「新NISA(少額投資非課税制度)が始まり、口座は作ってみたものの放置している」「人気の銘柄に投資はしているけど、自分の生活スタイルに合っているのかよく分からない」…こんな方におすすめなのが『優待株・高配当株投資のきほん』(大口克人著/日経文庫)です。株式投資とはどこから手を着ければよくて、どんなメリット・デメリットがあるのかなどを解説。ここでは、実際に優待株に投資して実績を積み上げてきた優待バリュー株投資家・みきまるさんのインタビューを本書から抜粋してお届けします。後編は、実際に投資する際にどうすればよいのかについてです。
なぜ優待ボロ株投資はやみつきになるのか
優待株でも、小型株の方が成績が良いのは確かです。
小型株の方が株価が上がりやすいという「小型株効果」は世界中で観察されていて、論文もたくさんあります。日本株なら狙い目は時価総額が50億円以下の銘柄で、これらのパフォーマンスは、例えば1000億円以上の株に比べて2~3倍は高いんじゃないかな。
だから基本的には僕もそこを狙うスタンスで、今も中古品販売の買取王国や岐阜造園などの株を大量に持ってます。
こういった銘柄は買うのに勇気がいるし、流動性がないので悪材料が出た時には逃げ場がないんですが、過去の経験上、株価に勢いが付いた場合にはすぐ2倍、3倍になるんです。
これも個人投資家ならではの手法です。機関投資家は時価総額50億円以下の株は上司に説明できないので(笑)、絶対買えませんから。
とはいえ50億円以下の株には本当にダメな株もあるし、東証も上場から5年で時価総額が100億円に達しない企業はグロース市場を上場廃止にすると決めたので、例えば300億円以下の小型株でもいいと思います。
投資が分かってきた人なら、D株の優待ボロ株をまとめて買うバスケット投資も「遊園地のお化け屋敷」的な楽しさがあっていいですよ(A、B、C株については前編「 優待バリュー株投資家・みきまる 優待株を3種類に分ける投資術 」参照)。
倒産寸前の本当にダメな低位株ではなく、財務はまだ傷んでないけど指標面で見ると悪く、完全に市場心理から見放されているような、極端に安い優待銘柄を複数買うわけです。
これは当たった場合に非常に大きいので、余裕資金でポートフォリオの一部に入れておくのはいいと思います。
もちろんお化け屋敷ですから怖い失敗もあって、僕自身も優待ボロ株投資のつもりで持っていたらそのまま上場廃止とか倒産とか、随分ありました。
購入金額は絞っているので、ダメージは限定的でしたけどね。株式投資の魅力の1つはやっぱりギャンブル性で、これをきれいに満たしてくれるから優待ボロ株投資は面白いんです。
有力投資家をまねする前に見ているポイント
僕の情報収集の中心はX(旧Twitter)です。そこに有力投資家が集結してるんで、彼らをフォローして常に情報の渦の中に居るようにしています。
もちろん玉石混交ですが、たまに良い情報が流れてきます。ある程度実力が分かっている投資家が言う「良い銘柄」については、自分でもすぐに調べます。
あと、最近だいぶ減りましたがブログを書いている有力投資家もいるので、何十人分かは巡回します。オフ会も、有力者が集まる仲間内のものには参加しますよ。
やはり生の人間の情報は重要ですし、その人がどういう発想でその銘柄に行き着いたのかはすごく知りたいんですね。こういう風に考えたのか、そしたらこの人の考え方のこの部分を使えるなとか、そういう情報は生じゃないと手に入らないので。
街歩きももちろん多用します。大きなイオンとかを巡回して銘柄を探すのは基本戦略ですね。これは米国の著名投資家ピーター・リンチの教えに従っているわけですが。
実際、3、4年前の新型コロナウイルス禍の時、どの店もガラガラなのに3COINSだけは行列ができてたんですよ。それを見た瞬間に「絶対いけるやろう」と思って、運営するパルグループホールディングスをポートフォリオ1位になるまで買いました。株価は結局5倍になったので1億円以上は勝ちました。
僕ら個人投資家は消費の最前線にいるわけで、機関投資家よりも先に情報に気付けます。これまた個人投資家の大きな優位性で、初心者でも同じです。
