東京・日本橋の商業施設「COREDO(コレド)室町テラス」2階にある誠品生活日本橋(誠品書店)は、三井不動産がテナントの目玉として誘致した台湾の文化発信拠点。書籍・雑誌とともに雑貨やイベントを積極展開している。2019年9月の開業後しばらくはコロナ禍に苦しんだが、5年半を過ぎた今、周辺のオフィスワーカーや家族づれ、日本在住の台湾人、訪日客を中心ににぎわいを見せる。誠品生活日本橋を運営する有隣堂のスタッフで、繁体中国語の書籍(中文書)や日本の台湾関連書籍を担当する村田朋美さんにお話を伺った。
誠品生活日本橋(誠品書店)は、2019年9月、「COREDO(コレド)室町テラス」開業と同時にオープンしました。誠品書店とはどのような本屋さんなのですか?
誠品は、呉清友(故人)氏が1989年に、人文とアート関係の専門書店として台湾台北市で創業し、読書を中心に「本と暮らしの間」にある複合的なイノベーションに力を注いできました。誠品生活日本橋は、誠品グループ初の日本での店舗として開業しました。
私ども有隣堂は、三井不動産が経営する東京ミッドタウン日比谷や、ららぽーとなどの商業施設内に、書店の枠にとらわれない独自性の高い店舗や地域のライフスタイルに寄り添った柔軟性の高い店舗を出店していることが評価され、誠品生活日本橋のライセンスを得て運営させていただくことになりました。
「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」というコンセプトのもと、読書を中心に据え、体験やイベントを重視した文化の発信基地を目指しています。
現在、書店担当のスタッフはどうなっていますか?
開業時は台湾人と日本人の混合でしたが、コロナ禍を契機に有隣堂の社員である2人の日本人を中心に、日々の業務を担当しています。同じ本を扱う店舗でも、誠品生活日本橋と有隣堂ではコンセプトが異なるため、台湾誠品とは日々のメールのやりとりと、担当者が来日した時に擦り合わせをしながら、仕入れや棚づくりを行っています。
村田さんはどういうきっかけで今のお仕事をするようになったのですか?
私は以前、台湾に住んでおりまして、ライターとして現地のお店を取材し、日本人向けに日本語で台湾の魅力を発信していました。帰国後も、台湾と関わる仕事がしたいと思っていたところ、縁があって2024年に社員として入社しました。現在は繁体中国語の書籍(中文書)を中心に、日本の台湾関連書籍、雑誌、コミックを担当しています。
開業当初、中文書はごく一部でしたが、次第に品数が増え、今は約2000部の繁体中文書を取り扱っております。コロナ禍で台湾に帰るのが難しくなってしまった方々が、繁体字の本をお求めになる例が多くなったことも背景にあります。
どんなお客様が多いのですか?
平日は周辺のオフィスワーカー、週末には親子連れのお客様が多くいらっしゃいます。それから日本在住の台湾人や、観光で来られる中華圏の方々です。海外のお客様は、文具や雑貨を購入される方が比較的多いのですが、中文書については台湾の方以外に、香港の方も購入されます。香港やマカオで使用されている広東語は台湾華語と発音は異なりますが、台湾と同じ繁体字を使用しているからか、繁体中文書を手に取るお客様が多いですね。
店内を案内していただけますか?
こちらは、開業以来こだわってきた「誠品選書」のコーナーです。毎月8冊の良書を選び、紹介しています。日本の本も台湾の本と同じく、書籍担当者が話題性、独創性を考慮しながら、プレゼンテーションと投票によって8冊選んでいます。この仕事に就くまで私は文庫本ばかり読んでいましたが、選書に関わるようになってからは、さまざまなジャンルの単行本をたくさん読むようになりました。
次に読む本に悩んでいる方、新しいジャンルの本に挑戦してみたいという方にぜひ立ち寄っていただきたいコーナーです。「台湾選書」も、日本をはじめとする海外作品が選ばれることがあるので、原書や邦訳版で読んでいただきたい作品がたくさんあります。
繁体字本の売れ筋はどれですか?
