その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」をご紹介します。今日はマーシャル・ゴールドスミス、マーク・ライター(著)、斎藤聖美(訳)の『 よい人生は「結果」ではない 世界最高のアドバイザーが贈る後悔しない人生の法則 』。「はじめに」より一部抜粋してお届けします。
【はじめに】より一部抜粋
自己啓発の本は、読者が長年の課題を克服できるようなアドバイスを書く。すぐに思い浮かぶのは、痩せる、金持ちになる、愛する人を見つけるという三大テーマだ。私は今まで、仕事の成功とプライベートの幸福が交わるところで重要となる行動について書いてきた。『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』では、職場における自滅的な行動を根絶させるにはどうしたらよいかに取り組んだ。『コーチングの神様が教える「前向き思考」の見つけ方』では、モメンタムを止めてしまうキャリアの挫折にどう対応するかを書いた。『トリガー 6つの質問で理想の行動習慣をつくる』では、好ましくない反応や選択を引き起こす日々の出来事をどう認識したらよいかを扱った。
本書で取り組むのは、後悔だ。
私たちの人生は両極端の感情の間を行ったり来たりするものだと私は考える。1つの極には、「充足感・達成感」といった感情がある。私たちの「充足感・達成感」を決めるのは6つの要因で、私はそれを「充足要素」と呼ぶ。それは次の6つだ。
・人生の目的(パーパス)
・人生の意義
・達成すること
・人間関係
・エンゲージメント
・幸福
この要素はどれも、努力をしようという気にさせてくれる[※]。人生の目的と意義を見つけようとする。達成したことを認めてもらおうとする。人間関係を保とうとする。何であれ、やっていることに没頭して頑張ろうとする。幸せになろうとする。私たちは多大な時間とエネルギーをこの6つに投入する。この6つの要素は壊れやすく、変わりやすく、儚(はかな)いものだから、私たちはしょっちゅう注意し、努力し続けなくてはならない。
心の満足度を測るのに、幸福は誰もが使う温度計だ。だから、私たちはいつも、私は幸せだろうかと自問し、他の人から幸せかと聞かれてもとやかく言わない。だが、幸福は夢のように儚い心の状態だ。鼻が痒(かゆ)くなって、かく。治まってやれやれと思うと、部屋の中を1匹のハエが飛び回っていて気になって仕方ない。窓から冷たい風が急に吹き込む。どこかで水道の蛇口の栓が緩んで、水のポタポタ落ちる音がする。1日中、こういったことが絶えず起きてくる。幸せな気分はいつも、一瞬にして消えていく。人生の意義、パーパス、エンゲージメント、人間関係、達成も同じくもろいものだ。手を伸ばして手に入れるが、恐ろしいほど急速に指の間からこぼれ落ちてしまう。
もし、(a)選択、リスク、6つの充足要素を手に入れる努力と、(b)それによって得られるものが同等の価値になるのなら、世界は公平で公正だと発見したような気になって、充足感が長く続くのではないかと思う。それが欲しかったから手に入れる努力をした。それを入手したことによって私が得たものとそのための努力とは同じ価値だ。言い換えれば、私は自分でそれを勝ち取ったんだ、と自分に言い聞かせる。私たちが人生で努力するのは、たいていがこの単純な流れで説明がつく。だが、これから見ていくが、それは人生の完璧な姿ではない。
後悔は、充足感の対極にある。
キャスリン・シュルツが2011年のTEDトークで後悔について素晴らしい話をしている。その言葉を借りれば、後悔とは、「過去に何かを別の形でしていれば今はもっとよくなっていたのに、もっと幸せになっていたのにと思うときの感情」である。後悔は、行為主体性(後悔は自分が作るもので他人のせいにはできない)と想像(過去に異なる選択をしていたら今もっと好ましい結果になっていたことを想像しなければならない)の悪魔のカクテルだ。後悔は自分が100%コントロールできるものだ。少なくとも、人生でどのくらいの頻度でするか、どのくらい長くこだわるかという点はコントロールできる。ずっと苦しみ、途方に暮れたままでいることもできる(友人のリチャードの例のように)。あるいは、後悔で人生が終わるわけではないし、きっとこの先もまた後悔するだろうと思って乗り越えていくこともできる。
後悔はワンパターンではない。男性のシャツにS、M、L、XL、XXL、それ以上に大きいサイズがあるのと同じだ。はっきりしておきたいのだが、ちょっと口がすべって同僚の気を害してしまったとかいったような些細な後悔や、たまたま起きてしまった失敗などは本書で扱うつもりはない。こういった残念な失策は、心から謝罪することでたいていは解決できる。タトゥーのような中低度の後悔のことも考えない。キャスリン・シュルツのTEDトークはタトゥーがきっかけだった。タトゥーの店を出たとたん彼女は猛烈に後悔した。「私、何を考えていたのかしら?」。後悔するような選択をしたことから、彼女は「無防備」で「無保険状態」について教訓を得て、これからはもっと上手にやっていこうと自分に誓い、やがて彼女はそれを乗り越えるのだが。
本書で見ていくのは、桁外れの存亡をかけるような後悔だ。運命の行く末を変えてしまうような、何十年と記憶に残って私たちを苦しめるものだ。子供を持たないと決めていたが、気が変わったときにはもう遅すぎた。大切な人が自分から離れていくようにさせてしまった。採用側は問題ないと思っているのに自分で自信が持てなくて最高の職を断ってしまった。学校で真剣に勉強をしなかった。定年退職してから、もっと自由な時間を作って仕事以外で関心事を見つけておくべきだったと思う。こういった類(たぐい)の後悔だ。
難しいことだが、充足することにフォーカスしていれば、存亡をかけるような後悔を回避するのは不可能ではない。現在もう十分幸せで満ち足りていると思っても、目の前に現れたチャンスを喜んで受け入れていけば、後悔は回避できる。
【目次】


