「新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、口座は作ってみたものの放置している」「人気の銘柄に投資はしているけど、自分の生活スタイルに合っているのかよく分からない」…こんな悩みを抱えている方におすすめなのが『優待株・高配当株投資のきほん』(大口克人著/日経文庫)です。株式投資とはどこから手を着ければよくて、どんなメリット・デメリットがあるのかなどを解説。今回は、株主優待投資のうれしい6つのメリットについて、本書から抜粋してお届けします。
(1)銘柄選びが容易
株主優待実施企業の多くはBtoC企業で、特に自分から探しにいかなくても製品やサービスが身近に存在します。
それを普通に使って生活する中で「あっ、この新商品は良い!」と気付いたら、その会社が株を上場しているのか調べてみて、上場しているならさらに優待はあるのかを調べる…といった手順で、自然と有望銘柄を探せます。
これを順引きだとしたら、逆引きで「こういう優待品をくれる企業はないのかな」と、証券会社の株主優待検索コーナーや優待投資家のブログで当たりを付ける、という手もあります。
「物から入るなんて株式投資の本質に反する!」という人もいそうですが、例えばふるさと納税だって返礼品から入ってその市町村を知り、旅行先に選ぶ、その土地の名産品をお金を出して買うようになる、ということはあるはずです。
特にBtoBの優待企業に生活の中でふと出合うのは難しいので、こういう選び方も一案だと思います。
最終的に損をしないよう業績や財務をよく調べた上で買うのが前提になりますが、こういう「カタログ的な選び方」で投資先が探せるのは優待投資だけでしょう。
もちろん日経マネーでも定期的に優待特集を掲載しており、優待品の写真が並んだカタログページは毎回人気を呼んでいます。
(2)優待品は家計の助けになる
今や日本人の命の源であるお米の価格が2倍に高騰するようなインフレが国民を苦しめており、2024年のエンゲル係数は28.3%と43年ぶりの水準に上昇しています。
こんな中で、食品や生活必需品が多い優待品の価値は投資の歴史上で最も高まっているのではないでしょうか。
優待投資家の中には「お米や化粧品は買ったことがないし、外食に行ってもほとんどお金を使わない」という人が大勢います。
お米以外でも洗剤、食用油、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどを優待品としてくれる企業は結構あり、これらが半年に1度など(しかも株を持っている限りずっと)送られてくるとしたら、全部買っている家庭に比べて金銭的にかなりゆとりができるはずです。
(3)優待株は自然と長く持てる
投資家にとって一番いけないのは、時々マーケットを襲う金融ショック時の暴落や、不祥事が出て株価が急落したその谷底の部分で恐怖にかられて売ってしまうことです。
極端に言えば投資とは、それさえしなければ長期ではある程度報われるものなのです。企業は寝る間も惜しんでライバルより良い商品やサービスを開発しようとしていますし、世界の人口増加は止まらないのでグローバル経済も日々成長していますから。
そして優待投資は「もうちょっと待っていればまたお米が来るんだよね。売らないで様子を見ようか」と、自然と売りにブレーキがかかって長期保有ができるようになっています。
私も「あの時売らずにずっと持っておいて本当に良かった」という優待投資家の声は何度となく聞いています。
(4)不祥事でも株価が下がりにくい
これは前項とも関係しますが、優待株は企業の不祥事が発覚した時にも、株価が下がりにくい傾向があります。これを優待投資家のみきまるさんは「優待株のエアバッグ効果」と名付けていますが、株価が極端に下がらないから長く持ち続けられる、とも説明できそうです。
象徴的な例が、14年に起こった日本マクドナルドホールディングスの消費期限切れ鶏肉の偽装問題です。
同社はこの問題の影響で、14年、15年と2期連続の大幅赤字に陥ったのですが、株価自体はあまり極端な下落を見せませんでした。「下がったら買いだ」と待ちかまえていた投資家たちが、あまりにも下がらないので憤慨したという話もあるほどです。
私自身もこの頃、優待連載を担当していたために「やはり優待族はマックの優待券が欲しいから、こんなことがあっても簡単には株を手放さないんだな」と実感したことをよく覚えています。
(5)最低単元の保有が最も有利に
優待制度は面白くて、多くの企業が「最低単元(100株)しか持っていない個人投資家が最も有利になる」ように設計しています。
例えばA社は100株の株主に2000円分の自社商品を送るとしましょう。多くの株数を持つと優待品が増えるのが普通なので、A社も「500株以上保有の株主には6000円の自社商品を送る」とします。
100株で2000円分なら500株は1万円分にすれば良さそうなものですが、通常そのように比例はせず、100株の方がお得になることが多いのです。
これはおそらく企業の側に「とにかく株主数を増やしたい」という狙いがあるからでしょう。市場再編前には東証1部上場の要件に「株主数が2200人以上」というのがあったので、今でもそういう意識があるのかもしれません。
この狙いはある程度成功していて、優待投資家に取材すると「自分1人で200株買うのでなく、自分が100株、妻が100株と手分けして買うようにしています。そうすると優待品が倍もらえて有利だから」という話を実際によく聞きます。
(6)少額でも始められ、分散投資になる
こういう制度設計になっているため、優待投資は最小単元から始められ、そのままにするのが結構有利です。株式分割を行う企業も増えていますから、最近は「株式投資を始めるには多額の資金が必要だ」という感じはほとんどありません。
5万円以下で買える魅力的な優待株もあり、そうなると「いろいろな優待品が欲しいから、少額ずつ別の優待株に投資してみよう」となるのは自然な流れですよね。
こうして優待投資家は少数の銘柄に集中投資するのではなく、複数の銘柄に少額ずつ分散投資することになるのです。
私が取材した範囲に限りますが、彼らが1人で数十銘柄持っているのは割と当たり前で、ベテランの域に達すると数百銘柄という人も大勢います。こうなればその内の1社、2社が倒産しても全体への影響は軽微ですから、資産の安全性も高まりますよね。
そして実は企業にとっても、優待制度導入はメリットが大きいのです。株主還元に積極的な企業だという印象を出せますし、優待新設発表で株価が上がった例はたくさんあります。
また、優待品として自社製品を送る場合はカタログギフトや金券類に比べ、はるかにコストパフォーマンスが良くなります。自社製品ですから原価に近い値段で用意できますし、社外への資金流出もないわけです。
何を送るかをひと工夫すれば「こういう優待品が欲しい人をわが社の投資家に」と、選別して囲い込むことも可能になります。タカラトミーの優待でしか手に入らないオリジナル「トミカ」や「復刻版リカちゃん人形」などは、そういう意味でかなりよく考えられたチョイスだなと感じます。
大口克人著/日本経済新聞出版/1100円(税込み)



