「頭がいい人とそれ以外の人では、何が違うのだろう?」 ―― この問題に限れば、僕は人並み外れて、真剣に考えてきた自負があります。

 こんにちは、西岡壱誠と申します。偏差値35から2浪で東大に合格した現役東大生です。

 「頭がいい人の条件」というのは、多くの人にとって興味あるテーマではないかと思いますが、僕にとっては、ひときわ切実な問いでした。なぜなら、僕は偏差値35から東大を目指し、2浪で合格しています。受験生だった3年間、「頭がいい受験生とそうでない自分の違い」について、嫌でも深く考えさせられました。

 東大入学後は、人気漫画『ドラゴン桜2』の担当編集の一員となり、何百人もの東大生に取材して、彼ら彼女らの勉強法や思考法などを調べてきました。ドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」でも、「東大監修」として、脚本を監修したり、ドラマに登場する生徒たちが実践する勉強法を提案させていただいたりしています。

 そのなかで、「頭がいい人の条件」について、自分なりに見えてきたことがあります。このコラムではその要点を凝縮して、コンパクトにご紹介していきたいと思います。ドラゴン桜の漫画やドラマと一緒に楽しんでいただけると、よりわかりやすいと思います。

 今回のテーマは「分解力」です。東大生を観察してきて、僕が気づいたのは「頭のいい人は、分解して考える能力が高い」ということで、今日はこの「分解」ということについて、お話ししたいと思います。

「英語の、何ができないんだい?」

 いきなり「分解」と言われてもあまりよくわからないかもしれませんが、違う言葉でご説明すると「細分化」「具体化」のことです。頭のいい人は、勉強はもちろん、何に取り組むときでも、自分の目標や悩み、弱点を「分解」して考える能力が高いのです。

 例えば、「自分は英語ができない」と悩んでいる高校生がいたとします。

 僕はいろんな中学生や高校生の家庭教師をしてきましたし、今は講演などもしていて、そういった場で、こういう質問を多くもらいます。そのときに僕は必ずこう質問を返すようにしています。

 「英語の、何ができないんだい?」と。

 そうすると、多くの生徒たちが口ごもります。「何となく英語ができない」という感覚はあるのだけど、「英語の何ができて、何ができていないのか」を、詳しく答えることはできない。そういうことが、よく発生します。

 逆にここで、「英単語を覚えるのが遅いです」とか「リスニングの問題でいつも間違ってしまっています」とか、自分の悩みを具体的に、細分化して答えられる生徒もいて、そういう生徒は、必ずといっていいほど、その後、成績が上がります。

 なぜなら、悩みが具体的な生徒というのは、悩みを僕に相談した時点でもう、やるべきことがわかっているからです。「英語ができない」という「漠然とした問題」で悩んでいるときは、解決の糸口を見つけるのは困難です。問題がぼんやりしていたら解決策もぼんやりしてしまいますよね。しかし問題が分解されて、「英語のなかでも英単語を覚えるスピードが遅い」というように具体化されていれば、「それなら英単語の暗記のスピードが上がる方法を考えよう」という感じで解決策も具体化しやすいです。

 「問題をきちんと述べられれば、半分は解決したようなものだ」というのはとある米国の発明家の言葉ですが、まさにその通りで、問題を「分解」できれば大抵のことは解決するのです。

 翻って偏差値35だった頃の僕は、「わからない」と感じると、すぐに思考停止してしまっていました。

「わからないところがわからない」を嫌う東大生たち

 東大生は「わからない」で思考を止めません。「わからない」を「わからない」の一言で片づけないのが東大生で、「何がわからないのか」を分解して考えます。

 東大生は「わからないところがわからない」という状態を非常に嫌います。

 例えば、先ほどの「英語がわからない」という高校生だって、英語の教科書や試験問題に書いてあることの何もかもすべてがわからない、なんていうことはないと思うんですよね。例えば、アルファベットは全部書けるかもしれないし、「Hello!」の意味はわかるとか。何かしら「わかる範囲」があるはずです。

 東大生は、このような「わかる範囲」を足掛かりにして、「どこからがわからないのか」「何がわからないのか」を分解し、突き止めるというタスクに、粘り強く取り組みます。

 試験問題に向き合うときもそうです。

 パッと見たとき、できなそうな問題があっても、東大生はすぐに「わからない」と諦めてしまったりはしません。まず、「どこまでならわかるのか」「どこからがわからないのか」を明確にするのです。どんなに難しい英語の問題でも、日本語で書かれた問題文は理解できるかもしれません。数学だったら「これはきっと、確率の問題だな」とか、どんな知識を使って解くのかはわかるということもあるでしょう。どんな難問でも、まるっきり手も足も出ない、ということはほとんどないのです。

 頭がいい人というのは、東大生が試験問題と向き合うときと同じで、仕事でも、日常生活の課題でも、「わかる」と「わからない」を分解する思考訓練を、日ごろから積んでいます。

 それと比較して振り返ると、「わからない」で思考停止していた偏差値35の僕は、要するに逃げていたのです。

「だからあなたはバカなのだ!」

 「わからないんだから、どうしようもない」というのは、「逃げ」なんですよね。

 「わからない」ときには、「自分に何がわかっていないのか」を具体的に突き止めることが必要……。そのことに当時の僕も、さすがにうすうす気づいていたような気もします。けれど、「何がわからないかを突き止める」のが面倒で、見て見ぬふりして逃げていたのだと思います。「わからないところがわからないんだから、どうしようもない」という思考に逃げ込んでいたんです。

 漫画『ドラゴン桜』の5巻に、こんなシーンがあります。国語の特別講師の芥山龍三郎(あくたやま・りゅうざぶろう)先生が、東大を目指す水野直美と矢島勇介を街に連れ出し、いろいろな質問を投げかけます。

「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
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「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
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「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
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「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
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 駅の改札の案内表示に外国語があるという発見をきっかけに、「なぜ」をしつこく問い続ける芥山先生に、矢島が逆ギレします。駅の案内表示に外国語があろうとなかろうと「どうでもいいじゃん!」と。そんな矢島を、芥山先生は「だからあなたはバカなのだ!」と一喝します。

 なぜでしょう?

思考停止がバカを生む

「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork

 矢島がバカなのは、「どうでもいいじゃん」で投げ出して思考停止するからだ、と、芥山先生は説明します。これはまさに、「わからないところがわからない」で投げ出していた、偏差値35の僕と同じです。さらに芥山先生は、こう続けます。

「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
「ドラゴン桜」第5巻・44限目「屋外での授業」©Norifusa Mita/Cork
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 「淡泊な性格な人間」には、学問も東大受験も無理と、芥山先生はおっしゃるわけです。これは「分解して考える力」と結びついていると思います。漠然としたものを、漠然としたままにしないで、分解する。それには「しつこさ」が必要で、「しつこく分解する習慣」というのが、頭のいい人とそうでない人を分ける、大きな要素です。

 でも、考えてみてください。「しつこく分解する習慣」って生まれつきの才能とは、違いますよね! 誰だって、いつからでも、自分の頭をよくすることはできるんです。ぜひ皆さんも「分解力」を意識してみてください。

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2021年6月16日付の記事を転載]

本連載を基にした新刊が好評発売中です。偏差値35から東大を目指し、合格した著者だからこそわかる、「頭がいい人と、そうでない人の違い」とは? 「分解力」「裏技力」「アップデート力」など20個の力に分けて、漫画『ドラゴン桜』を使って解説します。「頭のよさ」をつくるのは、思考と行動、心の習慣。だから、誰だって、いつからでも、頭をよくできる! そんなメッセージをこめて、解き明かします。

西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)