その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は北澤功さんの『 妄想お金ガイド パンダを飼ったらいくらかかる? 』です。
【はじめに】
僕は獣医師として仕事をしています。大学卒業後、長野県の動物園で働き、様々な動物たちと触れ合いました。
現在は、東京都大田区に動物病院を開業し、イヌ、ネコ、ウサギなどの一般のペットを診(み)ています。とても充実した日々ですが、自分の根底にずっとあるのは動物園での経験です。出産に立ち会った動物、惜しくも救えなかった動物などのことを思い出すことは少なくありません。
動物園で自分が造った展示場や遊具の一部は、まだ現役だったりします。当時から、「ないものは作る」「お金がなければ自分でやる」の精神で、いろいろなものを作りました。珍しい動物の飼育用品なんて、市販されていませんから。こうした自分で解決する力は、ペットではない動物を飼ううえでは必須の能力かもしれません。
今でもときどき、プライベートであちこちの動物園や水族館に出かけます。やはり動物たちを間近で見ると、「あの動物に触れてみたい」「飼ってみたい」という思いが止まりません。きっと皆さんも、動物園や水族館、テレビや図鑑で見る動物と一緒に暮らしてみたいと思ったことがあるはずです。
もしも、あのあこがれの動物と一緒に暮らせたらと、想像するのは楽しいものです。毎日姿を見るだけでも嬉(うれ)しくなったり、世話や管理でとんでもない目にあっても苦ではなかったりするのかもしれません。
そこで、「もしも」をよりリアルに想像する手がかりとして、この本では、家庭で飼えない動物を飼うときにかかる月々のお金の話を、空想的に書きました。
動物園や水族館で人気のある動物をピックアップしましたが、個人での飼育はできないものがほとんどです。
絶滅が危惧(きぐ)される種も少なくありません。繰り返しますが、空想上の飼育なので、現実の世界では個人飼育不可の動物ばかりです。どんなに好きで飼いたくても、野生動物は人間の友だちやペットではないことだけは、肝に銘じたいことです。現実では、自分で飼う代わりに、動物園へ行ったり、保護団体に寄付したりすることをおすすめします。
長い年月を人間とともに暮らすペットとして発展してきたイヌやネコとは異なり、野生動物は人になついてくれることはありません。自宅のような限られた環境では、本来の生態を上手に見せる技術のある動物園や水族館ほど魅力的な姿を見せてくれることはないでしょう。
動物が好きであればこそ、自然の中で生きる姿を尊重するという思いを前提に、「それでも、もし飼ったらどんな楽しみがあるか」「どれほどのお金がかかるのか」を考えるのはなかなか楽しいことです。そこには、動物種ごとの生態や、過去に接してきた動物それぞれの個性、現在の飼育技術といった、いろいろな知識が必要になるからです。
動物には年齢や性別などによる個体差があります。「この動物は絶対こう!」と言い切れるものではなく、「へえ、そういうこともあるのね」と楽しく読んでもらえれば本望です。また、生態や特徴の紹介を通して、彼らに対する理解や尊敬の気持ちを深めていただければ嬉しく思います。
【目次】


