α世代を見ると、2030年代の消費のあり方やマーケティングが見えてくる──。若者世代に見え始めている行動特性や新たな価値観は、未来の社会を洞察するヒントとなる。では、α世代に見られる特性とは。彼ら彼女らが育った時代背景とともに、新刊『新消費をつくるα世代』著者の小々馬敦氏が読み解く。[日経クロストレンド 2024年5月22日付の記事を転載、一部更新]

2024年に中学2年生となるα世代を想定した、成長年表の概要
2024年に中学2年生となるα世代を想定した、成長年表の概要
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α世代の成長年表

 α世代の一般的な年齢定義は、2010~24年生まれ。全員が21世紀生まれとなる最初の世代です。2024年に最年長が14歳になり、世代の大半は現在小学生です。ミレニアル世代の子どもに当たる世代で、総人口数(0~14歳の合計)は約1500万人です。

 世界中を見てみると、若者人口が増加している国では、α世代は毎週280万人以上が生まれており、総人口数は2025年に25億人規模に。今後のグローバル経済に大きな影響を及ぼす最大ボリューム世代として注目されています。

 ちなみに、α世代は2024年生まれが最後の年とされていて、2025年以降に生まれる世代を、「β(ベータ)世代」と呼ぶ動きが始まっています。αの下の世代、β世代が世の中に登場するまで、もう少しです。

 α世代の特性を知るために、まずは彼ら彼女らが育ってきた時代背景を捉えます。

 仮想ですが、2010年に生まれて2024年に中学2年生となるα世代を想定し、その生い立ちについて、α世代の親と先生たちにヒアリングを行い成長年表にまとめてみました。(下図)

α世代の仮想成長年表(2024年に14歳・中学2年生の場合)
α世代の仮想成長年表(2024年に14歳・中学2年生の場合)
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 α世代は、親世代(ミレニアム世代が多い)がスマートフォンやタブレット端末などのデジタルデバイスを暮らしの中に積極的に取り入れ、SNSを通じて家族や友人と遠隔でも当たり前につながっている、2010年代に生まれ育っています。

 こうした親の影響で、幼いころから家の中にあるデジタルデバイスを自然と使いこなすリテラシーを身に付けています。デジタルデバイスで動画コンテンツを見る中で興味が湧く情報に出合うことが多いためか、多様なジャンルの習い事に通うのが、この世代の特徴の一つです。

 そしてα世代は小学校高学年の時期が新型コロナウイルス禍でした。学校の授業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化が急速に進むことで、家庭での時間と学校で過ごす時間や体験がデジタル空間の中で融和していきました。ゲームの仮想空間の中で待ち合わせして遊ぶことも自然で、友人と交友する時間もオンラインの中であることが増えました。

 また、彼ら彼女らは、小学生まではSNSなどの自分のアカウントを持っておらず、親のアカウントを借りて親の監視下でコンテンツを楽しんでいたため、オンライン上で嫌な体験をしたことがありません。中学生になり、自分のスマホとアカウントを持つようになることで、SNSに対する感覚がどのように変わっていくのかは、今後の調査テーマの一つです。

 α世代が成長してきた生活環境についてイメージできたでしょうか。続けてα世代の特性について具体的に紹介していきます。

α世代の5つの特性

 小々馬ゼミでは、2022年からα世代の小学生と、その成長を近くで見守っている家族や教員を対象に、定量定性調査を継続しています。そこからα世代ならでは特性をたくさん見いだすことができました。その中でも、みなさんのビジネスに大きく影響を与えると思われる「5つの特性」を紹介します。

α世代の5つの特性
  1. AIとの親和性が高い
  2. リアルとバーチャルの境目なく生活する
  3. 世界を描き出すクリエーター
  4. 答えありきで考える
  5. 社会課題を解決する成果志向

(1)AIとの親和性が高い

 現役の小学校の先生から「今の小学生は、AI(人工知能)からお薦めされる情報を抵抗なく受け入れます。AIとの親和性がとても高く、アルゴリズムを使ったマーケティングとの相性のよさを感じます」と教えていただきました。

 スマホやタブレットの登場後に生まれたα世代は、物心がついて初めて手にするおもちゃがデジタルデバイスであることが多いそうです。また、親がスマホを使って動画を見たり、ほしい物を探して購入したり、キャッシュレス決済をする様子を見ていたりするため、デジタルツールを日常のあらゆる場面で使用することが前提の世界で暮らしています。

 幼児期から親の管理指導の下でSNSやWebサービスを使っているため、Web上のコンテンツが自分向けにパーソナライズされていることに違和感がなく、その便利さを当然のこととして受け止めています。

