生成AI関連企業は、LLMを提供するオープンAIやアンソロピックだけではありません。2025年7月に世界で初めて時価総額4兆ドルを超えた米半導体大手のエヌビディアや、クラウドサービスを提供するAWSなども含まれます。競争環境も激しくなる中、これからもうかるのはどの分野でしょうか。新刊『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』から抜粋・再編集して、生成AI業界の今後の動向を探っていきます。

生成AIビジネスの5つのレイヤー

 生成AIによる変化を見るには、生成AI関連ビジネスを提供している企業の動向を知ることも大切です。生成AIの全体像を分類した5つの波の中の、「BIGTECH」と「AIネイティブなスタートアップ」の視点です。ここでも5つのレイヤーに分けて考えると、生成AIのトレンドが見えてきます。

 一番下のレイヤーが「GPU/チップ」です。エヌビディアやAMD、インテル、IBMなどが属するレイヤーです。その上にチップを動かすためのサーバーなど「インフラ、MLOps、ツール」のレイヤーがあります。AWS、アジュール、グーグルクラウド、データブリックスなどがこのレイヤーに属します。さらに上が「LLMモデル」で、オープンAIやアンソロピックなどが代表的な企業です。LLMモデルの上にはアプリケーションのレイヤーとして、「汎用型アプリケーション」と、スタートアップを中心とした「業界特化型アプリケーション」があるという整理です。

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 2023年にChatGPTが広まっていったとき、最も盛り上がったのがLLMのレイヤーでした。そのトレンドに釣られて、チップが必要だということでGPU/チップのレイヤーが盛り上がってきました。そこから少し遅れて、汎用型のアプリケーションとして、ギットハブコパイロットやアドビファイヤーフライ、セールスフォースなどの大きなSaaSがAIを追加していきました。この後、2024年には業界特化型アプリケーションと、インフラ・MLOps(機械学習オペレーションの略。機械学習の運用管理方法を指す言葉)、ツールのレイヤーではセキュリティ関連への盛り上がりが見えてきています。

 下位の3レイヤーについて、少し詳しく見てみます。GPU/チップは、大きく4種類に分けられます。「学習(Training)」と「推論/実行(Inference)」のそれぞれに、「データセンター」「エッジ」という用途がある構成です。マーケット的には、データセンターもエッジも、実行/推論側のほうが圧倒的に大きい状況です。この実行/推論側のチップとしては、例えばグロック(Groq)というスタートアップがあります。LLMを非常に高速に実行できるGPUを作っている会社で、汎用チップと同じリクエストを処理させるとグロックのチップではすぐに処理が完了します。要するにLLMを高速に実行できるチップを作っているだけですが、強烈なインパクトがある企業です。もちろん、雨後の竹の子のごとく同様の高速チップを作ろうとしているスタートアップはたくさん出てきています。

 2番目のインフラ、MLOps、ツールのレイヤーでは、AWS、アジュール、グーグルクラウドの3ビッグが非常に強く、そこにデータブリックスとスノーフレークの2社が割り込んでいます。そして、最近では多くのAIセキュリティ関連のスタートアップが登場してきています。

 3番目のLLMは、ChatGPTの登場から2年あまりで、かなり機能や品質などの差がなくなるコモディティ化が進んできました。LLM同士の競争が激化し、コスト低下と性能向上が同時に起きているためです。使う側からはとてもありがたい状況です。コモディティ化は進んでいますが、LLMは今も進化を続けています。AIの進化の歴史を振り返ると、10数年前にディープラーニングが登場して、見たものを「理解」できるようになりました。そしてGPTの登場で「真似る」ことがうまくなりました。その後、オープンAIからChatGPT o1が登場したのですが、このAIは「考える」ことができるようになっています。「真似る」と「考える」の間には大きな差があり、o1、そしてその後にリリースされたo3は革命的な技術になると思います。

 LLMはすでにコモディティ化が進み、考える力も手に入れています。私たちが日本で生成AIについて取り組むべきことは、新たにLLMを作ったりその性能を上げたりすることではないでしょう。それよりも、エキスパートの持つ業務知識をLLMに学習しやすいように変換し、どんどん業務をLLMにまかせていくことで新しい価値を生み出すことが大切です。

生成AIでこれから儲かるのは

 今後の生成AI業界では誰が儲かるのかを考えていきましょう。少し歴史を振り返ると、例えばクラウド業界では初期の頃は、半導体メーカーやAWS、グーグルクラウドなどのインフラレイヤーが成長率も高く、儲かっていた(下図のピラミッド型の三角形)のですが、その後は、そういったクラウドインフラの上でアプリケーションを構築するSaaS企業が多数出現し、SaaSへと利益の主流が移り変わっていきました(下図の逆ピラミッド型の三角形)。

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 一方で、生成AIの業界は、まだエヌビディアのような半導体メーカーが最も売上や利益が大きい状況です。

 生成AIも今は半導体が儲かるピラミッド型の構造ですが、10年かけてだんだん上位レイヤーのアプリケーション側が儲かっていく逆ピラミッド型の構造になることが考えられます。今後の生成AIの業界を見るとき、下位レイヤーから上位レイヤーへと中心が移りながら業界規模が拡大していく歴史を念頭に置くことが必要なのです。

(写真:Роман Заворотный/stock.adobe.com)
(写真:Роман Заворотный/stock.adobe.com)
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日本の生成AIのビジネス実装は一見、諸外国に比べて立ち遅れているように見えるが、その実、ひとたび実装に向けてかじを切ることさえできれば、有利な状況はそろっている。AI革命以降に日本企業がたどるべき道を示した生成AIの「未来地図」となる一冊。

シバタナオキ・尾原和啓著/日経BP/2420円(税込み)
『アフターAI 世界の一流には見えている生成AIの未来地図』(日経BP)の刊行を記念したイベントが開催されます。2025年9月5日19時~ 六本木 蔦屋書店にて著者のシバタナオキさんが登壇、「アフターAI」時代に日本のビジネスパーソンの勝ち筋はどこにあるのかを語ります。オンライン参加も可能です。

■日時:2025年9月5日(金)19時(18時30分開場)~20時
■会場:六本木 蔦屋書店 2階SHARE LOUNGE内イベントスペース
※参加チケットの種類と料金などイベントの詳細とお申し込みはこちらから>>六本木 蔦屋書店『アフターAI』刊行記念イベント特設ページ