やる気があるのに英語学習がどうにもならない。そんな悩みを持つ人も多いはず。「英語再習得の近道は、音を聞いて、まねて、使ってみること」と語るのは、TOEIC満点を100回以上取得し、ファーストリテイリングや楽天銀行などでTOEIC研修を行ってきた英語講師・濱崎潤之輔氏。2026年3月13日に出版した新著『 中学英語でつまずいた人が読む本 』(日経BP)は、文法や単語の暗記からではなく、英語を言葉の根っこの感覚から積み上げていくアプローチでイチから解説。今回はその一端を、新著から一部を抜粋してご紹介する。[日経クロストレンド 2026年3月13日付の記事を転載]

(写真/naka/stock.adobe.com)
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 英語を学ぶに当たって、多くの人は「単語さえ覚えれば何とかなる」「耳を慣らせば聞き取れる」「文法は後回しでいい」と考えがちです。

 確かに、それらは学習の一部ではあります。しかし、英語は日本語とは根本的に仕組みが異なる言語です。この「根本的な違い」を理解しないまま、力業で学習を進めようとすることこそが、多くの人が「自分には才能がない」「英語は話せない」と思い込んでしまう最大の要因であると、私は考えています。

 気合や根性、あるいは記憶力の問題ではありません。そこには、日本語という母国語を持つ私たちが、無意識のうちにぶつかってしまう構造的なハードルが存在するのです。

 では、具体的にどのような仕組みが、私たちの前に立ちはだかっているのでしょうか。私がこれまで多くの学習者と向き合う中で目撃してきた、英語学習を阻む「3つの壁」を詳しく解き明かしていきましょう。

①「語順の壁」

大学・企業研修講師、書籍編集者の濱崎潤之輔氏。これまでにTOEICテストで990点(満点)を100回以上取得。全国の大学で講師を務めるかたわら、大手企業でも研修を行っている
大学・企業研修講師、書籍編集者の濱崎潤之輔氏。これまでにTOEICテストで990点(満点)を100回以上取得。全国の大学で講師を務めるかたわら、大手企業でも研修を行っている
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 1つ目の壁は、英語において最も重要なルールである「語順」です。

 日本語は語順を多少入れ替えても、相手に伝わる意味がほとんど変わりません。例えば「私は会議を始めた」「会議を私が始めた」という文だと、後者には若干違和感がありますが、実際に話したときに伝わる意味はほとんど変わりません。

 しかし、英語ではそうはいきません。I started the meeting.は自然な文ですが、The meeting started me.と語順を入れ替えると、「会議が私を始めた」という意味不明な文になってしまいます。

 あるいは、I called my boss.(私が上司に電話した)と My boss called me.(上司が私に電話した)では意味が正反対です。語順が少し変わるだけで意味が通じなくなったり、本来伝えたいことと全く逆の内容になったりしてしまう、これが英語の難しさなのです。

日本語は語順を変えても、多少の違和感は生じるのもの、意味はほぼ伝わります。一方、英語は語順を変えると意味不明な文になってしまいます
日本語は語順を変えても、多少の違和感は生じるのもの、意味はほぼ伝わります。一方、英語は語順を変えると意味不明な文になってしまいます
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 日本語のように主語を省略して済ませることもできません。英語では基本的に必ず主語を明示する必要があるため、「なぜ英語はこんなに語順や主語に厳しいのか」と、違和感を抱く人は少なくありません。

 まずは、この「語順が意味を支配している」という英語独自の感覚をインストールすることが、学習の第一歩となります。

②「音と文字の壁」

 2つ目の壁は、「音と文字のギャップ」です。アルファベットのaは「エイ」と発音すると教わりますが、実際にはそうはいきません。

cat →「キェアッ〔ト〕」のような口を横に広げる「ェア」
cake →「ケイク」の教わった通りの「エイ」
about →「ァバゥト」の曖昧で弱い「ァ」

 このように、同じaでも単語によっては全く違う音になってしまいます。日本語の母音である「あいうえお」はいつも同じ音ですが、英語の母音はそうではありません。aの単語1つをとってみても、様々な発音があるのです。だから「ちゃんと覚えたはずなのに読めない」「知っている単語なのに耳で聞くと分からない」ということが起こります。

