成果を出し続けるリーダーは、3つのアクションに注力しています。それは「信頼関係を築き、人間関係の悩みを解消」「任せ方を磨き、マネジメントと育成を両立」「自走するチームを育て、持続的な成長と成果をもたらす」です。連載第2回は「任せ方」「自走するチーム」について。新刊『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』(越川慎司著/日経BP)から抜粋・再構成してお届けします。

「放任」と「自走」の違いとは?

 弊社が2023年に実施した「組織自律度調査」(対象 東証プライム上場企業24社)で、興味深い発見がありました。
 それは、多くのリーダーが「自走」と「放任」を混同していたのです。

 ある大手メーカーのベテランマネージャーは、こう振り返ります。

「私は長年、『メンバーを信頼して任せている』と思っていました。
しかし、それは単なる放任だったんです。
チームは迷走し、結果も出ない。
『なぜだろう』と悩む日々が続きました。」

「自走するチーム」と「放任されたチーム」には、決定的な違いがあります。
私たちの調査によれば、その違いは主に3つあることがわかりました。

1 方向性の共有
放任:「好きにやってください」で終わる
自走:目指すべきゴールが明確で、全員で共有されている

2 権限と責任の範囲
放任:境界が曖昧で、何をしてもよい(何をすべきかわからない)
自走:各メンバーの権限と責任が具体的に定義されている

3 フィードバックの仕組み
放任:結果報告のみ
自走:プロセスにおける学びが重視され、定期的な振り返りがある

(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示

「自走するチーム」でのリーダーの役割

 2012年にノーベル経済学賞を受賞したアルビン・ロスの研究では、「適切なマッチング」の重要性が指摘されています。
 つまり、メンバーが自分の役割と責任を明確に理解し、それに納得している状態が、最も高いパフォーマンスを生み出すというのです。

 あるIT企業の「自走するチーム」に向けた実験では、次のような取り組みを導入しました。

● 週次で方向性を確認するミーティングを行う
● 各メンバーの権限範囲を文書化
●15分間の日次振り返り

 その結果、チームの生産性は43%向上。
 メンバーの満足度も大きく改善したのです。

(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示

 さらに興味深いのは、「自走するチーム」ではリーダーの役割が変化する点です。

「放任型」リーダー
 ● 指示を出さない
 ● 介入しない
 ● 結果だけを求める

「自走を支援する」リーダー
 ● 明確な方向性を示す
 ● 適切な権限委譲を行う
 ● 学びの機会を創出する

 このような変化が起こると、リーダー自身の働き方も大きく改善します。
 「なぜ結果が出ないのか」と悩む時間が減り、より戦略的な仕事に注力できるようになるのです。

自ら考え、行動できるようにするために

(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示

 ある製薬会社の研究開発マネージャーは、こう語ります。

「以前は『任せている』つもりでした。
しかし、それは実は責任放棄だったことに気づきました。
今は、チームの方向性を示し、定期的な対話の場を設けています。
すると、メンバーが自ら考え、行動するようになったのです」

 自走するチームとは、放任された状態ではありません。
 明確な方向性と適切な枠組みの中で、メンバー一人ひとりが自律的に判断し、行動できる状態が「自走するチーム」なのです。
 そして最も重要なのは、「自走は偶然では生まれない」ということ。
 リーダーの働きかけと、適切な環境づくりによってはじめて実現するものです。

(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
(写真:Nuthawut/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示
成果を出し続けるリーダーの共通点は、自分で考え、動ける「自走するチーム」をつくること。本書では、そのために欠かせない「信頼関係の築き方」と「任せ方」をわかりやすく解説します。さらに、「メンバーとのすれ違いをどう解消するか」「業務が忙しすぎて、マネジメントや育成の時間が確保できない」といった、多くのリーダーが抱える課題への具体的な改善策も紹介。リーダーとして成果を上げ続けたい人、必読の1冊です。

越川慎司著/日経BP/1980円(税込み)