 また、家にあるスマート家電や学校や塾で使用する学習アプリには、当たり前のようにAIが搭載されていてその恩恵を感じて暮らしているので、AIを活用することは生活の常識(コモンセンス)となっているのです。AIなどのテクノロジーリテラシーの高さは、Z世代からα世代への顕著な進化として捉えられます

 Z世代もデジタルネーティブと呼ばれますが、様々なテクノロジーが社会に浸透していく過渡期に育ち、その中で失敗や怖い思いをした経験があります。そのため、実は新しいテクノロジーには不安感があり、生活を便利にするために、今以上にAIやロボットを使うことに疑念を抱いています。

 また、Z世代は過剰なネット情報に惑わされて失敗したくない思いから、顔の見える人・知人からの情報を信頼する「ヒューマン志向」が強いという特性も挙げられます。対してα世代は、人間味を感じられれば、ロボットやアバターともコミュニケーションできる「ヒューマニティー志向」が強いのが特徴です。

 α世代は、新しいテクノロジーをうまく使いこなせ、自分たちが活用することで社会課題を解決するための手段になるという感覚を持っていて、これは、5つ目の特性である「社会課題を解決する成果志向」の強さにつながっています。

(2)リアルとバーチャルの境目なく生活する

 α世代はオンラインゲームの中で過ごす時間が長く、リアル(現実)とバーチャル(仮想)空間を境目なく往来する生活を楽しんでいます。

 α世代の多くは、人格形成に影響が大きい3~10歳の幼少期をコロナ禍で過ごしました。在宅学習など自宅に居る時間が増えたことから、動画配信の視聴やオンラインゲームを室内で楽しむことが習慣となっています。

 Z世代はスマホを使っている時間が長く、オンラインゲームのプレー経験は調査した全5220人のうち4割程度でした。対してα世代は、全1420人中の6割以上がオンラインゲームのプレー経験があり、バーチャル空間の中で過ごす時間が長い傾向が顕著です。

 Z世代は「リアルとバーチャル空間はつながっているけれど別の世界」という感覚を持っているのに対して、α世代は放課後にオンラインゲームの中で友達と待ち合わせをして遊び直すなど、インターネット上の仮想空間が自分の生活圏の一部となっている様子が見えます

(写真:Sasint/stock.adobe.com)
(写真:Sasint/stock.adobe.com)

(3)世界を描き出すクリエーター

 α世代は頭の中に思い浮かぶ世界観を次々に仮想空間につくり上げていきます。そして出来上がった世界に友達を呼んで一緒に遊んだり、オンラインでつながってサバイバル生活を楽しんだりするなど、仮想空間は居心地のよい自分の場所であり、仲間と楽しく過ごすコミュニティーでもあります。

 2022年に、小々馬ゼミの大学生と小学6年生の子どもたちがチームを組んで、2030年の家と暮らしぶりを絵に描く『ミライ・スケッチ2030』と名付けた研究プロジェクトを実施しました。大学生たちが小学生と一緒に時間を過ごす中で、自分たち世代との違いを痛感したこと、それは、想像力と再現力の高さでした。

 プロジェクトでは10年後の未来の家の中の様子を絵に描いていくのですが、大学生が想像したのは、家中がBluetooth(ブルートゥース)でつながり、どの部屋にも途切れることなく好きな音楽が流れている楽しくて居心地のいい家というような、やや抽象的なイメージでした。

 対して小学生たちがスケッチした未来の家の姿は、より具体的でした。例えば、キッチンにある冷蔵庫は、あらゆるものがネットにつながる「IoT」プログラム化されていて、表面の透明スクリーンには食材の賞味期限を知らせる機能やその食材を使ったメニューを提案する機能があり、フードロスを削減できるといった具合です。頭の中に浮かぶアイデア(観念)を解像度高く表現できる再現力に大学生たちは驚いていました。

α世代がスケッチした「2030年代の理想の家」(イラスト/じゅーぱち)
α世代がスケッチした「2030年代の理想の家」(イラスト/じゅーぱち)
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 また、一つ一つのアイデアの起点には、どんな社会課題を解決できるのかの成果目的が明快にあり、どのようなテクノロジーを利用すればその課題を解決できるのか、すべき事の答えが明確に描かれていることに、自分たち世代との違いを感じたそうです。

 このプロジェクトでα世代が未来をスケッチする様子を観察し、私はあることを感じました。それは、近い将来にリアルとバーチャル世界とを認識する順番が入れ替わるのではないかということです。

 例えば、私たちが未来をよりよい場所にしたいと思ったとき、頭の中に浮かぶアイデアをAI、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)などのテクノロジーを使って人々が体感できるレベルの解像度で描き出し、そしてそのバーチャル上の創造物を目指すべき完成形であり“本物の世界”と認識するようになります。

