その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日本経済新聞社地域報道センター編の『 データで読む地域再生3.0 あの「県・市町村」はいかに危機を脱したか 』です。
【はじめに】
「データで読む地域再生」は2021年5月に日本経済新聞の電子版と土曜付朝刊で連載が始まりました。急激な人口減少や人手不足への対策、地場産業の振興、老朽化するインフラや空き家への対応など、地域が抱える共通課題を国や自治体のオープンデータ、研究機関の調査結果などを基に分析し、各地の先進的で効果的な事例から少しでも解決策のヒントを示せればとの思いで続けてきました。
連載は4年半を超え、200回以上となりました。本書は、22年9月上旬までの掲載分をまとめた第1弾、24年2月上旬までの掲載分をまとめた第2弾に続く第3弾で、25年8月下旬までの掲載分を収めました。人口や雇用をはじめ、観光や教育、文化・スポーツ、SDGs(持続可能な開発目標)とテーマは多岐にわたり、各地に建設される新アリーナといった最新のニュースからストリートピアノなどの話題も取り上げています。
民間有識者でつくる人口戦略会議は24年4月、全国744の自治体が「消滅する可能性がある」との報告書を発表しました。全市区町村の4割を超える数字です。その10年前の14年に民間団体の日本創成会議が「消滅可能性」を指摘した自治体の数は896でした。人口戦略会議が新たに消滅可能性を指摘した自治体も多数ありますが、この10年間で239の自治体は消滅可能性から脱却しました。
データで読む地域再生でも、そんな人口減の危機に立ち向かう自治体を取り上げています。例えば25年5月10日付は、住民でないのに特別な思い入れで地域と継続的に関わる人たちを指す「関係人口」がテーマでした。岡山県西粟倉村はアプリを駆使して住民をはるかに上回るほどに関係人口を増やしました。起業の支援などにも力を入れることで、多くの移住者を呼び込みました。
もちろん、日本全体の人口減少基調は変わっておらず、少子高齢化は今後も深刻な課題です。自治体間で人口、特に若年層を奪い合う状況もあり、根本的な解決には国全体での少子高齢化対策が欠かせないことは言うまでもありません。それでも、どこかの自治体の取り組みが起点となって全国各地に広がることで、日本全体に好影響をもたらすことがあるかもしれません。
25年6月7日付は、男女の家事・育児時間を取り上げました。家事負担の偏りは少子化にも影響します。10年間で家事・育児時間の男女差が最も縮まったのは新潟県でした。生産性を高めつつ仕事と家庭の両立を図る企業の取り組みは注目に値します。県もそうした取り組みに積極的な企業を後押しし、国も残業免除の対象拡大など法改正で対応しています。
ただ、経済協力開発機構(OECD)の21年の調査によると、家事・育児などの無償労働時間は女性が男性の1.5倍の欧米に対し、日本は5倍以上です。まだまだ改善の余地は残されています。
日経電子版には、本書に掲載した全国版の記事のほかに、日経の各支社・支局が8ブロックについて地域の実情や実践的な取り組みをまとめた記事を公開しています。一部のテーマについては、知事や市長らのインタビュー記事とその動画、市区町村ごとの数値の変遷をビジュアルに体感できるコンテンツ「ふるさとクリック」もご覧になれます。本書と合わせてご参照いただき、地域から日本、そして世界の今後を見つめる一助になればと願っています。
2025年12月
日本経済新聞社 地域報道センター ニュースエディター補佐
内藤英明
【目次】