1億円近く負けた大失敗も
もちろん25年の間には、大きな失敗もありましたよ。例えば2016年に暴落した結婚式場運営のエスクリです。
当時、主力銘柄としてポートフォリオ1位になるまで買って、IR(投資家向け広報)に確認しても業績は絶好調だというので自信満々で持っていたら、ある日突然凄(すさ)まじい下方修正が出て、1億円近く負けました。
この時はまず体が株価下落に反応して、トイレに行って吐き、しばらくはもう茫然(ぼうぜん)自失って感じでした。夜も眠れず、もう思考ができない感じで。
でも損切りしなければ生きていけないんで思い切って売って、その後数日たって徐々に冷静さを取り戻して……みたいな、そんな感じでした。
当時は今よりも損切りの基準が甘かったと思います。今は保有している775銘柄のうち、含み損が20万円以上の株は1つもありません。
1銘柄の損失額が100万円を超えたら要注意で、200万円を超えたら絶対切る、と損切りを徹底しています。そこで1回負けを認め、どうしても必要なら買い直すまでです。
優待廃止は原則的には売りです。
ただ、この辺は今、状況が非常に複雑になっているんです。優待は廃止するけどその分配当で出しますよとか、同時にDOE(株主資本配当率)を入れて累積配当にしますよといった場合は、売る必要がないことも多々あります。
何のアナウンスもなくただ優待廃止という時は原則売りなんですが、最近はその一方でMBO(経営陣が参加する買収)になって株価が上がることもあるので、過去の反応も見るし、MBOの可能性がないかも確認します。結局はケース・バイ・ケースですね。
最近は優待界も混沌としてきました。
企業側から見た時に、優待新設は低コストで、株価を高く維持しやすい手段だということが認知されてきたのがあると思いますが、そういったムーブメントのせいで優待が「利用されてるな」と感じます。
優待利回りの極端に高い銘柄も出てきていますが、僕はどの優待新設銘柄でも当然ファンダメンタルズを見るので、指標的に明らかに高いとか、過去25年間のキャッシュフローの推移を見て少しでもおかしいと思えば買わないですね。
2024年10月に高額の優待導入を発表し、結局1度も優待を実施しなかったREVOLUTIONも、「これはありえんやろう」と、購入を1ミリも検討しませんでした。
優待初心者にとって優待利回りの高さは罠(わな)で、つい目を惹(ひ)かれてしまうとは思いますが、前編で説明したミックス係数に照らしてもらえば、手を出さない方がいい銘柄は分かると思います。
その意味では初心者でもPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)、株主資本比率くらいは知っておきたいですね。
そこで「ミックス係数は22.5以下で株主資本比率は40%は欲しい」といったことが分かれば、とんでもない銘柄をつかまずに済みます。
30銘柄持てば10倍勉強できる
まとめれば、自分の周りを見渡してよく使うサービスや企業が何かを考え、そこが上場しているかどうか調べ、合理的な株価水準で、なおかつ優待が付いていれば買う。そのやり方なら長く持てるので、結果的に負けない投資になります。
細かい部分は僕の本(『 楽しみながらがっちり儲かる 優待バリュー株投資入門 』日経BP)を参考にしてもらうのもいいと思います。
ただ、初心者だからと銘柄数を抑える必要はありません。むしろ増やした方がいい。理由は簡単で、たくさんの株を持った方が勉強になるからです。最初は圧倒的に知識が不足しているわけですから、3銘柄ではなく30銘柄持てば10倍勉強できます。
だから僕は最初はどんどん買えとアドバイスしていて、例えば『日経マネー』に出てくるような、良い優待の付いた指標的にも割安な銘柄を買い、「優待品が届いたら使って楽しんでほしいし、事業報告書というのが来るからそれも読んでみて」と言っています。
そうやって投資に慣れてきたら、そこから銘柄を選別していけばいいのです。
大口克人著/日本経済新聞出版/1100円(税込み)



