができるはずです。そう思ってこれから始まるでこぼこ道を親子で一緒に迷い、楽しみながら進んでいきましょう。数年後に見る景色は、今よりもきっと輝いているはずです。
【目次】



