部下のミスを減らしたい――そう考える上司ほど、「意識を高めろ」「気をつけろ」といった声かけや叱責に頼りがちです。しかし、それだけでミスは本当に減るのでしょうか。特にZ世代の若手に対しては、従来の指導が逆効果になるケースも少なくありません。『 無くならないミスの無くし方 決定版 』(日経ビジネス人文庫)著者の石田淳さんに、ミスがなくならない理由と、上司の関わり方について聞きました。

「内面」を指導すると部下の心は離れていく

  前回 、「ミスは意識の徹底ではなくならない」とお話ししました。今回は上司が悩むことの多い「部下のミス」について考えます。部下のミスを防ぐため、声かけをしたくても「パワハラになるのでは」「オブラートに包んでいうと伝わらない」とジレンマに陥っている人も多いと思います。

 ミスは「意識の徹底」や「あいまいな声かけ」ではなくなりません。本書『無くならないミスの無くし方 決定版』では、「全体を見て」「相手目線になって」「ニーズを把握して」といった、上司が使いがちな「曖昧な声かけ」の一覧も掲載しています。日頃自分が使っていないかを改めて確認してみてください。

 部下のミスを防ぎたいときは、「何を」「どうするのか」を具体的に説明し、「成果の上がる行動を習慣化」する必要があります。

 具体的な説明をしないまま、上司が「なぜ、こんなこともできないのか」と部下の「内面」を指導するだけでは、部下や後輩の心は離れていき、ますますミスはなくならなくなります。部下は黙って我慢を重ねたまま時間が経過し、ある日突然「ちょっと、お時間いただけますか?」と声を掛けられたときには、すでに部下は退職の意志を固めていた──というケースを耳にすることが少なくありません。

『無くならないミスの無くし方 決定版』(石田淳著、日経ビジネス人文庫)/画像クリックでAmazonページへ
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 いわゆるZ世代と呼ばれる若手社員は「褒められて育ってきた」人が多いと言われています。「何をしているんだ」と言われたり、「なんでこんなことをしたの?」と聞かれたりしただけで驚き、人格を否定されたように感じる人も中にはいるでしょう。
 若手社員とのコミュニケーションで必要なのは、まず「承認」です。例えば、「新入社員が電話に出たがらない」と、職場で悩んでいるとしたら、「電話を取ってくれてありがとう」「何コール目までに出てくれて助かったよ、ありがとう」と声をかける。営業であれば営業成績そのものよりも、「今日は〇件の訪問を達成したね」と褒める。

 昭和世代の上司の中には「そんなことまで褒めなくてはいけないのか」「かえってバカにされているように感じるのでは」と思う人がいるかもしれません。しかし、どういう行動が望ましいか伝え、結果はもちろん、行動を起こしたことを承認することで、ミスは減っていきます。また、「軽視されている」ように伝わってしまうのであれば、そもそも普段のコミュニケーションに問題があるということです。

 こうした「行動を承認する声かけ」を自分ができているかどうかを知るには、チェックリストを使ってみると効果的です。生成AIを使えばそれほど時間をかけずにリストを作れるので、試してみるといいでしょう。

 今は人手不足で、優秀な若手は貴重です。本気で早期離職を防ぎたいのであれば、普段から部下の話を聞くことが大切です。ただ、1on1を設定したところで、いきなり本音を話してくれるかどうかは分かりません。話を聞く場を設けつつ、「行動の承認」と「結果の承認」を繰り返し行っていくことで、若手は変わってくるはずです。

ミスを無くすために読んでおくといい本

 ビジネスの現場でさらにミスを防ぎたい人は、私が2011年に書いた『 組織行動セーフティマネジメント─「仕組み」でリスクを回避せよ 』(ダイヤモンド社)も参考にしてみてください。表紙に大きく書いてある「BBS」とは、「Behavior Based Safety」の略。組織の中での「危険行動」をどのように「安全行動」に変えるか、具体的な手法を紹介しています。
 安全のための小さな確認を怠ったために起こる重大事故、コンプライアンス上の小さなミスが引き起こした巨額の訴訟沙汰など、ビジネスに特化した内容となっていますので、リスク回避についてより専門的に学びたい人にお薦めです。

『組織行動セーフティマネジメント─「仕組み」でリスクを回避せよ』(ダイヤモンド社)/画像クリックでAmazonページへ
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 私自身はよく出張に行くため、電子書籍で本を読むことが多かったのですが、最近はまた紙の本に回帰しています。なぜかというと、スマホやタブレットで電子書籍を読んでいて、つまらない内容だとついメールやSNSを見てしまう。「読書に集中できない」というミスをする状況を自らつくり出しているようなものですよね。

 その点、紙の書籍は読みはじめると逃げ場がありませんから、集中できます。紙の書籍のよさを再確認しているところです。ビジネス書をはじめ、文芸、雑誌とジャンルを問わず月に10冊ほどは読んでいます。

 最近、読んで面白かったのは、『 プロジェクト・ヘイル・メアリー 』(アンディ・ウィアー著、小野田和子訳、ハヤカワ文庫 画像とリンクは上巻)。本当に面白くて上下巻を一気読みしました。映画も見に行きましたが、映画だと2時間30分にすべての要素を詰め込めませんから、私は原作のほうが好みでした。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(アンディ・ウィアー著、小野田和子訳、ハヤカワ文庫 画像とリンクは上巻)/画像クリックでAmazonページへ
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 もう一冊挙げるなら 『 爆弾 』(呉勝浩著、講談社文庫)です。原作を夢中になって読んでから、Netflixの配信を見ました。こちらも映画化されましたね。

『爆弾』(呉勝浩著、講談社文庫)/画像クリックでAmazonページへ
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 ちなみに小説を読みながら、「この場面で、こう行動すればミスを防げたのに!」と思うことはありません(笑)。ただただ小説の書き手のイマジネーションに感動しながら、物語を楽しんでいます。
 電子書籍から紙の本に回帰したことで、書店に行くことが増えました。リアル書店は思いがけない出会いがあって楽しい、と改めて感じているところです。

取材・文/三浦香代子 構成/市川史樹(日経BOOKプラス編集) 写真/木村輝