大学受験対策といえば、猛勉強して知識を頭にたたきこむこと――長らくそんな時代が続いていました。しかし今、大学受験が大きな変化を遂げています。センター試験が大学入学共通テストに変わったことを筆頭に、それまで知識を問うものであった一般入試は、思考力や表現力を問うものに変わりつつあります。それ以上に大きく変わっているのが、「総合型選抜」と「推薦入試」です。いまや大学生の50%は、一般入試以外の方法で入学しているといいます。今、大学受験では、どんな変化が起こっているのか? 新刊『 勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法 』(竹内健登・著)から抜粋します。1回目は、猛勉強だけでは合格できない、大学入試に起こっている大変革について。

「猛勉強」だけでは合格できない!? 大学入試の新常識

 「いまや、大学生の50%が、一般入試以外の方法で大学に合格し、入学している」

 こんな話を聞いたら、きっと多くの親御さんはびっくりすると思います。自分たちの頃は、大学受験といえば「一般入試(以前は、一般受験とも呼ばれていました)」が当たり前。そのためには塾通いをして、1日10時間とか12時間勉強することが必要不可欠でした。そうして英単語や古文、世界史・日本史の知識を徹底的に暗記することで、やっと難関大学に入れたのですから。

(写真:Shutterstock)
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 しかし、「 まえがき(はじめに:『勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法』) 」で紹介したように、いまや上位校の入り口は一般入試だけではありません。次のようにいくつかの方法に分かれます。

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 そして、令和2年度(2020年度)の文部科学省のデータによると、一般入試による入学者の割合は50.9%。残りの約50%が、推薦入試や総合型選抜などによる入学者なのです。

「学力」か「アピール」か 入試で測られる2タイプの「能力」

 上位校への4つのルートを、1つずつ見てきましょう。

 まず1つ目が、みなさんご存じの「一般入試」です。要するに「大学入学共通テスト(旧センター試験)」を受けて、その後に各大学が用意している2次試験を受けます。
 近年の入試改革で、出題傾向が暗記中心から思考力を問うものに変わってきていますが、大まかなイメージはみなさんが描いているものと相違ありません。

 2つ目が、「総合型選抜」です。総合型選抜は2020年度まで実施されていたAO(アドミッション・オフィス)入試に、学力評価が加わったものです。
 この試験では、暗記した知識を問われることはほとんどありません。そうではなく、学問への熱意、思考力や表現力、主体性や協調性を中心に測る入試です。
 出願書類も、自由に自分をアピールするものが多く、試験内容でも小論文をはじめ、面接や集団討論・プレゼンテーションなど、自分の考えを表現する機会が多くあるのが特徴です。

 こうした特徴の試験のため、大量の知識詰め込み型の勉強は必要がなく、それよりも論理的思考力や発信力を磨く必要があります。
 高校や一般的な予備校でこうした能力を磨くのは難しいものの、多くの高校生は訓練をすれば十分に対応できると思います。その意味で、対策をしやすい入試方式といえるでしょう。
 特に、部活などで、人とのコミュニケーションを多くとってきたお子さんや、アピールできる活動のあるお子さん、入学後に学びたいことが明確でそこにつながる活動を高校時代に行っているお子さんは、一般入試よりも圧倒的に勝率が高くなります。 また、この10年で合格者の枠が急増している入試方式でもあります。

 3つ目が「学校推薦型選抜」、通称「推薦入試」です。推薦入試は「指定校推薦」と「公募推薦」の2つに分かれ、いずれの形式も高校の学校長の推薦が必要になることから「学校推薦型選抜」といわれています。
 指定校推薦は、それぞれの大学が「この高校からは◯人とる」という形で推薦枠を用意するものです。面接などの試験が設定されてはいますが、基本的には学校代表になれば合格できます。
 ライバルはもっぱら同じ高校内の他の生徒で、通常は、高校での評定平均が高い生徒や遅刻・欠席の少ない生徒が優先されます。たとえ優秀な成績でも、それ以上に優先される生徒がいれば、その枠が埋まってしまうため、この入試方式を検討するのであれば校内選抜で敗れたときのことを考えておく必要があるでしょう。

 一方、公募推薦は誰でも応募できる形式です。試験形式や出願資格は総合型選抜に似ていますが、大学によっては総合型選抜の試験内容(書類、小論文、面接)に加え、総合考査(国語・英語などの筆記試験)が課されることもあります。
 また、公募推薦の中には、「各学校から2人までが挑戦できる」といった選抜枠に制限がある場合もありますので、注意が必要です。

 首都圏の大学の選抜枠は、同じく首都圏の高校だと評定平均が高い生徒で埋まってしまう可能性が高いですが、地方の高校から受験する場合には空いていることも多くあります。地方では、地元の国立大学の学生がまるで神のような扱いをされたり、高校の先生からもたいてい地元の国立大学を勧められたりする傾向がいまだによく見られます。
 そういった意味では、地方の高校生こそチャンスです。地方の高校から都心の上位校への選抜枠を確保するのも1つの手といえるでしょう。

 このように、現在の大学入試には複数の受験パターンがあるものの、学力が基準となる「一般入試」と「指定校推薦」、そして従来の学力とは違った能力が求められる「アピール入試(総合型選抜、公募推薦)」に大別できることが分かります。

 そして、冒頭で紹介した「いまや、大学生の50%が、一般入試以外の方法で大学に合格し、入学している」というのは、ここでいう「アピール入試」の枠の増加に伴うものといっても過言ではありません。
 いまや、国公立大学も例外ではなく、アピール入試での入学者は増加し続けているのです。

(第2回に続く)

大学生の5割は「総合型選抜」「推薦」で入学する時代。国公立大学・難関大学も例外ではありません。勉強が本当に得意な子以外は、「一般入試」以外の戦略が有効です。「親世代の古い常識」でチャンスを逃しては大変。最新の受験動向を知り、「考える力」「表現する力」を身に付けさせましょう。効果的な大学入試対策が分かり、将来の就職活動にも役に立つ、必読の一冊です。

竹内 健登(著)、日経BP、1760円(税込み)