その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は榎本博明さんの『 なぜあの人は同じミスを何度もするのか(日経プレミアシリーズ) 』。「プロローグ」をお届けします。
【プロローグ】「なぜ、ああなのか?」の深層
世の中には、じつにさまざまな人がいる。「なぜ、ああなのか?」と理解を絶する人もいる。かかわりがないなら、「おかしな人がいるものだ」と思うだけだが、職場や取引先の人だとそうもいかない。いったいどういうことなのか、どう対処したらよいのか、と頭を悩ますことになる。
「なぜあの人は何度注意しても同じミスを繰り返すのか?」
「あの人はいつもやる気満々なのに、なぜしょっちゅう会議に遅刻するのか?」
「あの人はとても有能だし、いつも仕事に真剣に取り組んでいるのに、なぜうっかり忘れるミスが目立つのか?」
「なぜあの人はお客とのトラブルが多いのか?」
「なぜあの人はいつも愚痴ばかりなのか?」
「なぜあの人はすぐに諦めるのか?」
「あの人はけっして頭が悪くないのに、なぜこちらの言い分をわかってくれないのか?」
「なぜあの人は前回の会議で自分が言ったことを覚えてないのか?」
「なぜあの人は言うことがコロコロ変わるのか?」
こうした理解に苦しむ相手とやり取りしていると、イライラするし、仕事そのもの以外の余計なストレスを抱え込むことになりかねない。
特定の人物でなくても、日頃の人間関係において、「なぜなのか?」と疑問に思うことも多いのではないか。
「なぜこんなに記憶がスレ違うのか?」
「当たり前のことなのに、なぜ話が通じないのか?」
「なぜこんなに『言ったはず』『聞いてない』といったトラブルが多いのか?」
「自分の記憶に絶対間違いはないのに、なぜみんなは覚えてないのか?」
「なぜあの人と話しているとやる気をそがれてしまうのか?」
じつは、このような職場や仕事がらみの理解しがたい現象の背後には、記憶の心理メカニズムが働いている。記憶というより人間性や能力の問題ではないかと思うかもしれない。でも、記憶の深層心理を踏まえると、「なぜ、ああなのか?」と理解不能だった事例も、「なるほど、そうだったのか」と腑に落ちることが多い。
私たちは、思いのほか記憶の深層心理に支配され、動かされているのである。そこを踏まえれば、理解しがたい人物の心理メカニズムが理解可能になるだけでなく、周囲の人たちに対する苛(いら)立ちも薄れ、さらには自分自身もより建設的な行動を取れるようになるはずである。
そこで本書では、具体的な事例をもとに、記憶の深層心理を探りながら、理解に苦しむ人物や現象に対して、どう理解し、どう対応したらよいかのヒントを示すことにしたい。
【目次】





