その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は西村則康さんと辻義夫さんの『 中学受験の成功は幼児期・低学年がカギ!「自走できる子」の育て方 』です。
【はじめに】
「中学受験の準備はいつから始めたらいいのでしょうか?」
よく幼児や低学年向けのセミナーで挙がる質問です。
そんなとき、私はこう答えています。
「実は、受験に向けた土台作りは生まれたときから始まっているんですよ」
すると、多くの親御さんは「えーっ! 生まれたときから? もう手遅れってこと?」と驚き、さらに質問をたたみかけます。
「何をやっておけば良かったんですか?」
「今からでは間に合いませんか?」
安心してください。もちろん、今からでも十分間に合います。
中学受験の指導に携わるようになって40年以上が経ちました。これまでにたくさんの子どもたちとご家庭を見てきましたが、ここ数年気になっているのが「何をすれば成績を上げられるか」といった質問です。
昔も今も、中学受験をするご家庭の多くは、受験をするからには、できるだけ上の学校を目指したいという考えをお持ちです。その考え自体を否定するつもりはありませんが、どうも今の親御さんたちは「○○をすれば、子どもの成績がぐんんぐん上がる」「○○をやらせておくといいらしい」と「何をやらせるか」に目が向きがちのように感じています。
特に中学受験で主流になりつつある共働きの家庭は、親である自分が忙しく、子どもの勉強を十分にサポートできない分、「わが子のために良さそうなもの」に走りがちです。そして、将来的に中学受験をするとなったときにお子さんが困らないようにと、小さいときからあれもこれもやらせすぎてしまうのです。
先を見据えて、早くから準備をしておくことは、賢いやり方だと思います。しかし、子育ては大人同士の関係で構築される仕事と違って、「これをやっておけばスムーズにいく」という単純な展開にはなりません。「これをやっておけば、必ず勉強ができる子になる」といった因果関係は存在しないのです。ですが、たまたまよいタイミングで何かの経験をして、それが知的好奇心を刺激し、学びに向かうことがあります。この「偶然」を信じて、日々の生活を大切に過ごしてほしいのです。そして、それはお子さんが生まれた瞬間から始まっています。
長年、中学受験の指導に携わってきた私が近年感じるのは、中学受験でぐんぐん伸びていく子と伸び悩む子の一番の違いは、幼児期・低学年の過ごし方にあるということ。
「この子がこんなに目を輝かせて難問に立ち向かっているのは、幼少期のあの熱中体験があったからなんだろうな」
「この子にうっかりミスが多いのは、小さい頃から早くたくさんの問題を解くように言われていたからなんだろうな……」
そんなふうに、子どもの表情や筆跡を見ていると、その子が幼少期や低学年のときにどのように過ごしてきたかが想像できてしまうのです。
そして、伸び悩む子を見て、「小さい頃にもっとこう過ごしていれば良かったのに」「これをやっていなければ良かったのに」と、残念に思うことが多々ありました。
本書では、この「もっとこう過ごしていれば良かったのに」と「これをやっていなければ良かったのに」と思うことを、それぞれ具体的にご紹介していきます。
幼児期・低学年のお子さんにぜひおすすめしたいのが、身体感覚をともなった経験です。
小さいお子さんの場合、その多くは遊びです。逆に控えてほしいのが、1週間のスケジュールを勉強や習い事などで埋め尽くすといった「やらせすぎ」です。
幼児期・低学年の親の関わり方として望ましいのは、「何をやらせるか」ではなく、「どのように過ごすか」。そこに目が向けられると、お子さんはのびのびと成長します。
結局のところ、中学受験の成功は、お子さんが「勉強は楽しい!」と思えるかどうかにかかってくるのです。
大人でもそうですが、楽しいと思うことは、どんどんハマっていくし、うまくいかないことがあっても、楽しいことなら「もうちょっと頑張ればなんとかなるかもしれない」と踏ん張りがききます。中学受験の勉強もそれと同じ。「知らないことが分かるって楽しいな」「できなかった問題が解けるようになるとうれしいな」と思うことができれば、子どもは自走していきます。でも、その土台を作る幼児期・低学年のときに、どんな過ごし方をしてきたかで、勉強に対するイメージは変わってきます。
今、この本を手に取ってくださった方の多くは、本書にある「自走」や「逆算」といった言葉に惹かれ、何かいいことや、役に立ちそうなことが紹介されているのだろうと期待されたのではないかと思います。
しかし、本書は「3歳の時にはこれをやらせて、5歳の時にはこれをやらせた方がいい」といった英才教育本ではありません。「○○をすれば、子どもの成績がぐんぐん上がる」のではなく、お子さんが何かのタイミングで偶然、学びに向かうことを期待して、幼少期にどんな過ごし方をするといいかをご紹介しています。
ただし、これらをぜんぶ網羅する必要はありません。「これならうちでもできそう」「これをやってみようかな」というものがあれば、日々の子育てに取り入れていただければ十分です。できることから始めてみましょう。
名門指導会代表 西村則康
【目次】



