常識や定石といわれる事柄は真実なのか? 自分に合っているのか? 自分の実力であればどんな方法を採用するべきなのか? どんな心の持ちようをすればうまくいくのか? スコアとショットの関係は? 実力や年齢、性別などが異なるアマチュア25人と理論と年齢の異なるレッスンプロ3人の計28人がディスカッションとディベートを行い、自分に合ったゴルフを見つけていく、『ゴルフ白熱教室』(本條強著)を紹介する。
前編 「25人のアマ、3人のプロが議論してゴルフの悩みを解決する本」
自分に合ったプレースタイルを見つける
ハーバード大学で哲学を教えるマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」。多くの日本の大学のように先生が一方的に話し続ける講義とは異なり、学生たちに意見を言わせ、どのような考え方や視点があるのかを知り、議論し合って正解を求めていこうとする授業のやり方。学生たちの考える力を養い、他人がどんな考えを持っているかを知ることで、自分の意見に凝り固まらないグローバルな視野を持つことを目指す講義だ。正解のないテーマを話し合うことこそが重要であるとする。
それはまた、正解のないゴルフの世界においても同様だと筆者は感じた。多くのアマチュアの意見を取り上げ、型にはめない自由な発想のレッスンプロの意見も参考にして、みんなで議論し合って自分にとっての正解を探し出していく。こうした方法のゴルフレッスン書が、拙著『 ゴルフ白熱教室 』(ちくま新書/2023年刊)である。
本書は8つの項目に分かれている。グリップを含むアドレス、スイング、ショット、アプローチ、パット、コース攻略、メンタル、そしてスコアメイクと、様々な考え方ややり方の意見を述べて議論する。
常識や定石といわれる事柄は真実なのか? 自分に合っているのか? 自分の実力であればどんな方法を採用するべきなのか? どのような心の持ちようをすればうまくいくのか? スコアとショットの関係は? などなど。実力や年齢、性別などが異なるアマチュア25人と理論と年齢の異なるレッスンプロ3人の計28人がディスカッションとディベートを行い、自分に合ったゴルフを見つけていこうとする。
「アドレス」の項では、まずはスクエアアドレスの是非を問う。むやみにスクエアアドレスが正統だとされ、それを行おうとするアマチュアが多いが、それは果たして本当に正しいのか? 最初に自分の理想とする球筋があって、アドレスが決まっていくのではないのか? ジャック・ニクラウスはオープンスタンスで、トム・ワトソンはクローズドアドレスであるのはなぜか? また、よい姿勢とは何か? ボール位置はどこが正しいのか? フェースのセットの仕方は? さらには様々あるグリップのいずれを自分は採用すべきかなど。議論は白熱する。
「スイング」の項では、正しいスイングとは何か? スイングに個性があるのはなぜか? といったことを取り上げ、理想のスイングを作り上げるよりも、理想のスイングに自然になってしまう方法があるといったことも探っていく。また、フットワークの善悪、手打ちの善悪についても議論する。素振りの秘密にも迫る。
「ショット」の項では、ナイスショットとはいかなるものか? ボールスピンをコントロールすることこそナイスショットになる要因か? といったことを考える。飛距離アップのコツと科学的理論についても議論は盛り上がる。
「アプローチ」の項では、上げるか転がしか? 転がしのアプローチとはいかなるものか? ウェッジの正しいピッチ&ランとは? 苦手な人が多いバンカーショットを成功させるコツとは? などを議論する。また、実力に応じたミスしないやさしいクラブと打ち方を選択していく経験談を話し合う。
悩みの多い「パット」の項では、どのようにすればパットがよくなるか? 技術でうまくなるのか? それよりも精神の方が大切なのか? などを考え、自分に暗示をかけることこそパット成功の秘訣という意見も出る。ロングパット攻略術や確実に1mのショートパットを沈める方法なども議論される。
ここまでは、アドレスや様々なショットの考え方ややり方などを自由に発言する。自分の犯しやすいミスや悩みなども吐露して、解決策を探していく。ベテランの人たちの経験談やそれに伴う実績なども大いに参考になるはずである。さらにレッスンプロたちが、アマチュアを成功に導いた教えなども出色の内容である。
仲間と議論できるのもゴルフの楽しみ
その次の項目は「コース攻略」である。スコア100を切れない人は自分の実力とは異なるトーナメントプロのやり方を実践してはいないか? 100切りには100切りのやり方があり、90切りには90切りのやり方がある。それを知ってコースを攻略すれば目標は必ずや達成するはず。パー3やパー4、パー5の攻略法も議論し合う。賢いプレーとはいかなるものかを理解することこそ重要であるという認識が持てる。
議論は「メンタル」にも及ぶ。朝イチのショットで緊張しない方法、連続ミスをなくす方法、斜面のショットや100ヤード以内のミスをなくす方法、バンカーショットを成功させるメンタル術や自信を育むパット術など。ゴルフはまさにメンタルのスポーツであることが分かる皆さんの話はとても貴重である。「ゴルフはミスのゲーム」と言ったのは青木功プロだが、ミスをどう精神的に捉えるかが成功への秘訣となることが分かるはずだ。
最後の項は「スコアメイク」。ゴルフは飛ばしを競うゲームではないし、パット数を競うゲームでもない。スコアを競うゲームであることをしっかりと認識しなければならない。ではどうすれば好スコアが生まれるのか? ベストスコアが出るのか? ゴルファーの目標を達成できるスコアメイク術とは? 議論は最高潮に白熱して終わる。
この「ゴルフ白熱教室」は「ハーバード白熱教室」とはテーマやジャンルも人類に与える影響度も異なるけれど、ゴルフをする者の深い悩みを必ずや解決できる本であると言いたい。それはゴルフの正解は一つではないということ。また、ゴルフの正解はあなただけのものであるということ。まずはそのことをよく理解して、読者の皆さんには多くの人たちの意見に耳を傾けてほしい。そこに悩みの泥沼から脱出できる鍵があるのだ。この本を読んでそのことを知ってほしい。
そして、この本の「はじめに」でも書いているように、ゴルフとは悩んだり苦しんだりするものではなく、あくまでも楽しいゲームである。それもプレーを楽しむだけでなく、ゴルフを考えることを楽しむ、考えたことを試してみて楽しむということも大事なのだ。そして、球聖ボビー・ジョーンズが言うように、ゴルフは、ともに楽しむ生涯の友人を得られる素晴らしいスポーツであるということも理解してほしいと願うのである。
写真/スタジオキャスパー
