その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は前田昌孝さんの『 株式投資2025 』です。
【はじめに】
本書は日経プレミアシリーズとしては6冊目、「株式投資202○」と銘打った本としては4冊目の出版物になる。書名をみて誤解してお買い求めになる読者の方がいらっしゃるかもしれないので、最初に、株式相場の見通しを書くことが本書の主眼ではないことをお知らせしておきたい。
力を入れて書いているのは、株式投資での資産形成を目指している人に、等身大の金融・資本市場を理解してもらうための最新知識だ。特にここ数年は税制が変わり、取引所が改革を推進し、活発にM&A(企業の合併・買収)が起きるなど、市場は急激に変化している。
企業も「株式上場がステータス」だった時代は終わり、上場メリットを感じていないところは次々に市場から去る一方、上場し続けるところは「株価を上げなければ買収されかねない」との危機感を持って、企業価値の増大に努めている。
政府や政治家の市場との向き合い方も変わってきた。ちょっと前までは「私は株式投資などをしないクリーンな政治家です」と自己PRする政治家も多かったが、今は「人々の株式投資意欲に水を差すことがないように、金融所得増税には慎重に取り組みたい」と投資を応援している。
こうした変化は私たちの生活にも大きな影響を与えている。いいことばかりではない。企業は企業価値の維持・増大のために黒字リストラもいとわなくなってきている。人生を支えるのが会社ではなく、自らの技量や知識になったのだから、日々の努力を怠っていると、厳しい人生に直面する恐れも高まっている。
政府が証券投資に旗を振るのは、社会保障財政が悪化し、国民の面倒をみていられなくなったからでもある。インフレの高進や税・社会保険料負担の高まりに加え、老後の生活を支える質の高いサービスはますます高価になっているから、2000万円の貯蓄があれば老後は安心だという「よき時代」は終わりつつある。
将来不安から現役層が節約に走るため、経済におカネが回らない。税・社会保険料負担を引いた後の可処分所得が増えないから、結婚や出生をためらう。この悪循環が日本経済をますます地盤沈下させるのではないかとの懸念も拭えない。
筆者は1979年以降、日本経済新聞の記者・編集委員だったころも、嘱託定年で退職して独立した今も、日々、さまざまなデータを追い掛け、関係者に取材し、世の中の変化を伝える記事を世に問うことを仕事にしている。
本書は証券投資のノウハウ本ではなく、証券市場に映る社会や経済の変化を描き、読者の皆様に賢く生きる知識を身に着けてほしいと願って執筆した本だ。締め切りの10月下旬までに起きた出来事は極力、織り込んだ。読者の皆様の資産形成のお役に立てれば、うれしく思う。2025年、素晴らしい1年になってほしい。
【目次】








