その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は嘉悦健太さんの『 人生100年時代 50歳からの「くらしと税」 ライフステージで学ぶ税金Q&A 』です。
【はじめに】
医療や介護、実家の管理、贈与や相続、はたまた自分自身の終活――。50代に差しかかる頃になると、これまで「まだ先の話」と思っていたテーマが少しずつ現実味を帯びてきます。こうした人生の大きな選択には必ずお金の動きが伴い、それに応じて税の問題も避けて通れなくなってきます。
「この世で確実なものは、死と税金だけだ」。米国の政治家ベンジャミン・フランクリンの言葉だそうです。人生100年時代。残りの人生で今後、税とどう付き合うかはより重要な課題になっていくはずです。
一方で幕末の志士・中岡慎太郎は国が揺れる時代に「邑(むら)ある者は邑を擲(なげう)ち、家財ある者は家財を擲ち、勇ある者は勇を振い、智謀ある者は智謀を尽し、一技一芸ある者はその技芸を尽し」と語りました。それぞれが分かち合うことでなし得ることがある。慎太郎はそこに租税のあるべき姿を見ていたかもしれません。税の仕組みこそ、千代に八千代に続く社会を支える土台でもあります。
本書で紹介する控除や特例は、この「分かち合い」を円滑にしつつ、過度な負担を避けるために設計された制度です。近代国家の原則である租税法律主義に基づいて運用されています。「税逃れ」でも「脱税」でもありません。敢えて言うならば「節税」。知らないよりは知っておいた方がいいでしょう。
税は社会の鏡。時々の世相を色濃く反映しています。国の施策を促進するためのアクセルやブレーキの役割も担い、税制改正は毎年行われています。常にアップデートが必要な分野です。そして分かりにくいのは間違いありません。その分かりにくさが多くの人を税から遠ざけているとも思います。
ただ税と向き合うのには本来特別な構えは必要ありません。「自分が選べる範囲」を知り、制度を上手に活かす。それだけで今後の暮らしが少し変わってくるでしょう。ライフステージの折々で税と関わる際に、本書が何らかの一助となれば幸いです。
最後に、私事ながら一言だけ。新聞記者として30年近く仕事をしてきましたが、税の取材を通じては殊更多くのことを学ばせていただきました。国税庁、東京国税局、大阪国税局、関東信越国税局の方々。税理士の方々。皆様の助けがなければ、私自身もきっと税を避けて生きていたと思います。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。感謝、感謝、感謝です。
2025年11月
嘉悦健太
【目次】


