争いや競争が絶えない時代、疲れを感じる人も多いかもしれませんね。そんな私たちに“もう1つの視点”を与えてくれるのが、春秋戦国時代を生きた道家の始祖・老子の思想です。書籍『 哲学を知ったら生きやすくなった 』から、不安やモヤモヤの答えや生きるための指針を模索する今、こんな時代を切りひらくためのツールとして使える哲学を、さわぐちけいすけさんのマンガと、人気哲学者の小川仁志さんの解説でお届けします。
争いに行き詰まったら“逆転の発想”
編集部 職場でも家庭でも、人とぶつかる機会ってありますよね。
小川 争いや競争が絶えない時代、疲れを感じる人も多いかもしれませんね。そんな我々に“もう1つの視点”を与えてくれるのが、春秋戦国時代を生きた道家の始祖・老子の思想です。中国の思想といえば、当時も今も孔子の儒家が主流ですが、老子の存在はその永遠のアンチテーゼでもあります。分かりやすく言うと、孔子はあらゆる物事を論理的に分析し、カテゴリに分けることで問題を解決した。一方で、老子はその区別が争いを生むと考え、正反対の解決法を提示したのです。
編集部 どんな思想ですか?
小川 老子の思想の根幹にあるのは、「すべてはひとつ」という考え方です。それを表すのが「道(タオ)」。道は万物を生み出す宇宙の原理であり、人為的な区別や対立を超えた自然の摂理を指します。老子は、すべてはこれに従えばうまくいくと説いた。なかでも有名な言葉が、作為をせずあるがままの状態をよしとする「無為自然」。「何もしないことによって、実はすべてのことをしている」のだと。
編集部 物事にあらがわず、自然に身を任せるほうがうまくいくということですか?
小川 そうです。老子は同様に「上善は水の如し」、つまり物事の最善の状態は水のように逆らわないことだと言いました。水は遮るものに逆らわず、相手の形に合わせて自然のままに流れていきます。人間関係で言うと、無理に我を通すと互いに傷ついたり、しこりを残したりすることもある。そこで相手に合わせて柔軟な態度に出ると、いつのまにか相手も折れてくるもの。柔らかく弱そうなものが、実はしなやかで最も強いのです。当時は戦乱の世でしたから、争わずして勝つ戦術とも言えるでしょう。
編集部 逆転の発想ですね。でも、相手に合わせるのは妥協と感じる人もいるのでは?
小川 そうではありません。「無為自然」はただ何もしないのではなく、全体を俯瞰して最もよい動きをすることです。単に相手に合わせるのではなく、どうすれば社会やみんながしこりを残さず、ひとつに丸く収まるかを考え行動する。状況に合わせての柔軟さが必要です。
編集部 今回の話では、店長はクレーマーに対して第三者を持ち出して相手をしりぞけました。
小川 実は、これも立派な争いなんです。「こっちには武器がある」と言っているわけですから。老子なら相手に共感して「おっしゃる通り」と丸く収めるでしょう。ここで重要なのは、マニュアル通りの言葉ではなく、心から共感することです。
編集部 共感力が大事というわけですね。
小川 その通り。そのためには、まずひと呼吸おいて冷静になる。次に「なぜこうなったのか、なぜ怒っているのか」と周囲の状況をよく感じ考える。最後に、余計なことをせずいま必要な行動をとる。この3ステップで解決していけるはずです。
編集部 理想や欲を追求する現代人にとっては、少し現実離れした思想のようにも感じます。
小川 老子は国を統一するといった大きな功績があるわけではありません。それでも、本質を突く老子の思想は、儒教とともに常に中国人の精神の核にあり、世界中に影響を与えています。
編集部 実際に使われているということですね。
小川 はい。私たちは現実を生きねばならない一方で、戦いに疲れてのんびりしたいという側面もあるのです。普段は孔子的に生きて、疲れたら老子的に返ってもいい。両方の視点を持つことで、争いのない幸せな世界に近づけるはずです。
編集部 疲れたら老子というのがいいですね。
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漫画のヤスミはどうすべき?
- 人は争うばかりではない。
- 争いを収めるだけでなく、無化することもできる。
- “争いをなくす”という理想を目指して前進しよう。
「いやな上司と仕事をする」「人間関係のしがらみにうんざり」「自分の人生これでいいのか」…。生きていると抱えがちなたくさんのモヤモヤの対処法を、マンガと解説で哲学の観点から導きます。監修・解説は人気哲学者の小川仁志
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