村上春樹をはじめとする日本の作家や韓国の作家が人気です。その後に台湾の作家が続く感じでしょうか。台湾の作家だと『天橋上的魔術師』(邦訳『歩道橋の魔術師』)の呉明益や、全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した『臺灣漫遊錄』(邦訳『台湾漫遊鉄道のふたり』)の楊双子がよく読まれています。楊双子の作品では、未邦訳ですが、日本統治時代の家屋をリノベしたシェアハウスが舞台になっている『四維街一號』もよく売れています。
誠品書店の特徴の1つは、店内にゆっくり本を読める空間を作っていることです。誠品生活日本橋でも畳敷きスペースや椅子を置いており、週末になると多くのお客様が座って本を読まれる光景が見られます。台湾のお店ではあえて階段や段差を作り、お客様が座れるようにデザインされています。床に体育座りして本を読む光景も普通に見られます。
日本語の本の独自フェアも常時行っていますね。
はい。日本語の本のフェアは日本人スタッフが企画し、台湾側に報告しています。以前からジェンダー論やフェミニズム関連のフェアを行ってきましたが、今年新たに始めたのは、「男性目線のジェンダー論」のフェアです。ジェンダーへの関心が高まり、男性読者を意識した本が増えていることもあります。
店内のイベントはどのくらいの頻度で行っていますか? 特に手応えのあったイベントは何でしょうか?
誠品生活日本橋では、体験やイベントを重視した文化の発信基地となるべく、トークイベントやワークショップなど形式やジャンルを問わず、さまざまなイベントを開催しております。多い時では週に3回開催することもあります。
「台湾華語講座」や「羊毛フェルトワークショップ」は、定期的に開催しており、リピーターのお客様も多く、また参加されたお客様同士がつながっていくとてもアットホームなイベントです。
最近は、こうした“参加者同士がコミュニケーションを取れる場”としてのイベントを増やしており、「仕事帰りの読書会」(2025年4月10日、24日開催)や「~何を読んでいいかわからない人のための~書店さんぽ」(2025年3月30日開催)といった新たな企画も進行中です。
もちろん、台湾に関するイベントも多数開催しており、申込開始当日に満席となるイベントもあります。イベントサイトの「Peatix」を使用しているので、誠品生活日本橋ページをフォローしていただければ受付開始の通知が届きます。ぜひ活用していただきたいですね。
本と一緒に物販も行っているのも誠品書店の特徴ですね。
本と雑貨などの併売例として、2025年1月にオープンした「養生市集」を紹介させてください。東洋医学や漢方など養生についての品々を台湾、韓国、日本から集めています。こちらは台湾の官有謀先生が創始した足もみ健康法「官足法」のコーナー。つぼを押す棒やサンダル、クリーム、ウォークマット、関連書などを展開しています。
村田さんお薦めの本を教えていただけますか。
『台湾文学の中心にあるもの』(赤松美和子著/イースト・プレス)は、『韓国文学の中心にあるもの』(斎藤真理子著/同)の姉妹編に当たる、台湾文学についての評論ですが、台湾文学のブックガイドとしても使えます。これから台湾文学を読んでみようという人、またすでに何冊か読んでいる人も、作品の背景にある社会問題や裏テーマを知ることができます。
中文書のお薦めは、『裏嘉義』(下港女子著)という、台湾中部にある都市、嘉義を紹介するエリアガイドです。嘉義出身のライターが、嘉義の日常に触れることができる場所やお店を紹介しています。嘉義は、嘉義農林学校野球部の活躍を描いた『KANO』という映画や、お茶やコーヒーの産地、阿里山の玄関口としてよく知られていますね。嘉義には日本統治時代の建物がたくさん残っていて、本書に掲載されている写真を見るだけでも楽しめます。この本を持って嘉義を訪問されるのもいいと思います。
最後に、お店を訪れたついでに立ち寄るといいお薦めのスポットはありますか?
「斎藤コーヒー店 日本橋室町店」は、とても小さなお店ですが、昭和レトロな雰囲気とコーヒーの香りが漂う店内はすてきです。ぜひ購入した書籍を読みながらゆったりと過ごしていただきたい、お薦めの場所です。私も休憩時間や仕事前にここで本を読んでいます。
取材・文/桜井保幸 写真/木村輝
参考サイト 誠品生活日本橋【フォトギャラリー】





















