「新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、口座は作ってみたものの放置している」「人気の銘柄に投資はしているけど、自分の生活スタイルに合っているのかよく分からない」…こんな悩みを抱えている方におすすめなのが『優待株・高配当株投資のきほん』(大口克人著/日経文庫)です。株式投資とはどこから手を着ければよく、どんなメリット・デメリットがあるのかなどを解説。今回は、株式投資とは何かについて、本書から抜粋してお届けします。

個人投資家だって「会社のオーナー」

 「会社」という言葉は日常的によく聞く言葉ですが、形態によって株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つに分かれます(以前は有限会社というのもよく聞きましたが、2006年の会社法施行で有限会社の新設はできなくなりました)。

 ここでは全体の7割を占める株式会社の仕組みが分かればいいので、4つの違いは省略します。

 株式会社というのは比較的規模の大きい会社に多く、株式を発行して証券市場で広く売り、そこで集めた資金で会社を運営します。

 株を買った人(会社に資金を提供した人、出資者)は株主と呼ばれ、たとえわずかな株しか持っていない個人投資家であっても、その会社の所有者(オーナー)の1人になります。

 オーナーですから株主総会に出席もでき、経営に対して意見を述べることもできます。私のように古いことをよく覚えている方だと、昔の大手証券のCMの「あなた様は株主様!?」というフレーズを思い出すかもしれませんね。

 一方、会社を運営する人(経営者や従業員)は出資者とは別で、このように所有者と経営者が別だというのが株式会社の大きな特徴です。

株式会社の仕組み
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
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株式会社は配当を出し、決算を行う

 株式会社では事業を行って利益が出れば、それを配当として投資家に還元します。投資家から見れば「株を買って持っていれば配当が受け取れる」ことになります。

 また株式会社はどんな経営を行っているのか、売上や利益、かかった経費などをまとめて、株主に定期的に報告する必要があります。これがよく聞く「決算」です。

 ということは、決算の資料をしっかり読み解くことができれば、その会社の業績や将来性、強みや経営の巧拙などが分かることになります。

 個人投資家はこうした情報や「A社が新サービスを開発した」「B社がコスト削減に成功した」といったニュースを元に、「将来、株価が上がりそうな会社」を見つけます。

 その会社が東京証券取引所(東証)などに上場している場合は、証券会社を通じてお金を投資し、その会社の株を買うことができます(サントリーホールディングスやJTB、竹中工務店のような有名企業でも、非上場だと株は買えません)。

株は「買いやすく」なっている

 昔は株を買う最小単位が100株、1000株と2通りあったので、1000株の銘柄の場合は一度にかなりの額が必要でしたが、現在は「1単元は100株」と統一されたので、その点では買いやすくなりました。

 また株価水準自体が高い株を「値がさ株」と呼び、昔は値がさ株も随分多くありました。

 しかし株は会社が「1株を2株に」など任意の単位に分割することができ(株式分割)、それに応じて株価は理論的には2分の1に下がったりします。

 近年は新NISAから投資を始める人を意識して、個人でも買いやすい株価にするために多くの企業がこの株式分割を行いました。例えばNTTは1株を25株に、ソフトバンクは1株を10株に、日立製作所やソニーグループは1株を5株に、それぞれ分割しています。

 東証はこの株式分割をさらに進め、最低投資額を10万円程度に引き下げるよう企業に求める方針です。今後は株がさらに手軽に買えるようになるわけです。

 余談ですが、私が『日経マネー』の記者として仕事を始めた頃には、この「株を買う」という行為にも時間とお金がかかりました。店舗を構える「対面証券」の証券会社に出向き、銘柄名を伝えて発注するか、電話で発注するかしかなかったからです。

 1銘柄の売買に手数料が2500円もかかった時代もあり、頻繁に売買すると手数料で利益が減るとか損が出ることすらありました。自分が持っている銘柄の株価が今いくらなのかも、証券会社に電話するか、店頭の株価ボードを眺めるか、日本短波放送(今のラジオNIKKEI)で聞くかしかなかったのです。

