成果を出し続けるリーダーは、3つのアクションに注力しています。それは「信頼関係を築き、人間関係の悩みを解消」「任せ方を磨き、マネジメントと育成を両立」「自走するチームを育て、持続的な成長と成果をもたらす」です。では具体的にどう行動すればいいのか? 連載第1回は「信頼関係の築き方」について。新刊『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』(越川慎司著/日経BP)から抜粋・再構成してお届けします。

現代は「みんなで考える」時代

 「上司は偉い」「顧客が絶対だ」という上下関係は終わり、お互いが感情を共有し、解決策を一緒につくる「共感・共創時代」に突入しました。

 そのため、リーダーとメンバーが「いい関係」を築くことは、成果向上と個々人の成長を実現するために欠かせません。

 今、リーダーを務める人の多くは、「言われたことをやる」で成果が出続けた経験をしているかと思います。
 しかし、現代は「答えのない課題」や「誰も経験したことがない問題」に向き合わなければならない状況ばかりです。

 だから、前に進むために「みんなで考えるチーム」になることが必要なのです。

「いい関係」をつくる5つの要素

(写真: OHMAl2T/stock.adobe.com)
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 では、その基盤をつくる「いい関係」とは、どのような状態なのでしょうか。
 それは、仲良し関係や上下関係の固定化ではなく、「場づくり」「行動指針」「成長」「協力体制」「将来性」の観点から、次の5つを満たす関係性です。

1【場づくり】信頼と心理的安全性が確保されている
2【行動指針】役割と期待が明確で、相互補完関係になっている
3【成長】フィードバックが定期的かつ建設的である
4【協力体制】リソースやサポートを必要に応じて受け渡せる柔軟性がある
5【将来性】個々人のキャリア形成や自己実現への関心が共有されている

 これらの要素が整うと、「生産性」「イノベーション」「社員定着率」「顧客満足度の向上」といった、組織全体のパフォーマンスを底上げする土台が築かれます。
 さらに、チームがポジティブな空気で満たされます。

パフォーマンス力を底上げするための行動習慣

(写真:patpitchaya/stock.adobe.com)
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 では、5つの要素が具体的にどのような状態なのかを紹介します。

1【場づくり】信頼と心理的安全性が確保されている
 ● ミスや未熟なアイデアを否定しない
 ● 自身の課題や改善希望を率直に上司へ伝えられる
 本質的な問題提起や革新的な意見交換がスムーズに行われるためには、この状態が必須です。
 ハーバード大学のエイミー・エドモンドソンが提唱する「心理的安全性」の概念でも指摘されているように、お互いが挑戦や発言をためらわず、自発的な行動を促す状態は、良好な関係に必須の要素なのです。

2【行動指針】役割と期待が明確で、相互補完関係になっている
 ● 「方向性」「優先順位」「ゴール」をわかりやすく示し、メンバーが「自らの専門性」や「主体的行動」でそれを具体化できる
 ● 目標設定があいまいなまま「適当に頑張れ」ではなく、「この期間に、この数値目標を達成してほしい」と明示する
 この状態ができあがると、メンバーは自分の行動指針を得ることができます。
 その結果、リーダーは戦略的大局観、メンバーは実行力・創造性を発揮し、組織全体が効率的に成果を上げやすくなります。

3【成長】フィードバックが定期的かつ建設的である
 ● 適切なタイミングでメンバーの努力・成果を評価し、改善点も具体例で伝える
 ● メンバーも遠慮なく現場で感じる問題点や効率化案をリーダーに提案できる
 双方向的なフィードバックループがある状態は、全員が学習と改善を続け、職場内で「成長」や「学び」の文化が醸成されるようになります。

4【協力体制】リソースやサポートを必要に応じて受け渡せる柔軟性がある
 ● メンバーが直面している課題を理解し、必要な情報、時間、人員、予算を適切に提供する
 ● メンバーはリーダーの要望に応じて、協力者としてスムーズに動く態度を持つ
 「必要なときに、必要な支援が得られる」関係性は、業務推進をスムーズにし、結果として顧客満足や業績向上にもつながります。

5【将来性】個々人のキャリア形成や自己実現への関心が共有されている
 ● メンバーが長期的にどのようなスキルを身につけ、どのようなキャリアを築きたいのかを把握し、成長機会を提供する
 ● メンバーは自らのキャリア目標を隠さず伝え、必要なサポートを素直に求める
 この状態になると、メンバーは仕事を「ただのノルマ消化」ではなく「自己投資」として捉えやすくなり、モチベーションが持続・向上します。

理想的な関係性は、「質のいい衝突」が起こる状態

(写真:Andrii Yalanskyi/stock.adobe.com)
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 この要素を満たした関係性を構築できれば、多くのリーダーが避けている「衝突」もチームを成長させるガソリンになります。

 弊社が「3年以上持続的に成果を出し続けるチーム」を調査(対象 734組織)したところ、成功チームの共通点は「心地よい調和」ではなく「建設的な摩擦が生じている状態」だとわかりました。
 建設的な意見交換をするチームには、異なる意見や知見をぶつけ合って摩擦が生じます。このような反対意見も言える環境が、イノベーションを生み出していたのです。

 これは、多くの組織が抱える「和を乱すことへの恐れ」を根本から覆すものです。

 調査の際、ある優秀なリーダーから聞いた言葉が印象に残っています。

 「最初は全員が同じ方向を向くことが理想だと思っていました。
 でも、本当に大切なのは、違う意見をぶつけ合える関係性だったんです」

 つまり、重要なのは衝突の「有無」ではなく、その「質」なのです。
 私がこれまで支援してきた815社の経験からも、「摩擦を恐れないチーム」が最も大きな成果を上げていると言えます。異質を避けないコミュニケーションがチームに定着すれば、摩擦も活用できます。

 理想的なチームづくりの第一歩として、ぜひ行動にうつしてみてください。

(写真:Raool/stock.adobe.com)
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成果を出し続けるリーダーの共通点は、自分で考え、動ける「自走するチーム」をつくること。本書では、そのために欠かせない「信頼関係の築き方」と「任せ方」をわかりやすく解説します。さらに、「メンバーとのすれ違いをどう解消するか」「業務が忙しすぎて、マネジメントや育成の時間が確保できない」といった、多くのリーダーが抱える課題への具体的な改善策も紹介。リーダーとして成果を上げ続けたい人、必読の1冊です。

越川慎司著/日経BP/1980円(税込み)