日本も世界も、政治も経済も激動必至の2025年。投資家はどんな心構えで投資に向き合えばいいのか。証券市場を40年間取材してきた元日本経済新聞のベテラン記者、前田昌孝氏が探る。日経プレミアシリーズ『株式投資2025 波乱必至のマーケットを緊急点検』から抜粋・再構成してお届けする。前田氏は、国内株は「値上がり益狙い」の「順張り型」投資が成功するような投資環境にはならないのではないかと説く。

「順張り型」は厳しいのでは

 株式投資のスタイルにはいろいろある。どういう銘柄を選ぶかという観点でいえば、比較的厚めの配当が継続することを願う「高利回り株投資」や、企業が成長して株価が上昇することを期待する「値上がり益狙い」などがある。どういうタイミングで売買をするかという観点でいえば、株価上昇の勢いを買う「順張り型」や、株価が大きく下落した局面で株価の回復を期待して買う「逆張り型」がありそうだ。

 2025年は「値上がり益狙い」の「順張り型」投資が成功するような投資環境にはならないのではないか。米国がどんなペースで利下げをするのかは予想しにくいが、植田和男総裁が率いる日本銀行は、なんだかんだいっても利上げの方向だと思われる。

 利上げが株式相場の急落に結び付いた2024年8月5日の「植田ショック」の記憶も真新しいため、日銀も慎重だろうが、それでも金融政策を正常化する方向で動くことは変わらないと思われる。その影がちらつく以上、株式相場が企業業績の改善度を上回るようなペースで上昇していくことは起こりそうにない。

 円相場にもよるが、2025年度の企業業績はせいぜい10%程度の増益だと思われるので、日経平均の上昇もその程度ではないか。多少上振れがあっても4万5000円前後までではないかと思われる。

 東京株式相場は外国人の買いが入らなければ、なかなか上昇しない。最近では2023年4月にバフェット氏が来日したのを契機に、外国人投資家の間で日本株への関心が高まり、4カ月で約6兆5000億円もの買い越しに結び付いたことがあったが、当面、そんなイベントはありそうにない。

 個人投資家のNISA(少額投資非課税制度)での買いは引き続き期待できるが、金額は知れており、株式相場へのインパクトは限定的だ。高齢の投資家を中心に保有株の処分が優先されるのではないだろうか。あとは企業自身による自社株買い。引き続き活発だと思われるが、すでに市場は織り込んで動いているので、相場への影響があるとしても、下支え程度だろう。

配当や優待狙いの買いが継続

 2024年10月23日に東京地下鉄(東京メトロ)が新規上場し、人気を呼んだが、値上がり益狙いというよりも配当利回りの高さに注目して購入する個人投資家が多かった印象だ。

 個人単元株主数が213万8141人(2024年6月末)と日本で最も多いNTTも、まずまずの配当利回りに着目して買う投資家が多い。配当利回りが高くても業績が悪化して減配になったり、無配に転落したりすると、株価の下落と合わせて大打撃を被るが、東京地下鉄やNTTには、業績が安定しているとの期待もあろう。

 こうした投資は株価指数の上昇よりも高いリターンを確保することを目的としているわけではないので、激しいパフォーマンス競争をしている機関投資家などには関心を持たれないだろう。

 ただ、上場企業は若い個人株主を増やすことに強い関心を持っている。高齢の株主が中心だと、相続対策などで売られることが多く、株価の上値を抑えられがちだ。割安感が着目されて買収のターゲットになる可能性も大きくなるので、少しでも長期に保有してもらえる株主を増やし、業績向上への努力をすれば、株価が上昇しやすくなり、容易に買収されない状態を作れると考えているのではないだろうか。

 株主優待は廃止する企業もあれば、新たに導入する企業もある。あっても「おまけ程度」という感じの企業も多かったが、最近の傾向は2年、3年、5年と長期に保有すれば、より多くの優待を付与しようという企業が増えていることだ。期末の株主に付与する場合も、権利確定日に瞬間的に持っているような株主は対象外で、「前決算期末から同一株主番号で継続保有」を条件にしているところも出ている。長期保有に報いるのに「おまけ程度」では話にならないので、株式を持ち続けるインセンティブになるような内容のものを提供しているのではないかと思われる。

 会社法上の株主平等原則などどこ吹く風の話ではあるが、日本の慣習を企業はうまく生かしている。

値上がり益も狙うのなら外国株

 今や個人投資家は日本株だろうが海外の代表的な株式だろうが、特段の区別なく買うことができるから、個人投資家の間には、日本株などには目をくれない人も多い。

 日本の個人投資家の外国株投資の傾向を示すものとして、図表1には日銀の資金循環統計に収録されている家計の対外証券投資の残高の推移を、図表2には公募投信が保有する外国株の残高の推移をあげた。

図表1 家計の対外証券投資
図表1 家計の対外証券投資
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図表2 投信が保有する外国株
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 対外証券投資の残高は直近の2024年6月末現在で37兆7211億円、投信が保有する外国株の残高は直近の2024年9月末現在で49兆7077億円となっている。どちらも直近に向けて増加の勢いが加速しているのは、円安の進行に伴い、保有する外国証券の円換算の評価額が膨らんできたためでもある。

 ここで日本の家計の国際分散投資の話をちょっとしておきたい。外貨建て資産という意味では、投信は外国株のほかに、外国債券10兆8555億円、外貨建て投信7兆2406億円、外貨建て投資証券9兆2411億円などを保有している。投信中の外貨建て資産の2024年9月末現在の合計残高は78兆7738億円に達している。

 このほか家計が持つ外貨建て資産の代表的なものは外貨預金7兆1436億円(2024年6月末現在)がある。ほかにも金額は不明だが、外貨建て保険などもある。

 金額が分かっているものだけの合計で、2024年6月末現在の外貨建て資産の合計額は約121兆6000億円だ。個人金融資産に占める割合は5.5%に相当する。大きいのかといわれれば、まだまだであろう。

 ただ、約10年前の2014年12月末には対外証券投資が19兆8703億円、投信中の外貨建て資産が30兆5816億円、外貨預金が6兆794億円で、合計では56兆5313億円。個人金融資産1750兆7103億円に占める割合は3.2%にすぎなかった。

 家計の国際分散投資は動き出したばかり。なかにはのめり込んでいる人もいるかもしれないが、全体的にはリスク分散の観点から、もっと推進する必要がある。「日本はもうダメだから」というのが理由ではない。激動の時代には何があるか分からないのだから、1つのかごにすべての卵を入れたままにしておくのは、やめておいたほうがいいと考えている。

リスク分散の観点から、全体的には国際分散投資をもっと推進する必要がある(写真:SongMin/stock.adobe.com)
リスク分散の観点から、全体的には国際分散投資をもっと推進する必要がある(写真:SongMin/stock.adobe.com)
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日本も世界も、政治も経済も波乱必至の2025年。40年間株式市場の世界を取材してきたベテラン記者が投資環境を読み解く。金融正常化は近づくか? 日本企業過去最高益の中身は? 等身大の金融・資本市場を理解でき、資産形成に役立つ1冊。

前田昌孝著/日本経済新聞出版/1210円(税込み)