「頭がいい人とそれ以外の人の違い」について、偏差値35から東大合格して、ドラマ「ドラゴン桜」の脚本の監修などをしている僕(西岡壱誠)が、これまでに考えてきたことをお伝えする、このコラム。 前回 は、「分解力」の話をしました。
僕が東大生を取材してきてわかったのは、頭がいい人は、どんな課題でも分解して捉えようとする思考習慣が身に付いている、という話でした。例えば、英語が苦手だとしても、漠然と「英語がわからない」と悩むのではなくて、「英単語を暗記するのが遅い」けれど「文章の構造を理解するのは早い」といった具合に、自分にとって「わかる部分」と「わからない部分」に分解していく、という思考習慣です。
この分解力は、頭がいい人とそれ以外の人の違いとして、とても重要だと僕は考えています。だから今回はしつこいようですが、この話をさらに具体的に分解してみようと思います。
現役東大生が作った「わからない分解ノート」
例えば、このノート。東大でも最難関の理科3類(医学部医学科)に合格した片山湧斗くんが、受験生時代に作っていた「わからない分解ノート」です(ご興味のある方は、『 東大生のノートから学ぶ 天才の思考回路をコピーする方法 』という本に詳しく解説されているので、ご参照ください)。
このノートでは、「数学の点数が伸びない」理由を、「苦手分野の存在」「時間が足りなくなる」「得意分野の取りこぼし」という3要素に分解したうえで、そこからさらに理由を深掘りしています。いわゆる「ロジックツリー」ですね。
このように、東大生には、一つの課題に対して、複数の原因を挙げて分解するという思考習慣を持つ人が多くいます。なぜそうなるかというと、東大の入試問題を解くトレーニングのなかで「分解力」が身に付き、鍛えられているケースが多くあります。
分解力を高めてくれる「国立大学の2次試験問題」
国立大学の2次試験は論述問題が多いのが特徴で、東大はその筆頭です。論述問題の採点は、「満点は10点! この答えが書けたら10点でそれ以外は0点!」というふうには決まりません。「○か×」かの二者択一ではなくて、「ここまで書けていたら2点」「ここまでだったら4点」「ここまでできたら8点」というように、「わかっている範囲」に応じて階段のように点数が与えられることが多いです。部分的でもいいから、わかるところを考えて、答案に書いていれば部分点がもらえる、という形式なのです。
こういう問題に対処しようとすると、おのずと、自分にとって「わかる部分」「わからない部分」を分解するような思考を身に付ける必要があり、日々その訓練をすることになるわけです。だから東大生の場合、受験を通して分解する能力が高くなっていることが多い、ということです。
このような思考習慣は、入試以外の場面でも応用が利きそうですよね。
「2重目標」を知っていますか?
東大生の分解力といえば、もうひとつ、「2重目標」を立てる習慣がある人が多いです。
「2重目標」は、『ドラゴン桜』12巻にも登場します。理科の特別講師の阿院修太郎(あいん・しゅうたろう)先生が、井野真々子(いの・ままこ)先生に、アドバイスをするシーンです。
いかがでしょうか?
ここで阿院先生が述べられている通り、なぜ僕たちが目標を達成することが難しいのかといえば、それは「理想」と「現実」に大きなギャップがあるからです。
理想的な目標は達成するのが難しく、途中で諦めてしまいがちです。だからといって、現実に沿った目標だと達成できても成長の幅は小さくなってしまいます。
この問題を解消するのが、2重目標であるというわけですね。具体的には、次の2種類に分解して目標を設定します。
低い目標……達成可能な、現実的な目標。最低目標とも呼ぶ。
高い目標……達成不可能かもしれない、理想的な目標。最高目標とも呼ぶ。
2つの目標に分解して考えることで、理想と現実の問題を解消できます。現実的な目標をクリアできれば、一定の達成感が得られます。その達成感を土台に、より難しい目標に意欲的にチャレンジしていけます。難易度が異なる2つのゴールを意識することで、目標の高さや、達成に必要な努力の程度も、より具体的にわかるようになります。
目標に数字を入れれば、行動しやすい
そして、この2重目標を作るときのコツとして、東大生がよくやっているのが、数値化です。低い目標にも、高い目標にも、具体的な数字を必ず入れるということです。
例えば、「数学をもっと勉強しよう」とか「英単語をたくさん覚えよう」というような目標では、2重目標になりにくいですし、なかなか努力に結びつきません。
だからこそ東大生は、どんな課題に対しても、具体的な数値化を試みます。目標の分解です。この問題集を「1日5ページ」はやりたいとか、「1日30分」やるとか、練習問題を「1カ月に100問」解きたいとか、ページ数や時間、問題数などを基準に、具体的な分量に落とし込みます。
そのうえで分量に幅を持たせれば、2重目標の完成です。例えば「1日3ページ以上、7ページまでの範囲で頑張ろう!」といった目標を作るわけです。
なぜ、目標に数字がある方が頑張れるのか?
具体的な数字がある方が、人間は頑張りやすいです。
例えば、運動をするためにジムに行ったことがあるでしょうか? ジムでは大概、何キロのダンベルを持ち上げたとか、何キロメートル走ったかとか、何回腕立て伏せをしたかとか、何キロ体重が減ったとか、そういう数字が記録されて、管理されています。そういう数字があると、次の目標設定がしやすいですよね。「20キロいけたから、次は30キロだ!」「10回できた! 次は15回!」というように、「今の目標」に、具体的な数字が入っているからこそ、「次の目標」も決めやすく、成功体験も持ちやすいのです。この理屈は、ジムだけではなく、勉強でも、それ以外の分野においても同じです。
やるべきことを数字に落とし込んで、具体的にしていく。こういう「分解力」も頭のいい人の特徴だと言えます。
いかがでしょうか? 悩みや課題を分解していく能力があれば、様々な局面で応用して、悩みを目標に変えて行動を起こし、結果につなげていくことができるのです。そして、それは確かに「能力」ではありますが、普段から習慣化していくことで、誰でもいつからでも身に付けることができるものだと感じます。ぜひ「分解」を意識してみてもらえればと思います!
[日経ビジネス電子版 2021年6月18日付の記事を転載]
西岡壱誠(著)、日経BP、1760円(税込み)





