生産性や効率を第一に走ってきたけれど、最近ちょっと息切れしてきた。そんな人も多いでしょう。「人生後半の達人」臼井由妃氏は「50代には50代の時間術がある」と語ります。その具体的内容は? 仕事と学び直しや趣味、心身の健康維持をすべて実現させるコツは? シリーズ累計17万部突破のベストセラー、日経ビジネス人文庫『 55歳から やりたいことを全部やる!時間術 』(臼井由妃著)から抜粋・再構成してお届けします。

「今」は大事な助走の期間

 50代になると、これまでの「働き方」が体に染みついているでしょう。
 そのままのスタンスでいれば、任される仕事が減ってきたときに正直戸惑うものです。

 役職定年したことで会議やメールの数、決裁を求められる案件が少なくなった。「ちょっといいですか」という部下からの相談も減った。そうした状況に一抹の寂しさを覚えるかもしれません。

 そんなときは、「少しずつ責任から解放された」「時間の主導権のほとんどを自分が握れるようになった」とポジティブに捉えたらいかがでしょうか。
 すると、何歳になってもどんな立場になっても仕事は楽しくなります。

 さらにその時間を充実させるために、実労働時間が8時間だとしても、60歳(60代)ならば「目の前の仕事に全力を尽くすのは5時間」。70歳(70代)ならば「3時間」と自分の中で決め、これまでの経験を今後どう役立てるか、これまで仕事を理由にやりたくても我慢してきたことはないかなど、将来を見据えることに時間を費やすようにするといいでしょう。
 「今」はその大事な準備期間、助走の時期なのです。

「余裕を楽しむ」発想に切り替える

 60代でも70代になっても若手と同様の仕事をこなせる人もいるでしょう。
 それでも「仕事時間は60歳で5時間、70歳で3時間」と決めることで、人生は仕事だけではないことが分かり、「これから○○を始めよう!」「やりたいことをやり尽くそう」と、自分時間を楽しむことの大切さが、理解できるものです。

 加えて私は「60歳からは土日祝日は仕事をしない」と定めました。
 それは「忙しさを楽しんでいた」自分から、「余裕を楽しむ」自分に切り替えようと考えたからです。

 私は休みなく働くことが当たり前で、「趣味は仕事」と公言していましたが、格好をつけていたのです。

 本音は、きちんと休みを取り映画や演劇を鑑賞する、仕事抜きの旅行をする、身体のメンテナンスやエステで、自分を癒(い)やすこともしたかった。
 それらを無理に我慢していたとは言いませんが、「一番の喜びは『仕事をすること』」と自分で自分を納得させていました。
 土日はもとより正月休みやゴールデンウイークも仕事で埋め尽くす。「たくさん仕事をすれば収入が増える」「頼れる者は自分だけ」という発想がそうさせていたのです。

 しかし、この状況は尋常ではありません。
 このままのスタンスでいると、心身だけでなく、仕事の質にも悪影響を及ぼす可能性がある。そう考えて、「土日祝日は仕事をしない」と決めました。

 仕事の進捗状況によってはもちろん例外もありますが、その場合は平日に休みを振り替えています。
 そうやって余裕を楽しむ自分に切り替えたおかげですね。
 65歳になりましたが、40代のときよりも明らかに健康になりました。
 疲れやストレスを感じることが減り、頭の回転も速くなった気すらします。

人間関係も「間(ま)」が一番

 また「余裕を楽しむ」についていえば、人間関係でも、

  • 発言や行動を起こす前には「ひと呼吸」置く
  • 話すスピードやメール、LINEの返信は相手のペースに合わせる
  • 「要はこういうことですね」などと、相手の話の腰を折らない
  • 電話は、相手のライフスタイルを考慮して、落ち着いて話ができる時間を選ぶ
  • 家庭のことは質問しない

 など相手との間に「間(ま)」を置くことも心がけるようになりました。
 一つひとつは日常の小さな事柄ですが、これも大事な時間管理です。

 結果、「余裕があってうらやましい」「いつもはつらつとしている」と言われるようにもなりました。

時間の主導権を握れば人生は楽しくなる(写真/Shutterstock)
時間の主導権を握れば人生は楽しくなる(写真/Shutterstock)
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「勤め人人生」には必ず終わりが来る

 これまで「平日は毎日8~10時間」「土日も持ち帰り仕事」をしていた人が「仕事時間は60歳で5時間、70歳で3時間」を実現するためには、これからは「任される立場」ではなく「任せる立場」だと理解することが第一です。

 そして、「勤め人人生」には必ず終わりがある。今後は「自分が主役の人生」を歩む、と決めましょう。

 仕事を抱え込まず部下や後輩に委譲する、一部を託す、チームで仕事を共有することもおすすめします。

 なお「仕事時間は60歳で5時間、70歳で3時間」に通勤時間は含みません。
 30代、40代では通勤時間や移動時間には、次の商談のシミュレーションや書籍・ネットからの情報収集をしていたと思いますが、これからは10年後の自分を見据えて「資格取得」の勉強や、興味や関心があることを調べるなど、自分のための時間にあてましょう。
 通勤時間は大切な「自分時間」のひとつです。

 リモートワークの方は通勤時間ゼロを大いに活用できますね。
 例えば通勤に往復2時間かかるのならば、その時間を、「勉強」(資格取得・読書・興味のある分野の動画サイト視聴・専門誌購読など)、「独立・起業・開業」を視野に入れている方は、準備のための時間にあてるのもいいでしょう。

ベストセラーシリーズ最新刊! 大人の時間術は「効率」よりも「密度(質)」が大事。カギは、「捨てる、始める、大事にする」こと。仕事は「60歳で5時間、70歳で3時間」/「友だち」は3人いればいい……など仕事、人間関係、学び直しのヒント満載。

臼井由妃著/日本経済新聞出版/880円(税込み)