札幌駅から程近く、観光客も数多く訪れる北海道大学の札幌キャンパス。南北に地下鉄の駅2つ分以上の区間がある広大な敷地を持つだけに、生協書籍部も、南部にあるクラーク店と、北部店の2店があり、品ぞろえや売れ筋にも違いがあるという。北海道大学生活協同組合書籍部 クラーク店の百石一也さんに伺った。

北海道大学生活協同組合 書籍部クラーク店の百石一也さん
北海道大学生活協同組合 書籍部クラーク店の百石一也さん
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英語資格試験対策本や就活対策本など実用書の売れ行きが好調

 北海道大学札幌キャンパスには書籍を扱う生協店舗が2店舗あります。キャンパス北部にある北部店は、1年生が授業を受ける高等教育推進機構の校舎に近く、常に学生でにぎわっています。一方、南部にあるクラーク店は札幌駅からも近いこともあって、学生や教職員のほか、観光客も多く来店されるのが特徴です。

 そのため、同じキャンパス内の店舗でも、2店の品ぞろえはかなり異なります。北部店は主に1年生向けの教科書のほか、医学部や工学部、歯学部、獣医学部が近いのでそれぞれの分野の専門書を多く取りそろえています。一方、クラーク店は文系学部と理学部の校舎が近く、人文書を数多く取りそろえているほか、北海道に関する本や、観光客向けのガイドブックも多数扱っています。

生協会館2階にあるクラーク店。クラーク胸像や中央ローン広場の近くに位置する。札幌駅からも徒歩7分ほど
生協会館2階にあるクラーク店。クラーク胸像や中央ローン広場の近くに位置する。札幌駅からも徒歩7分ほど
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クラーク店の店内。人文・社会、理学の専門書のほか、文芸・一般、文庫や新書も多い
クラーク店の店内。人文・社会、理学の専門書のほか、文芸・一般、文庫や新書も多い
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 クラーク店の最近の売れ筋は、TOEICやTOEFLなど英語資格試験対策本や就活対策本などの実用書。これは北大ならではの特徴なのですが、1年生全員が6月にTOEFL ITPテストを受験します。その対策のため入学直後の毎年4月にはTOEFL対策本が非常によく売れます。6月以降は就活対策として、TOEICやSPIなどの本が売れ始める傾向にあります。

 それ以外では、人文書が継続的に支持を集めています。当店には、大学生協書店の中では名の知れた、人文系に強い名物担当者が在籍しています。その担当者が薦める人文書に注目する教職員や学生が多いためです。

コロナ禍で売れ行き動向が大きく変化

 コロナで行動制限がかかっていた頃は、旅行も行けないし飲みにも行けない、そもそも学校にも行けない。特に1年生はもう勉強するしかないので教科書を買う。そんな動きがこの3年間は顕著に表れていました。それが今年になっていろいろな制限が解除され、他にお金を使うようなことが増えたのか、学部生については教科書の購入は減少傾向です。

 教員もコロナ禍で学会も中止やオンラインになっていましたので、旅費を使えなかったのですが、その分Web講義用のパソコンや周辺機器、本をたくさん買っていただいていました。それがリアルで再開され始めたので、旅費にお金が動いたんでしょうか。最近は、本の購入が減ってきた傾向がありますね。

 一方、札幌への観光客は戻ってきました。全国から卒業生などの来店も増え、寮歌集や北海道にまつわる書籍などの需要も回復しています。

「語学の検定試験対策本は一年を通してよく売れています」
「語学の検定試験対策本は一年を通してよく売れています」
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 今、注目している本は、『東京の生活史』(岸政彦編/筑摩書房)と『沖縄の生活史』(石原昌家・岸政彦監修、沖縄タイムス社編/みずず書房)。いずれも社会学のジャンルで、一般公募した聞き手が、そこで暮らす人々にインタビューした内容をまとめた本です。『東京の生活史』は1216ページ、『沖縄の生活史』は880ページと分厚い本なのですが、一人ひとりのこれまでの人生や日常の生活をリアルに感じ取られることができ、自分の人生をも考えさせられる本。学生の皆さんにこそ、ぜひ手に取ってもらいたいですね。

もっと北大生に活字に触れてほしい

 大学生協書籍部では、他の大学生協書籍部の売れ行きの数字を見ることができるのですが、当店の売れ行きと、他大学の生協書籍部を比較すると、販売冊数に大きな差があると感じます。特に東京大学や京都大学と比べると冊数の桁が違います。専門書だけでなく文芸書も含めて大きな差を感じます。話題の新刊であっても動きが鈍い傾向にあります。

 現在、北大生は約7割が北海道外からの進学者です。キャンパス近くのアパートやマンション、学生寮に住み、自転車通学をする人が圧倒的に多い状況です。そのため、通学時間に本を読みにくいという背景はありますが、明らかに北大生の読書量が減っている点が気になっています。

 学生の皆さんには、とにかく活字に触れる機会を増やしてほしいですね。YouTubeなど動画から知識を得ようとする人は多いのですが、活字には想像力を育み、鍛える効果があると思っています。人生に刺激を与えてくれる本や、深く考えさせられる本と巡り合えることもあります。

 「自分の中にはないもの」と出合うことができるのが、読書の良いところ。まずは漫画やWebニュースからでもいいので、活字に触れる習慣を付けてもらいたい。そこからいろいろなジャンルの本に触れてほしいと願っています。

 そのために、生協書籍部としてもいろいろな取り組みをしています。例えば、毎年7月に生協の組合員が文庫・新書を3冊以上買うと15%オフになる「まとめ買いフェア」を実施しています。7月の定期試験を終えるとすぐ夏休みに入るので、「夏休みの間に本をたくさん読んでほしい」との思いから企画しています。学生がキャンパスに戻ってきた今年は、売れ行きも好調だったので、今後はこのような機会をさらに増やしていきたいと思っています。

店内には「北海道」の棚も。北海道の歴史や文化、自然をテーマとした本が並ぶ
店内には「北海道」の棚も。北海道の歴史や文化、自然をテーマとした本が並ぶ
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札幌の観光名所でもある北大札幌キャンパス。旅行ガイドブックやキャンパスガイドブックも販売されている
札幌の観光名所でもある北大札幌キャンパス。旅行ガイドブックやキャンパスガイドブックも販売されている
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取材・文/伊藤理子 構成/市川史樹(日経BOOKプラス) 写真/吉田サトル