前代未聞のスポーツ賭博事件が日米を驚愕させているが、新NISAで投資熱が盛り上がっている今、株式などで資産運用をする投資家もギャンブル依存症への警戒が必要だ。ギャンブル依存症の自己診断と脱出法について、『 個人投資家入門byエナフン 株で勝つためのルール77 』(奥山月仁著、日経BP)の一部を抜粋して紹介しよう。

「株式投資はほぼギャンブル」と思っておく

 時々、ネット上で、「株式投資はギャンブルか?」という議論が巻き起こる。

 株はゼロサムゲームではない。つまり、閉じた世界でカネの分捕り合戦をやっているわけではないので、ギャンブルとは言えない。

 そんな主張もあるが、私は、株式投資はほぼギャンブルだと思う。

 「ほぼカニ」という商品名のカニ蒲鉾が本物のカニではないのと同様、ほぼギャンブルも本物のギャンブルではない。しかし、ギャンブルと同じ性質をいくつも持っている。

 政府や金融機関は株式投資にダークなイメージを持たせたくないため、そのような表現は使わないだろうが、本気で投資に取り組むのであれば、ギャンブル的要素に目を背けるべきではない。

 ただし、私はギャンブル=ダークな存在とも考えていない。日本のギャンブルの代表格である麻雀や競馬は汚いものかといわれると、別に麻雀や競馬そのものは汚いものではない。将棋や陸上競技と同様、ゲームやスポーツの類である。

 ではなぜ多くの国民がそれを汚く感じるのか? それは、そこにのめり込み、あり得ないほどのカネをつぎ込んで、人生を台無しにする人が後を絶たないためだ。

 この点に関しては株式投資も同じである。株式市場自体は資本主義システムの心臓部であり、重要な機能を担っている。あなたが余裕資金で株式投資をすることを誰も否定できない。しかし、様々なリスクを理解することなく、そこにのめり込み、過大な勝負をしてしまうために、家族まで不幸にしてしまう人が後を絶たない。

 株式投資はほぼギャンブルである。ギャンブルでは、「どこに賭けるか」と同等かそれ以上に「いくら賭けるか」が重要な要素となる。

(写真:kai/stock.adobe.com)
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損をしたのになぜやめられないのか?

 多くの人が「株式投資はほぼギャンブル」と思い知らされるのは、下げ相場の時だろう。

 まずは次のグラフをご覧いただきたい。これは、バブルがスタートしたとみられている1986年から2018年8月末までの日経平均株価の推移を示すチャートだ。

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 ITバブル崩壊やリーマンショックといった後世まで記憶されるような暴落においては、日経平均は半値以下に下がってしまう。また、下げ相場は必ずしも一本調子ではないことも目に留まるはずだ。大きく下げた後には大抵落ち着きを取り戻す局面が数週間から数か月は続く。

 しかし、「このまま上がり続けてほしい」という個人投資家の願いもむなしく再び暴落が襲ってくる。それが二度三度と繰り返すとほとんどの個人投資家は精神的に持ちこたえられない。そしてSNSには、「夜も眠れない」とか「もう無理」といった悲愴な書き込みがあふれることになるのである。

 ここで誰もが抱くのは「どうして天井付近で売却して手じまいしなかったのか」という疑問だ。第三者的な目で冷静に見ると、「それまでの上げ相場で相当儲けていたら、下げ相場まで付き合う必要はない。ちょっと損したくらいのタイミングで投資をやめればよかったのに……」などと助言したくなろう。

「自分はギャンブル依存症ではないか?」と疑ってみる

 やめられない原因はいくつか考えられるが、最大の原因は依存症ではないかと私は疑っている。次の図表は、米精神医学会が定めたギャンブル依存症の診断基準だ。10項目のうち5項目以上に該当するとギャンブル依存症と診断される。

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 「ギャンブル」を「株式投資」に置き換えて10項目を読むとどうだろう。「自分は違う」と思いたいだろうが、胸に手を当てて冷静にチェックすると5項目以上に該当してしまう人も少なからずいるのではないだろうか。

 株式投資がうまく回れば、得られる利益は競馬やパチンコの比ではない。普通の会社員ではまず手にすることのない大金を何度も稼ぐことになる。脳内麻薬のドーパミンが大量に放出されて、依存症的になってしまっても不思議ではない。

 10項目のうち特に問題となるのは3番目と6番目の項目だ。やめたくてもブレーキが利かない。相場は乱高下を繰り返し、明らかに危険な状態であるにもかかわらず、負けを取り返そうとして信用取引や仕手株の売買といったリスクの高い取引に手を出してしまう。波乱相場は、下落幅だけでなく、一時的な上昇幅も大きいのが特徴である。このため、すぐに負けを取り返せるように感じてしまい、撤退するという判断を下せなくなってしまうのだ。

 ちなみに、私も「心配で夜も眠れない」という状況を過去に何回か経験している。その時は8番目と10番目の項目以外のすべてに該当していたと思う。間違いなく私は依存症だった。だからこそ、こうした話も書けるのだ。

バフェットの格言「穴にはまっていると気付いた時……」

 「穴にはまっていると気付いた時、一番大切なのは、掘るのをやめることだ」。これは、ウォーレン・バフェットの格言の1つである。もし自分が依存症気味でその状況から抜け出せないでいると判断できたら、この言葉を思い出してほしい。「損を取り返そう」とポジションをさらに大きくするのではなく、まずは掘るのをやめる。そして、自分の状況を冷静に見直すのだ。

 人生は長い。損を取り返すチャンスはこの先何度でもある。勝てる確率の高い局面で自分にとって最高の銘柄を探し出し、満を持して大勝負を仕掛ける。これが成長株投資の醍醐味だ。苦しい局面で起死回生を狙ってリスクの高い大勝負を仕掛けるのは、醍醐味でも成功の秘訣でもない。

 「自分は株式投資依存症だ」。そう気付いた時、私は証券口座から運用資金の大半を引き出して銀行の窓口に行き、安定運用型の投資信託を買った。簡単には株に資金を振り向けられない状況をわざとつくったのである。それでも証券口座に資金の1割ほどを残した。完全にはやめられないことを自覚していたからだ。株の運用資金を急に1割まで減らすと、刺激が小さ過ぎて最初は不満だったが、慣れてくるとその範囲でも損をすれば悔しいし、儲かれば優越感を得られるようになる。完全に株式相場から身を引かずに、少額で様子を見続けることで得られる新たな知見もある。読者の方々にも参考になれば幸いだ。

(写真:Olivier Le Moal/stock.adobe.com)
(写真:Olivier Le Moal/stock.adobe.com)

株で勝つための基本から実践的手法まで、重要ポイントを網羅的に整理した「投資入門書の決定版」。初心者からレベルアップして大化け株で儲ける極意を伝授する実践ガイド。人気投資ブロガー「エナフンさん」のベストセラー3連作から、「やるべきこと、やってはいけないこと」を集大成。正しい知識を得て、オーソドックスな投資法を習得することこそ、勝利への近道である。

奥山月仁著、日経BP、1870円(税込み)