 さらに、日本語にない音の違いも厄介な存在です。

vase(ヴェイス / 花瓶)と base(ベイス / 土台)
light(ラィト / 光)と right(ゥラィト / 右・正しい)
sea(スィー / 海)と she(シー / 彼女)

 これらは英語初級者にとって、どれも「似たような音」に聞こえてしまいます。しかし、英語圏の人々にとっては明確に別の音であり、ここを混同すると意図しない意味で伝わってしまうこともあります。

 なお、書籍では、伝わりやすいように、できる限り本当の発音に寄せた「カタカナ発音」を掲載していますが、音声がついている単語・フレーズ・センテンスについては、ぜひカタカナを「補助輪」として使いつつ、聞こえてくる音そのものを徹底的にまねしてみてください。

③「文法用語の壁」

 最後のつまずきの要因は、ほとんどの参考書に登場する文法用語です。例えば「主語」「動詞」、さらには「目的語」「補語」「修飾語」「関係代名詞」「不定詞」などもこれに当てはまります。こうした文法用語は普段、日本語で話すときは意識しないのに、いざ英語を学習するとなると必ずといっていいほど教わります。

 しかし、それが何を指しているのか直感的にイメージすることはほぼ不可能です。例えば「補語」と言われても、「補う言葉って具体的に何なの?」と頭を抱えてしまいます。「目的語を取る」と書かれていても、「取るってどういう意味? 物を手でつかむの?」という疑問が湧き上がってきます。「不定詞」と言われても「定まってないってどういうこと?」と戸惑うのが普通なのです。

 こういった文法用語そのものが多くの人にとって分かりにくいせいで、「文法=難しい」という苦手意識ができてしまいます。頭の中でモヤモヤしたままだと、分かるはずの説明もスッとは頭に入らず、理解できない部分がどんどん増えていき、「やっぱり英語の勉強なんて無理」と諦めてしまうのです。

単語やフレーズの順番でマスターする

 日本語と違う「語順の壁」、文字と音が一致しない「音と文字の壁」、そして専門用語が分かりにくいという「文法用語の壁」。これら3つの壁を意識していない状態で勉強を頑張ってみたとしても、必ずどこかで行き詰まってしまうのです。

 では、どうすれば挫折せずに英語を身につけられるのか。答えはシンプルです。最初から「単語やフレーズの順番」に意識を向けて学習することです。英語は「誰が(主語)」「どうする(動詞)」「何を(目的語)」という語順の並び方が基本です。これを意識しないと、どれだけたくさんの単語を知っていても正しい文は作れません。

 逆に言うと、この並び方さえつかめば限られた単語でも言いたいことを表現できます。例えば I like coffee.という文があります。要素は「I (私が)」「like (好きだ)」「coffee (コーヒーを)」。ここでcoffee を「tea」に変えれば I like tea.になります。「music」に変えれば I like music.になり、「baseball」に変えれば I like baseball.です。

英語は「誰が」「どうする」「何を」の並び方が基本です。これを押さえればtea、musicなどの単語を入れ替えるだけで表現の幅を広げられます
英語は「誰が」「どうする」「何を」の並び方が基本です。これを押さえればtea、musicなどの単語を入れ替えるだけで表現の幅を広げられます
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 たった1つの文型のルールを押さえるだけで、表現の幅は一気に広がるのです。ここで重要なのは、「I」や「like」といった単語そのものではなく、誰が → どうする → 何をという並びの感覚です。これが英語という言語の「設計図」であり、土台になります。

 大切なのは、この順番を頭で理解するのではなく、「体で覚える」ことです。学校で習った文法用語やルールも、英語学習にとって非常に大事なことです。しかし、本当に必要なのは、その前にある「土台」の感覚です。土台がなければ、どんなに単語を積み上げたとしても、すぐに崩れ去ってしまいます。逆にしっかりした土台さえあれば、少ない単語しか覚えていなくても、英語での会話は成り立つのです。

TOEIC満点を100回以上取得し、大学や大手企業で研修も行う英語教育のプロが、英語を使うために本当に必要な「下地づくり」にフォーカスした一冊です。舌や口の動かし方から、毎日続けられる具体的なトレーニング、そして従来は避けられてきた「カタカナ英語」までを、徹底的に“ベリーイージー”に解説します。

濱崎潤之輔(著)/日経BP/1870円(税込み)
▼関連リンク 「日経トレンディ」(電子版)