 しかし1990年代の終わり頃に日本でもネット証券が登場したことにより、株式投資の環境は大きく変わりしました。

 現在ではネット証券に口座を開いてパソコンやスマートフォンで取引をするのが当たり前になり、株価はいつでもどこでも即座に分かるし、売買にかかる手数料もネット証券を中心に「ゼロ円」化が進んでいます。

 のみならず、昔なら機関投資家やプロのアナリストしか持っていなかったような投資情報も、無料で、道を歩きながらスマホ1つで手に入るようになっているのです。NISAのような非課税投資制度が充実してきたことに加え、投資環境自体がこれだけ良くなっているのですから、うまく生かしていきたいものです。

ネット証券の登場により、株式投資は身近に(写真:NicoElNino/stock.adobe.com)
ネット証券の登場により、株式投資は身近に(写真:NicoElNino/stock.adobe.com)
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株式投資の原則はシンプル

 話を戻すと、昔であれ今であれ、株式投資の大原則は変わりません。それは「株を安く買って高く売る」ことに尽き、そうすれば値上がり益(キャピタルゲイン)が得られます。

 キャピタルゲイン狙いの投資法としては、1日のうちに何度も売買を繰り返す「デイトレード」や、数日から数週間持ち続け、値上がりしたら売る「スイングトレード」がよく用いられます。

 一方、このような短期では売買せずに、配当(インカムゲイン)を狙って株を長く持ち続ける方法もあります。一般に長期投資と言われるスタイルで、高配当株投資や優待投資を手掛ける人は必然的に長期投資家ということになってきます。

 その期間は数年から10年以上に及び、中には「気に入った優待銘柄は一生売らずに持ち続ける!」という優待投資家もいるほどです。

株式投資の様々なスタイル
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
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 さてこの株式投資の魅力ですが、何と言っても第一はお金が大きく増やせることです。買値から10倍以上に値上がりする株を「10倍株」とか「テンバガー」と呼びますが、これを見つけることは株式投資家の夢の1つです。

 もちろん、投信やETF(上場投資信託)も長期でお金を増やせる優れた金融商品です。1つの投信やETFの中には数多くの個別株が含まれており、1本買えばそれだけで分散投資になる(中の1社や2社が倒産しても影響が少ない)という長所があります。

 その半面、投資がうまくいった時のリターン(利益)もそこそこになりがちで、投信が個別株のように10倍になったという話はめったに聞きません。

 しかし、日本株では10倍株は意外に多くあります。

 2008年のリーマン・ショック後に付けた最安値から最高値までの上昇率を調べた結果、2024年3月1日時点で3828銘柄中の1045銘柄が、一度は10倍以上に値上がりしていたのです(日経マネー調べ)。

 東証上場銘柄の実に27%が該当し、4つに1つ以上が一度はテンバガーになったことがあると思うと、やっぱり株式投資には夢があるなあと実感します。

日本株にはテンバガーも意外と多い
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
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 もっとも、将来のテンバガー候補を早い時期に見つけるのは簡単ではない上、それが10倍になるまで売らずに持ち続ける胆力(ベテラン投資家はよくグリップ力と言っています)も必要なので、誰でもすぐテンバガーをつかめるわけではないのは自明の理ですが。

 また、このような大きな値上がり益のほかにも、優待品、高配当の魅力もあります。

 さらに、最近はやりの「推し活」ではないですが、「商品やサービスが好きで、よく使っている会社」を応援できるのも株式投資のメリットではないでしょうか。

 自分が株を買うことでその会社の資金が潤沢になれば、事業の継続につながるだけでなく、新商品や新サービスのR&D(Research and Development=研究開発)、工場建設にも資金が回ります。

 その結果、将来より良い商品・サービスとして消費者に返ってきて、金銭面以外でも自分の生活を豊かにしてくれる可能性があるのです。

株価上下も、物価高騰も、もう怖くない。もらえる喜びと、宝探しの楽しさ。まさに、最強の投資術! 金融専門記者が優待株投資と高配当株投資についてやさしく解説。ベテラン投資家たちのマイ投資術も収録。

大口克人著/日本経済新聞出版/1100円(税込み)