「新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、口座は作ってみたものの放置している」「人気の銘柄に投資はしているけど、自分の生活スタイルに合っているのかよく分からない」…こんな悩みを抱えている方におすすめなのが『優待株・高配当株投資のきほん』(大口克人著/日経文庫)です。株式投資とはどこから手を着ければよくて、どんなメリット・デメリットがあるのかなどを解説。今回は、高配当株に投資する際の注意点について、本書から抜粋してお届けします。

最大のリスクは減配や無配転落

 「選んで買ったら長期保有」が基本で、簡単そうに思える高配当株投資。ただし当然ですがこれにも注意点や落とし穴があります。

 高配当株投資で倒産の次に怖いのは、無配になって配当がもらえなくなることです。

 減配なら経営が改善すれば戻る可能性もありますが、無配の方は、いったん転落すると復配するのはかなり困難です。

 最も分かりやすい例が東京電力ホールディングスでしょう。

 配当利回りは中程度でしたが、毎年必ず60円前後の配当が安定して出ていました。そもそも昔は電力株はインフラの中でも安定した「鉄板銘柄」とされ、中でも東電は電力政策の担い手として、国の後ろ盾を持つ一種特別な存在だったのです。

 ところが2011年3月の東日本大震災の影響で無配に転落し、その後14年間、配当は一度も出ていません。もちろんこれは未曽有の大災害のせいです。

 その後東電は政府から資金注入を受けて実質国有化され、経営を立て直しました。24年には前年の赤字を乗り越えてしっかり利益が出ています。しかし復配はまだないのです。

東京電力ホールディングスの配当の推移
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
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 最近の例ではあおぞら銀行の無配転落が挙げられます。

 24年2月に、黒字のはずだった24年3月期の連結最終損益が業績悪化で赤字になるという予想を発表。同時に、第1~第3四半期は38円、第4四半期は40円で年154円としていた配当を、第3・第4四半期は「0円」と変更したのです。

 これにより株価は36%も下落しました。

 それまでは配当利回り4~5%の高配当株で、新NISAでも個人投資家に多く買われた銘柄の一角だっただけに、余計に失望感が広がりました。

 現在は復配しているものの、過去10年ほど毎年150円前後の配当が出ていたのが、25年3月期は76円(注)と半分程度になってしまいました。

(注)25年5月2日時点。同社はその後、5月14日に79円への増配を発表。

あおぞら銀行の株価チャート
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
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 日産の事例も学びになるでしょう。

 24年11月に、「販売台数の減少などで先が見通しにくく、合理的な算定が困難だ」として25年3月期の連結最終損益予想を「未定」とし、年間で25円としていた配当も未定としたのです。

 配当は22年3月期から5円、10円、20円と増えてきており、発表の前の株価だと配当利回りは6%程度になるため、こちらも高配当株として多く買われていました。

 しかし経営の苦境が伝えられ、ホンダとの経営統合も打ち切りになるなど懸念材料も多くありました。

 ここでトヨタと日産の株価の動きを見てみましょう。

トヨタ・日産の株価の推移
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
(出所)日経文庫『優待株・高配当株投資のきほん』
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 20年4月を100として5年間の株価変動を指数化すると、両社の株価の成長力には上のグラフのように大きな差があるのが分かります。

 足元の配当利回りだけに注目して投資することにはやはりリスクがあり、長期的に会社が成長しそうかどうかを見極めるのが重要だと言えます。

配当生活にはかなりの投資が必要

 もし「年100万円」もの配当が受け取れたら、生活にはかなり余裕ができますよね。これは投資家の間でちょっとした「夢」として語られる額です。

 しかし、仮に配当利回りが5%というかなりの高配当株を持っていたとしても、年100万円の配当を受け取るには2000万円もの投資が必要になります。配当利回りが3%なら3333万円強が必要です。