 そうすると、今生活している現実の世界を、“本物の世界を模倣した未完成の模擬世界”と認識するようになるのではないかという予想です。

 現時点でのデジタルツインコンピューティング構想は、現実世界をデジタル仮想空間上に再現することですが、バーチャル世界がより身近になると、理想とする世界をまずは仮想空間に描き、現実の世界に再現するという逆の発想もあり得ると感じました。

 そうなると将来、政府や企業は未来ビジョンを抽象的な言葉で描いて伝えるのではなく、人びとが体感できる“本物”の世界を仮想空間につくった上で世に問い、その世界を現実世界に再現する使命が期待されるようになると考えます。この本物の世界を創造する力は、4つ目の「答えありきで考える」特性につながります。

(4)答えありきで考える

 「今の小学生は調べることに時間をかけません」。この特徴も小学校の先生から聞きました。

 前述のように、教材アプリなどでAIが編集した情報を当たり前に受け入れることが身に付いているので、調べる手間をかけずに、最短経路で答えを知りたいという感覚があるのだと思います

 大量の情報に惑わされて「失敗したくない」という意識は、Z世代もα世代も共通して持っています。しかし両世代で異なるのは、失敗を避けるために取る行動です。Z世代は失敗しないために、購買を決定する前にInstagramやX(旧Twitter)などのSNS上で「本当に自分に合っている」と確信できるまで信頼できる情報を探します。

 一方でα世代は、あれこれ調べることは手間であり時間の無駄だというタイパ(タイムパフォーマンス)の感覚を持っているようです。そのためAIが自分向けにリコメンドする内容を積極的に受け入れ、購買の選択に生かします

 彼ら彼女らからすると、AIがすぐに商品を教えてくれるのだから、その商品に行き着くまでに様々な情報を当たって吟味する必要がない、という考えなのでしょう。AIは生活を便利にする日常的な手段の一つであるため、提供される情報に疑念を持つことなく、使える情報として受け取ります。

(5)社会課題を解決する成果志向

 α世代の行動プロセスは、まず「答え」を確認することが特徴で、その答えを実現するためのアイデアや技術スキルを持っている仲間が集って協力することで、目的を達成できるという成果志向の強さを感じます

 「答え」をどのように導き出すかに関してですが、何が正解なのかを問う姿勢には、Z世代とα世代で違いがあるように思います。

 Z世代は幼いころから「正解は一つではない。だからみんなで自由に考えてみよう」と教えられてきました。価値観の多様化に配慮しての指導なのですが、意見の出し合いに時間をかけてしまい、その結果、答えが抽象的なものにとどまってしまったり、一つにまとまらなかったりということが起こりやすい印象があります。

 一方で、今の小学生の考え方はシンプルです。「社会的に正しいことが正解」と考えています。人びとの価値観が多様であることを前提とするのであれば、みんなにとってよりよいこと、社会的に正しいことが「正解」という考え方です。やるべきことは明快なのだから、直ちにみんなで答えを共有し、その解決や実現に向けて結集しようというマインドが主流となっていく流れを感じます。

 こうした特性を培った背景には、親の影響や時代背景に加え、国が定めた教育方針の変化もあるでしょう。近年、日本の教育方針が大きく変容しています。

 2020年には「学習指導要領」が10年ぶりに改訂され、現在α世代は、小学校入学直後からプログラミング教育やSDGs(持続可能な開発目標)教育を受け、中学年からは外国語教育が必修授業となるなどの、新たな教育課程に沿ったカリキュラムを受けています。

 学習指導要領の改訂に合わせて、2019年に文部科学省は全国の生徒に1人1台ずつコンピューターと高速ネットワーク・ICT(情報通信技術)環境を整備する5年間計画「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」をスタートしました。新学習指導要領でうたう、子どもたちが自律的に生きる力を育むことを支援する一つの手段として、ICT環境を実現することに取り組んでいます。

 さらに同年、「STEAM教育」の推進が始まりました。それまで推進していたSTEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)と呼ぶ理数教育に、新たに、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理などを含めた広い範囲でのArt(芸術)の創造性教育を加え、子どもたちの創造的な発想を伸ばそうとする教育理念です。5つの領域の教科学習を融合して横断的な学習をすることで、子どもたちが実社会で問題を発見し解決する「生きる力」を育むことを支援します。

 教育環境の変化が、今後どのような世代特性に反映されていくのか注目です。

「α世代」とは、2010年~24年頃に生まれる世代。本書はα世代の特性と、彼ら彼女らが社会の中心に躍り出る2030年の消費と社会像の在り方を考察する、国内初の本格的な書籍です。これからの時代に求められるマーケティングのあり方や、マーケターに必要な素養について考えます。

小々馬敦(著)、日経BP、1980円(税込み)