米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社、バークシャー・ハザウェイの動向は世界中の注目を集める。同社が2024年8月3日に公表した2024年4〜6月期の四半期報告書によると、6月末のアップル株保有時価は842億ドル(約12兆3000億円)になったという。4〜6月に1株も売却していなければ、6月末の保有時価は3月末を22.8%上回る1663億ドルになっていたはずなので、3カ月間で全体の49%を売却したことになる。

アップル株の49%を売却

 アップル株売却の状況はバークシャー・ハザウェイが2024年8月14日に米証券取引委員会(SEC)に提出した保有銘柄報告書(13F)により詳細に描かれている。バークシャーは日本の商社株や中国の電気自動車メーカーBYDなど外国株を別とすると、2024年6月末現在、米国市場上場の41銘柄を保有している。

 4~6月期には2銘柄を完全売却したほか、アップルをはじめ8銘柄については保有株の一部を売却した。一方で2銘柄を新規に取得し、5銘柄を買い増した。この結果、6月末の保有額は41銘柄合わせて2799億6900万ドルと、3月末に比べて517億1100万ドル減少した。保有株数の変化を伴うすべての売買を四半期末に実施したと仮定すると、4〜6月期には株価の上昇で評価益が308億7800万ドル膨らんだが、株式が大幅な売り越しだったため、ポートフォリオ全体が縮んだ。

 アップル株の話に戻ると、バークシャー・ハザウェイがアップル株への投資を始めたのは2016年1〜3月期のことだった。その後の保有株数と保有額の推移は図表1の通りだ。

図表1 バークシャー・ハザウェイのアップル株の保有株数と保有額
図表1 バークシャー・ハザウェイのアップル株の保有株数と保有額
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 SECに米国の機関投資家が提出する保有銘柄報告書(13F)には四半期末の米国市場上場株の保有状況が書かれている。アップル株は株式数ベースでは、2018年9月末に約10億1000万株(株式分割調整後)を保有したのがピークで、その後2020年末の8億8700万株に向けて徐々に減らしてきた。

 その後はほぼ横ばいで推移し、2023年9月末には9億1556万株になっていたが、2023年10〜12月期に1.1%を売却し、2024年1〜3月期にさらに12.8%を売却し、新たに報告された4〜6月期に一気に49%を売却して、6月末にちょうど4億株を保有するだけとなった。

 金額ベースでみると、保有額が2017年以降も2023年6月末の1776億ドルに向けて増勢をたどっているが、これはアップル株を追加購入したためではなく、もっぱら株価の上昇がもたらしたものだ。米国株ポートフォリオに占めるアップル株のウエートは2023年7月と10~12月には50%をやや超える水準に高まっていた。

 バークシャー・ハザウェイの主業務は保険業務だから、保険会社の株式ポートフォリオとしてはかなり特定銘柄に偏っているということもできる。4〜6月期の大量売却で、このウエートは30.1%まで低下した(図表2)。

図表2 バークシャー・ハザウェイの株式運用に占めるアップル株のウエート
図表2 バークシャー・ハザウェイの株式運用に占めるアップル株のウエート
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 なお、保有銘柄報告書から読み取れる米国株ポートフォリオには、日本の商社株など海外市場で買い付けた外国株は含まれていない。四半期報告書(10Q)記載のデータも読み込んで、外国株を含む株式ポートフォリオ全体に占めるアップル株のウエートを計算すると、ピークの2023年6月末には46.6%に達していたが、2024年6月末には26.8%に低下した。

4~6月期755億ドルの売り越し

 バークシャー・ハザウェイの四半期報告書(10Q)のキャッシュフロー計算書をもとに、株式の売買状況を振り返ると、2022年1~3月期には413億9500万ドルの買い越しを記録したことが分かる。キャッシュフロー計算書の数字には日本の商社株など外国株も含んでいる。

 このときの購入判断のすべてがバフェット氏自身によるものだったかどうかは分からないが、新たにオキシデンタル石油やセラニーズ、ヒューレット・パッカードなどに投資した局面だ。

 過去最高額の買い出動をみて、バフェット氏が強気に転じたのではないかとの観測も流れた。その後、4〜6月期、7〜9月期と若干の買い越しが続いた。

 しかし、2022年10〜12月期から2024年4〜6月期にかけては7期連続の売り越しとなった。特に2024年4〜6月期の売り越し額はアップル株の売却が響き、755億3600万ドルと空前の水準になった。この7四半期間の累計の売り越し額は1316億2300万ドルにもなる。購入が224億5200万ドルにとどまる一方で、売却が1540億7500万ドルに達していた。

 図表3はバークシャー・ハザウェイの株式の売買状況を年間ベースでまとめたものだ。2024年は1〜6月の6カ月間だけで928億1700万ドルの売り越しとなっている。2023年の年間売り越し額は241億6900万ドルと過去最高だったが、2024年は半年だけでこの4倍近い売り越しとなった。

図表3 バークシャー・ハザウェイの株式売買(年間)
図表3 バークシャー・ハザウェイの株式売買(年間)
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現金比率が45.5%に上昇

 株式が売り越しになるのは、株価の上昇に伴って膨らんだ分を売却するケースも多いので、必ずしも時価ベースの株式の保有額がまるまる減るわけではない。例えば2割値上がりした銘柄を1割売れば、売り越しではあるが、時価ベースの残高は1割増える。

 しかし、4〜6月期は株式の保有額が前四半期末の3654億4900万ドルから3149億3600万ドルへ505億1300万ドルも減少した。値上がりした分を上回って大量に売却したためである。

 代わりに増えたのは現金・現金同等物だ。資産運用の世界ではこうした投資の待機資金はキャッシュと呼ばれ、現金や預金のほか、すぐに現金に換えられる政府短期証券などを含んでいる。グラフに示すように、その2024年6月末の金額は2769億4200万ドルと3月末の1889億9300万ドルに比べ46.5%も増加した。

 運用資産全体に占めるキャッシュの割合、つまり、キャッシュポジションも6月末には45.5%に達した(図表4)。半分弱が現金ということは、もう投資のリスクを取るのを避けているようなイメージだ。機関投資家の通常の資産運用でキャッシュポジションをそこまで高めることはまずないと思われるので、バークシャー・ハザウェイは現金の山に埋もれているといってもいいかもしれない。

図表4 バークシャー・ハザウェイが保有する現金
図表4 バークシャー・ハザウェイが保有する現金
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 バークシャー・ハザウェイは6月末以降にも保有するバンク・オブ・アメリカ株の一部を複数回にわたって売却したことが明らかになっている。バークシャー・ハザウェイはバンク・オブ・アメリカの筆頭株主であり、株式の保有額はアップル、アメリカン・エキスプレスに次いで3番目に当たっている。

 なぜ中核銘柄の売却を急いで、キャッシュポジションを高めているのか。バフェット氏は2024年5月4日に開催した年次株主総会で、アップル株を売却している理由を株式の譲渡益(キャピタルゲイン)に対する税率が将来、上昇する可能性があるためだとしている。これは確かに1つの理由であろう。

 米国株全体の株価水準が高すぎて、新たな投資先を発掘しにくくなっているという側面ももちろんある。2024年8月30日に94歳の誕生日を迎え、総仕上げに動いているのかもしれない。

バフェット氏は総仕上げに動いているのかもしれない(写真:Mojahid Mottakin/stock.adobe.com)
バフェット氏は総仕上げに動いているのかもしれない(写真:Mojahid Mottakin/stock.adobe.com)
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