 つまり「かなりの額の退職金が出て、しかも全く使う当てがない」というような人でない限り、年100万円の配当は難しいということなのです。

 若い人でも配当生活に憧れ、高配当株を中心に投資している人がいますが、原資が少ないうちは配当額も大した額にならないことは意識しておくべきでしょう。

 もっと言えば、高配当株は成熟産業に多く、グロース株のような大きな株価成長は期待しにくい銘柄です。そのため、高配当株の達人たちは「若くて資金が少ないうちは高配当株ではなく、小型のグロース株など将来大きく成長しそうな株を買った方がいい。それで資金が増えたら徐々に高配当株の割合を増やしていき、シニアになってから配当生活を目指すくらいでもいい」とアドバイスしています。

配当の受け取り方には4種類ある

 少し細かい話ですが、国内株式の配当の受け取り方には4種類あって、間違えるとNISA口座でも非課税にならない場合があります。

(1)株式数比例配分方式…証券口座で配当を受け取る方式。ある株を500株(A証券で200株、B証券で300株)持っていて、配当金が全部で5000円なら、A証券の口座に2000円、B証券の口座に3000円入金される。NISAで配当を非課税で受け取りたいなら、この方式を指定する必要がある。

(2)一括振込方式(登録配当金受領口座方式)…他の証券会社にある株も含め、保有している全ての株の配当金を、指定した1つの銀行口座に入金してもらって受け取る方式。

(3)配当金領収証方式…銘柄ごとに株の発行会社から送付されてくる「配当金領収証」と引き換えに、郵便局やゆうちょ銀行で受け取る方式。引き換えには期限がある。

(4)個別銘柄指定方式…銘柄ごとに投資家が指定した自分名義の銀行口座に入金してもらって受け取る方式。


 それぞれ一長一短があり、例えば一括振込方式なら全ての配当を1つの銀行口座で管理できるので便利ですが、この受け取り方を指定してしまうとNISAでも非課税にはなりません。株式数比例配分方式を選ぶのをお忘れなく。

必要な資金や受け取り方の指定など、知っておかないとはまる落とし穴がある(写真:zephyr_p/stock.adobe.com)
必要な資金や受け取り方の指定など、知っておかないとはまる落とし穴がある(写真:zephyr_p/stock.adobe.com)
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株式分割で配当はどうなるか

 株式分割とは企業が自社の株を1株→2株などに分割することで、投資家が持っている株の数は増えますが、その全体的な価値は分割前と変わりません。株価1000円の株を1:2で分割する場合、株価は理論上2分の1の500円になるからです。

 個人にも買いやすい株価に調整し、流動性を高めるため、あるいは流通株式数を増やして上位の市場への移行を狙うためなど、様々な狙いで分割は行われます。

 1997年に上場したヤフー(現LINEヤフー)は過去14回も株式分割を行っており、上場時の1株は単純計算で81万9200株まで増えています。では分割に際して、配当はどうなるのでしょうか。

 一般的には配当も分割度合いに応じて減らされますので、配当利回りは変わりません。例えば2024年1月に3分割した三菱商事は、分割前に210円だった配当を70円にしています。

 ですが企業によっては時々、「株は1:2に分割するが配当は据え置く」ということがあります。投資家は何もしなくても前の2倍の配当を受け取れるわけで、これは増配にほかなりません。

 また「株は1:5で分割するが、配当は100円を30円に変更する」というような場合もあり、一見配当が減ったように見えますが、これまで100円だった配当が5倍×30円で計150円になるので、これまた増配です。

 当然ですが、配当が増えれば配当利回りは上がります。投資家がそれを好感して株価が上がることもありますから、総じて株式分割は好ましいものとされています。

株価上下も、物価高騰も、もう怖くない。もらえる喜びと、宝探しの楽しさ。まさに、最強の投資術! 金融専門記者が優待株投資と高配当株投資についてやさしく解説。ベテラン投資家たちのマイ投資術も収録。

大口克人著/日本経済新聞出版/1100円(税込み)