香港でメイドに助けられ、仕事と育児を両立した経験から、1999年に家事代行サービスのベアーズを夫と創業した高橋ゆきさん。社内外から多くの悩み相談を受けるといいます。この記事では高橋さんの著書『 ウェルビーイング・シンキング 』から、自分らしさを忘れずに仕事と向き合うための心構えについて、高橋さんのアドバイスを紹介します。[日経クロスウーマン 2024年2月29日付の記事を転載]

 私が大切にしている言葉に、「風」があります。ここでいう風とは、その人の強い想いや行動が醸し出す“空気”のことと考えています。

 風は、一つの場所にとどまることはありません。他の場所へと流れていきます。優しく吹く風もあれば、周囲を巻き込んでいくような強烈な風もあります。

他の人が生み出した風に乗ることもできるけれど…

 会社の中で、一人ひとりの想いや行動が集まり、出来上がるのが「社風」です。私はベアーズの社員に、「あなたたち一人ひとりがベアーズの風の一筋一筋。会社はあなたからできているのよ」という話をよくします。「会社がこうだから」と不満に思ったり、物足りなく感じたりするのではなく、自分がありたいように風を吹かせ、自由に社風をつくっていってほしいと思っています。

 私は「家事代行サービスを産業にしたい」と考えてベアーズを創業しました。夫と私の2人きりの会社だったので、吹かせることができたのは、そよ風程度でした。それでも、私たちがつくった風を周囲へと吹かせることで、志を同じくする人や会社の共感や信頼を得て、風を合流させ、大きくすることができました。

 はじめはそよ風でも、集まれば強風、旋風、疾風となります。社会を変える大きなうねりを生み出すことができます。

 自分で風をつくるのではなく、他の人が生み出した風に乗ることもできるでしょう。でも、それでは他人まかせになってしまいます。自分の想いとは違うところに流れ着いてしまうかもしれません。共感する人の風と合流することもできないかもしれません。

「 会社の中で、一人ひとりの想いや行動が集まり、出来上がるのが『社風』です」 (写真: Trickster*/stock.adobe.com)
「 会社の中で、一人ひとりの想いや行動が集まり、出来上がるのが『社風』です」 (写真: Trickster*/stock.adobe.com)
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 自分で主体的に、能動的に風をつくり出しましょう。そのつくった風に乗って、あなたが考える方向に流れていきましょう。好きなところになびいて、会社や社会をより良い方向に変えられたら、とてもすてきではないでしょうか。

「人格でシゴトをする」がもたらすもの

 シゴトという言葉は普通「仕事」と書きます。「仕える事」で仕事です。でも私は、 志を実現する「志事」と表現しています。

 シゴトをする上で大事なのは人間力です。ありのままの自分をさらけ出し、人格でシゴトをするということです。その人格によって、一緒にシゴトをする相手から共感と信頼を得られます。それが尊敬の域に到達すれば、一層深い関係を築くことができます。

 シゴトをする際、 本来の自分を隠そうとする人がいます。「ちょっと自分を出してしまいました。シゴト中にごめんなさい。今のは忘れてください」などと言うのですが、私にいわせれば、それはとてももったいない! シゴトでこそ、その人らしさを出すべきです。人間味を出した方が、本人も楽だし、楽しいはず。その人の魅力も発揮できます。シゴトを超えたご縁も生まれ、相手や周囲との絆も深まります。

 今、ダイバーシティー経営が話題ですが、ダイバーシティーとは、外国人や高齢者が同じ会社で働くことではありません。 自分らしい個性をさらけ出す人が集まることです。「魔法使い」「オタク」「宇宙人」などと称されるような人が集い、それぞれの個性を輝かせながらシゴトをする組織は理想的です。私はそんな組織を率いるリーダーになりたいと思います。

 本来の自分を切り離してシゴトをする人は、その職場を離れるとき、そこで培った人間関係をすべて置いていくことになります。人格でシゴトをして、シゴトを超えたご縁を持つ人は、築いた人脈を失うことはありません。転職を重ねるほど、その人脈は広がり、発揮するパフォーマンスも高くなります。

 私は、社外に新たな夢を見つけ、ベアーズを去った元社員たちと、その後も付き合いを続けています。人格でシゴトをしていたからこそ、築けた関係です。そんな関係があることは、私の人生の宝です。あなたも、ありのまま、あなたの人格でシゴトをしましょう。広く、深い人間関係をつくり上げ、人生をより豊かなものにしてください。

(※本記事は、高橋ゆき著『ウェルビーイング・シンキング』から「50 風をつくろう、その風に乗ろう」「57 人格でシゴトをする人はシゴトを超えたご縁を持っている」を再構成したものです)
「あなたは自分の人生を自分らしく歩んでいますか?」 現代は、答えのない時代です。だからあなたが、何かに悩んでいても急いで答えを決める必要はありません。手軽な答えに飛びつくのではなく、あなたが自分らしく自由に生きていくこと。つまりあなたが“ウェルビーイング”であること、それこそが、あなたの幸せや豊かさを実現する近道だと思います。ウェルビーイングを実現し、自分らしい生き方を手に入れるために役立つ考え方をアドバイスする一冊です。

高橋ゆき(著)、日経BP、1980円(税込み)