『ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(文春新書) の著者で米ハーバード大小児精神科医の内田舞さんが、読者の子育ての悩みに答える本連載。今回の悩みは「子どもが幼稚園、学校に行きたがらない」「友達と遊ぶより1人で本を読んでいることが多い」です。

育児の悩み、不安の根底にある親のメンタルから、子どもとの向き合い方、進路やSNS、身の守り方など、子育ての疑問に3児の母である舞先生が答えます。2025年6月刊行予定
内田さんの3人の子どもたち。みんなが集まる自宅の机でお絵かきをしながら(写真:本人提供)
内田さんの3人の子どもたち。みんなが集まる自宅の机でお絵かきをしながら(写真:本人提供)
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Q1 年少の子どもが幼稚園に行きたがりません。体つきはしっかりしていて、話も上手、園に友達もいるのですが、毎朝、登園を拒否します。週に1度、母子で療育センターに通うのは楽しいようです。幼稚園を転園するか、在籍だけしてほぼ休むか、小学校まで家で過ごすのがいいか悩んでいます。

まずは「嫌がる理由」を本人に聞いてみる

 不登園、不登校の問題は本当に難しいですよね。学校に行きたがらない子どもを無理やり学校に行かせるべきか、それとも家にいてもいいというべきか、判断しなければならないことは、子育ての中でも難しいことの一つです。幼稚園ではなく、小・中学校のデータですが、2022年度の日本の不登校の人数は29万9048人で、前年度から5万4108人(22・1%)増え、10年連続で増加しています。(出所: 文科省『令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要』 )いろんな理由が背景にあると思いますが、こちらの相談者さんは、まずお子さんに「幼稚園が嫌な理由」を聞いてみるのがいいかもしれません。

 幼稚園の年少さんだとうまく説明できないかもしれないので、その場合は親御さんが幼稚園を見学させてもらうのもいいですね。

 幼稚園を見学できるのであれば、子どもの言動が先生や園児たちに理解されているか、子ども同士のいざこざなどが起きたときの先生の対応はどうか、幼稚園の中で我が子の機嫌はよいか、こういった点を見てみましょう。自分の子どもは基本的によい環境でケアを受けていると感じることができるのであれば、子どもが「行きたくない」と言う日も、親として行くように促すことに少し躊躇(ちゅうちょ)がなくなるかもしれません。

 しかし、うまくいっていない、子どもの様子に気になるところがあると感じるのであれば、悩んでいることを幼稚園の先生に相談してみてもいいでしょう。もし、直接、先生に「こうしてほしい」という希望を伝えることが難しければ、療育センターの先生などに「幼稚園ではこういう状況なのですが、どんなふうに先生や幼稚園に働きかけられると思いますか」と相談してみてもいいですし、あるいは家でできることがあるかどうか、というようなことを相談してみてもいいでしょう。

 また、具体的な問題がないと思われる場合にも、「行きたくない」というお子さんはいます。

 私の子どもも「今日は行きたくない」と言うことがありますが、そういうときに私は「そうだね、行きたくないよね」と子どもに共感して答えています。私が彼らの立場だったらどう感じるだろうか、ということを考えての言葉です。

 私だって仕事に行きたくない日はあります。もちろん、仕事は生きがいでもありますし、やりがいも楽しみもあります。人生において、私にとって仕事はなくてはならないものです。しかし朝起きて、仕事に行きたいと思うかといったら、そうではないことも多いです。みなさんも、そう思う日はありませんか。そんなときに、「あー、仕事行きたくないな」と私が言って、夫から「生活のために働かなきゃ」「仕事に行くのは義務でしょ」と言われたら、とても嫌な気持ちになると思います。

 だから子どもが学校に行きたくないという気持ちにもとても共感できるのです。私が、「学校に行くのは義務でしょ」「お友達がいるでしょ」と言ったら、嫌な気持ちになるだろうなということも想像できます。

 子どもに対しても、「行きたくない日もあるよね」「つまらない気持ちは分かるよ」と声をかけながら、子どもの気持ちを「自分だったら」と想像しながら、受け止めてあげることが大事です。

 そして、「帰ってきたら何をして遊ぼうか?」「下校時間が待ち遠しいな」と送り出し、帰ってきたら「えらかったね」と温かく迎えます。実は園や学校で一日過ごすことは、子どもたちにとって、とても努力をしていることなのです。それにもかかわらず、勉強や運動ができることに比べて褒められる機会が少ないもの。そこに着目して「えらかったね」「ちゃんと通ってくれて感謝してるよ」と伝えることが大切だと思います。

 ただ、こうした方法を試しても「どうしても嫌だ」と言う──。人間にはどうしても合わない環境がありますから、その場合は「休む・やめる・変える」も選択肢です。質問に戻ると、やはりお子さんが嫌がるようであれば、週に一度通っていて楽しいと感じている療育センターの先生と相談して、療育センターだけに通うのもいいと思います。私自身も中高一貫校に通っていましたが、中学の雰囲気が私には合わないものだったので、中学卒業後、高校は一貫校とは違う高校に入学しました。学校に行き続けることを目標にしつつも、「ここでなければダメ」と我慢を続ける必要はありません。

大人だって仕事がいやなこともあるし、会社に行きたくない日があるはず(monzenmachi/stock.adobe.com)
大人だって仕事がいやなこともあるし、会社に行きたくない日があるはず(monzenmachi/stock.adobe.com)
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Q2 小学3年生の子どもがいますが、学校や学童では1人で過ごしています。休み時間は1人で図書室に行っていることが多く、学童でも本を読んでいるようです。ただ、本人には全く困った様子がありません。一人っ子で、他の子どもと関わる機会が限られているため、このままでいいものかどうか悩んでいます。

親が思うほど子どもは気にしていない

 子どもがひとりぼっち、友達がいないというのは親として心配ですよね。でも、この相談者のお子さん自身は、もしかしたらそんな状況に困っていないかもしれませんし、寂しいとも思っていないかもしれません。今、このお子さんが友達と過ごす時間よりも読書に興味があるのであれば、親が「読書よりも友達との時間に興味を持ちなさい」と言っても難しいでしょう。「将来、有利だから機械やITに興味を持ちなさい」と言っても持てないのと同じことです。

 ならば、「何に興味があるのか」「そもそも今、友達がいないことが苦になっているのだろうか」と、この子にとっての興味や悩み、この子にとっての幸せは何なのかに視点を向けてみるといいでしょう。もし本人が友達がいないことを気にしているなら、放課後や週末に気の合いそうな子と遊べるようにセッティングしてあげるのもいいと思いますし、読書好きの子同士で本を読み合うブッククラブなどを探すのもいいかもしれません。まずは、親としての心配ではなく、お子さん本人の希望や興味に目を向けてください。

・子どもの「行きたくない」には理由がある。登園・登校が義務だと思わず、まずその原因に目を向けてみよう

・親が子どもに無理やり興味を持たせることはできない。「何が子どもの幸せか」を考えて

文/三浦香代子 構成/木村やえ(日経BOOKプラス編集部)

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本文中、一部文章の位置を変更しました。本文は修正済みです。 [2024/01/17 18:30]