いつも明るい笑顔でライブやパフォーマンスを引っ張り、そしてバラエティーや女優としても活躍する日向坂46の二期生、渡邉美穂さん。6月28日に卒業セレモニーを開催し、最新シングル『僕なんか』の活動をもってグループを卒業します。そんな彼女が、約5年間にわたるアイドル活動を振り返った書籍『 私が私であるために 』を刊行しました。

注目ポイントや、読者にどう受け止めてもらえたらうれしいか、そして日頃の本との付き合い方を語った、渡邉美穂さんのロングインタビューを2回にわたってお届けします。第1回は『私が私であるために』の注目ポイントから伺いました。

オーディションを受けた理由から振り返っています

 私の約5年間のアイドル活動をつづった『私が私であるために』は、約2年半の『日経エンタテインメント!』さんでの連載「日向坂46・二期生 渡邉美穂の今日も笑顔で全力疾走」(2020年2月号~2022年6月号)と、大ボリュームの書き下ろしをまとめた1冊です。

 書き下ろしは、「1・アイドル・渡邉美穂を振り返る」、「2・お気に入りエンタテインメントについて」、「3・日向坂46のメンバーへ贈る言葉」の3つのパートになります。

 「1・アイドル・渡邉美穂を振り返る」は『日経エンタテインメント!』さんの連載が始まる前、2017年のけやき坂46(当時)の二期生オーディションを受ける決意を固めた理由から振り返っています。そこから、「オーディション審査期間の葛藤」「グループから初のソロ写真集発行決定」「日向坂46への改名」「コロナ禍での自分との向き合い方」「バラエティーや演技への挑戦」などのいくつものターニングポイントを迎えます。

「この書籍が日向坂46のメンバーみんなにとってプラスになればうれしいです」
「この書籍が日向坂46のメンバーみんなにとってプラスになればうれしいです」
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 この5年間、いつも余裕はなく駆け抜けてきましたが、振り返ってみると、すごく簡単な言葉ですけど、「いろいろあったな」と改めて思いました。

 一緒に歩んでくださったおひさま(ファンの名称)のみなさんには分かっていただけると思いますが、もちろんアイドルは楽しいことばかりではありません。みなさんに幸せをお届けするということが大前提で、その裏にはいろいろなことがあるし、私もより良いものをお届けできるように、自分なりに工夫を重ねてきました。

 でも、活動中に「今、私は頑張っています」と自分から言うのは違うと思っていたので、例えばライブのMCでも「このライブのために、これだけ準備をしてきました」というようなことは言葉にしませんでした。それは、努力を評価するのは、結局は見ている人だから。でも卒業というゴールが見えてきた今、初めて「あのときは頑張っていたんです」と胸を張って言っていいのかなという気持ちになっています。

 当たり前ですが、私以外の日向坂46のメンバーも頑張っていない子はいないし、みんな自分なりの努力をしている。でもそれは現在進行形なので、自分の口からはやっぱり言えないこともあると思うんです。

 だから私のこの書籍から、日向坂46のメンバーはみんな様々なことを考えているんだなということを感じてもらえたらうれしいです。それで、また自分の推しメンバーを応援するスタイルが変わったり、新たな魅力に気付くこともあるのではと思うので、現役でこれからも頑張っていくメンバーたちにとってプラスになったり、みんなの努力が少しでも多くの方々に伝わればいいなと思います。

 この書籍でつづっていますが、2020年にコロナ禍に突入した頃も自分と向き合っていました。

 でも、あのときは「今とこれからをどうしよう」で頭がいっぱいで、知識を付けるために自分なりにちょっと勉強してみたり、趣味を増やしたりという時間の使い方をしていたので、純粋に過去を振り返ったのは、卒業を決めてからが初めてです。

 もちろん、「あのときもっとこうしていればよかった、もっと頑張れたのに」ということは数え切れないほどあります。1つひとつの選択で、こっちにしていたらもっと変わっていたのかなということはすごくあるんですけど、でもやっぱりいろいろあったこの5年間は、最終的にはすごく楽しかったのは間違いないです。ただ、すべての思い出を美化する必要はなくて、それは私なりの考え方なんですけど、つらかったこともあえてそのまま、永遠に覚えていたいなと。それもまた1つの思い出だし、人生だなと思うようにしています。全部が思うようにいくことはないし、毎回正解を出せる人間はいないんだということを、この5年間で学びました。

 それを身をもって知ったので、今後の人生はすごく楽になるんじゃないかと思っていて(笑)。「何が起こるか分からないのが人生だよ」とちょっと楽観的な考えを持てるようになりました。

エンタテインメントは私の元気の源です

 「2・お気に入りエンタテインメントについて」では、「音楽」「アニメ」「マンガ」「映画」「お笑い」「動画配信」「書籍」「ゲーム」「ラジオ」、そして小学校1年生から高校3年生まで毎日ボールを触っていた「バスケットボール」と、私の大好きなエンタテインメントについての具体的な作品や、まつわるエピソードをお伝えしています。改めて、エンタテインメントが私の元気の源になっていたんだなということがすごくよく分かりました。

 どのジャンルのエンタテインメントについても、発信していくには芸術的なセンスが大事で、自分にはないセンスの作品にこそ引かれるなと思うことが多かったです。

 ありがたいことに、おひさまのみなさんからいろいろとお薦め作品を教えていただいたおかげで、自分だけでは知ることができなかっただろうエンタテインメント作品に触れることができました。今気になっているものをもっと深掘りしたいし、でも教えていただいた作品も気になる――。ぜいたくな悩みですが、自由にエンタテインメントに触れられる時間は限られていたので、そんな葛藤もありました(笑)。これからは、自分のペースで引き続きエンタテインメントを楽しんでいけたらと思います。

「私の愛するエンタテインメントたちです」
「私の愛するエンタテインメントたちです」
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「人と話すことはすごく大事」と学びました

 「3・日向坂46のメンバーへ贈る言葉」は私以外の全メンバー21人への感謝の気持ちや思い出を伝えています。こうやって振り返ってみると、ちゃんと全メンバーと正面から向き合ってきたんだなと感じています。私は今だから言えますけど、争いやもめ事が嫌いなので学校では八方美人でした。でも、昔からバスケットボールをやっていて、1番大事にしたいのは「仲間」であり「近くにいる人」という思いがあったので、最初は部活の感覚で活動していました。

 けやき坂46、そして日向坂46で一緒に歩んできた仲間はみんな10代、20代の時間のすべてを懸けてここで頑張っています。その時間を絶対無駄にしてはいけないと思うから、私にとってはやっぱりみんなが家族であり、友達であり、でも大事な仲間であり、ときにはライバルでありという不思議な存在でした。家族より一緒にいる時間の長い大事な仲間とよく話し合って、このメンバーのことをもっと知って、いいところを見つけたいなと思って活動してきました。

 その経験は、今後の人生に必ず生きてくると思います。グループを離れていろいろな現場に行ったときも、疑問点をスタッフさんや共演者の方に言葉で伝えてマイナスになったことは一度もなく、「人と話すことはすごく大事なんだ」と学ぶことができました。

「人と話し合うことはこれからも積極的にしていきたいと思います」
「人と話し合うことはこれからも積極的にしていきたいと思います」
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取材・文・構成/伊藤哲郎(日経エンタテインメント!編集部) 写真/佐賀章広