経済的側面からも存在感が高まるグローバルサウス。インフラ、医療、教育などこれら地域が抱える「社会課題」の解決を起点に新しい市場を創造する企業事例と、それらから得られるビジネスのヒントを紹介したのが新刊『 グローバルサウス新市場戦略 課題解決ビジネスによる未来の共創 』(JICA/あずさ監査法人パブリックセクターアドバイザリー事業部編)だ。長期投資の普及を目指し、日本全国でセミナー活動を展開するほか、最近では、グローバルサウスやヘルスケアに絡めたインパクト投資を提唱し、「資産運用の高度化」を推奨する渋澤健氏が、その魅力を紹介する。
Made with Japanという「共創」──グローバルサウス新市場戦略が描く未来
現在、世界情勢は混沌とし、不確実性がかつてなく高まっている。加えて、国内に目を向ければ、少子高齢化や地域格差など、解決困難な社会課題が山積している。こうした状況の中で、なぜ今「グローバルサウス」なのか──本書はその問いの答えを示している。
かつて「グローバルサウス」は、安価な労働力を背景とした製造拠点、あるいは所得向上に伴う既存製品の消費市場として捉えられてきた。すなわち、昭和時代の成功体験であるMade in Japanの代替地であり、平成時代のもとで展開されたMade by Japan型グローバル・サプライチェーンの担い手であったと言える。
しかし、これからの令和時代において築くべき新たな成功体験は、単なる代替や移転ではない。本書の行間から読み取れるのは、Made with Japan ──つまり、グローバルサウスと共に未来を創る「共創」という戦略である。
未整備なインフラや脆弱な公衆衛生といった、現地特有の「社会課題解決」を、援助にとどまらず、ビジネスの起点として捉え直す。これが、本書の最大の特徴だ。
JICA(国際協力機構)の幹部である著者とはグローバルサウスにおける新規事業に挑むスタートアップの推進活動を通じて初めて知り合った。本書は、著者個人の長年の実務経験に加え、JICAが培ってきた約1600件に及ぶ支援事例を基盤としており、現場感と論理的な体系化を両立させている。
本書は、利益と社会貢献を切り分ける従来型の「CSR」ではなく、本業を通じて社会課題を収益源へと転換する「課題解決ビジネス」の構造を示している。かつて日本が途上国であり、資本主義の黎明(れいめい)期に活躍した渋沢栄一が示した『論語と算盤』の思想とも強く共鳴する内容だ。
「遠くへ行きたければ、みんなで行け」──本書はこのアフリカのことわざを引用しつつ、個別企業の利益にとどまらず、グローバルサウスと日本が未来を共に創る「共創」の重要性を説いて締めくくられる。我々がこれから進むべき道を示す、不確実な時代における不可欠な「未来への地図」となる一冊である。
