豊富なラインアップの中から気に入った商品をワンストップで購入できる、ショッピングモールを思わせるような空間を提供するZOZO。単なるアパレルEC(電子商取引)とは異なる仕組みで成長を実現してきた。実は、ユーザーからもアパレルブランドからも利益を引き出してしまう、最強のビジネスモデルを構築している。その仕組みとは? 『ゼロから創らない戦略 イノベーションを駆動する「価値移転」の法則』(野本遼平著/日本経済新聞出版)から抜粋・再構成してお届けする。
単なるアパレルECとは異なる「売れる場」の提供
マーケットプレイス型の事業は、価値移転を最も典型的に体現するビジネスモデルのひとつです。リクルートの「リボンモデル」もその代表例であり、異なるエコシステム間に存在するリソースを仲介・マッチングして収益を得る営みは、ビジネスの基本型でもあります。そしてZOZOも、日本においてこのモデルを最も洗練された形で実践している企業のひとつです。
ZOZOの中核事業である「ZOZOTOWN」は、一見すると単なるアパレルECのように見えますが、実際には、各ブランドが自社で在庫を持ち、自らの意思で商品を出品する「モール型EC」が主軸です。
ZOZOは、ブランドに対して「売れる場」としてのユーザートラフィック(編集注:ウエブサイトやサービスへのアクセス、ページビューなどの「人の流れ」のこと)と販売プラットフォームを提供し、販売手数料を収益源としています。このモデルは「委託販売」とも呼ばれ、ZOZOの売り上げの8割以上がこのモデルに基づいています。
顧客に便益を提供しつつ次の便益も生み出す
この仕組みの本質は、ユーザートラフィックという価値あるリソースを、アパレルブランドに対して仲介することにあります。ZOZOはこの価値移転を巧みに設計・運用することで、極めて高い営業利益率を実現しています。売り上げではなく、流通取引総額(GMV)に対する利益率で見ても、その収益性の高さは明白です。
1990年代末から2000年代前半にかけて、インターネット空間には膨大なユーザーが集まり始めていました。しかし当時、インターネット上でアパレル商品を購入できる場所はほとんど存在していませんでした。
ZOZOTOWNは、ユーザーにとって「探す・比較する・買う」という購買行動をワンストップで完結させる利便性の高いプラットフォームを提供し、ユーザーにとって大きな顧客便益を生み出しました。その結果、ZOZOは圧倒的なユーザートラフィックの囲い込みに成功します。
アパレルからも利益を引き出せる一等地に
一方で、オフライン店舗のエコシステムにとどまっていたアパレルブランドにとってZOZOTOWNは、「自力ではリーチできないユーザートラフィックが集まるエコシステム」、すなわち「一等地」に相当します。
ZOZOはこの一等地を独占的に管理し、アパレルブランド各社はそのトラフィックから恩恵を受ける対価として手数料を支払います。ZOZOは、ユーザートラフィックをアパレルブランドに仲介することで、その対価として収益を得ているのです。
ここで重要なのは、ZOZOがどのようにしてこの「一等地」を築いたかです。注目に値するのは、ZOZOが通常のECのように在庫を買い取るのではなく、「在庫データ」の囲い込みを行った点です。
アパレルとユーザーの両方に便益を提供
アパレルブランドが保有する在庫情報をZOZOTOWN上に取り込むことで、ZOZO自身は在庫リスクを一切負わずに商品を展示・販売可能としました。その結果、豊富な商品ラインナップにひかれたユーザーが自然と集まり、ZOZOのエコシステムに流入していったのです。
要するにZOZOは、主にアパレルブランドから無償で提供される「在庫データ」をフックとしてユーザーを囲い込み、そしてそのユーザートラフィックを、在庫データを提供してくれたアパレルブランドに有償で仲介し返すという、極めて巧妙で独創的な仕組みをつくりあげたのです。
物流拠点である「ZOZOBASE」稼働後は商品を保管するなど、物理的なオペレーションまでカバーしていますが、少なくとも初期においては「ユーザートラフィック」と「在庫データ」というデジタル時代に親和性の高いリソースだけを相互に移転させていたのです。
野本遼平著/日本経済新聞出版/2420円(税込み)

