2024年7月3日から発行される「新一万円札」の顔である渋沢栄一はさまざまな名言を残しました。ロングセラーになっている日経ビジネス人文庫『渋沢栄一 100の訓言 「日本資本主義の父」が教える黄金の知恵』『渋沢栄一 100の金言』から、テーマごとに5回に分けて紹介します。第4回はビジネスや商売についての名言です。
競争にはモラルが必要だ
Competition, the good and the bad
商売上(殊に輸出営業などについて)に
注意を望むのは、競争に属する道徳である。(中略)
すべて物を励むには競うということが必要であって、
競うから励みが生ずるのである。【『論語と算盤』算盤と権利】
現代の言葉で言うと……
ビジネス(特に輸出関係など)上の競争では、それに伴うモラルを忘れてはならない。
物事に励むためには、競争が必要である。
人と競い合うからこそ、努力が生まれる。
「悪意の競争」ほど怖いものはない
「競争」という言葉は、今の日本で、ときに悪意を持って受け取られますが、人は人と競い合うからこそ、努力し、向上するものです。
ただし、競争には善と悪の二種類があります。
毎日、他の人より朝早く起きて、人より多く努力をし、他人に打ち勝つことは、よい競争です。
一方、他人が企画したことが、世間で評判がよいからといって、これを真似したり、横取りを企んだりするのは、悪い競争です。
この“競争の悪用”ほど怖いものはありません。
小さく見ると、一企業の経営の発展を妨害しかねず、大きく見ると、一国の運営全体の信用に、傷をつけかねません。
前向きなイノベーションは、善意の競争ですが、姑息なイミテーションは、悪意の競争なのです。
信用すなわち資本と思え
Trust is indeed your capital and the foundation of your prosperity
信用は実に資本であって
商売繁栄の根底である。【『渋沢栄一訓言集』実業と経済】
現代の言葉で言うと……
信用とは、企業にとって資本であり、ビジネスの成功の基礎にあるものだ。
資本主義の根本は、お金ではなく信用
ビジネスにおいて、信用とはとても大切なものです。たとえばあなたは、「大きな資本の企業であれば、おのずと信用が高まる」と思っているかもしれません。
しかし、それは本末転倒した考えです。
信用を高めなければ、資本を大きくすることもできません。
たとえ大資本を持ったA社が、B社を支配しようとしても、そこにA社に対する信用がなければ、B社は思い通りにはならないでしょう。
企業を経営するとき、小さい資本を積み重ねていけば、いつかそれは、大きな資本になります。
同様に、小さい信用を積み重ねれば、やがて大きな信用を得られるのです。
資本主義の根本は、お金ではなく信用です。
事を焦らず、コツコツと信用を積み重ねましょう。
すべて政府に頼ることはだらしない
Don’t ask the government to do everything
政府万能主義で、何事も政府に依頼せんと欲するは、
国民一般の元気なき表徴であって、
腑甲斐なき至りといわねばならない。【「渋沢栄一訓言集」立志と修養】
現代の言葉で言うと……
政府が万能で、何事も政府に依頼することは、国民が元気のないことを象徴していることであり、まったくだらしがない。
すぐに政治や役人のせいにしない
政府を万能と思い込み、何かあるとすぐに陳情する姿勢は、国民に元気がないことを表しています。このように気が弱い状態では、気迫が欠けていて日本の新しい時代が拓けるわけがありません。
日本社会では、自分の都合が悪くなると、すぐに政治が悪いとか役人が悪いとか、不満の声が上がります。では、いったい、誰が現在の政治の状態を許しているのでしょうか。まるで鏡に向かって指をさしているようです。
国民一人ひとりが国や社会の行方について嘆いているのに、多くの人が投票に行かないか、テレビで吠えている有名人にしか関心を寄せません。日本という民主主義国家社会の運営の責任を放棄しているから、そもそも官僚という少数支配階級が成り立つどころか、かえって必要となるのです。
中央と地方を合わせて、およそ1000兆円の債務を抱える政府が万能であるという認識が甘いのです。日本国民が、常に政府に保護を求めれば、政府破たんの確率が倍増します。
今、日本で不可欠なことは、いかに世界で国力をつけるか、すなわち民間力を推進し発揮できる政治思想と施行です。
『 渋沢栄一 100の訓言 「日本資本主義の父」が教える黄金の知恵 』
「満足は衰退の第一歩」「『他人をも利すること』を考えよ」――。企業500社を興した実業家・渋沢栄一。ドラッカーも影響された「日本資本主義の父」が残した黄金の知恵を、5代目子孫がいま鮮やかによみがえらせる。
渋澤健著/日本経済新聞出版/定価713円(税込み)
『 渋沢栄一 100の金言 』
「物事は順序を踏み、焦ってはならない」「何もせずに暮らすのは罪悪である」「なんでも政府に頼るのはだらしがない」「誰にも得意技や能力がある」「文明とは人々の知識能力で決まる」「みんなのためを口実にするな」――など「日本資本主義の父」渋沢栄一の100の熱い言葉を一冊にまとめました。
渋澤健著/日本経済新聞出版/定価880円(税込み)


