愛用者も多い「ふるさと納税」。ただ、批判や問題点が多いことも事実です。一般の生活者としてはどう考えるべきなのでしょうか。新刊『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』(菱田雅生・大口克人著、日経BP)から抜粋して紹介します。第3回は「ふるさと納税制度の利点と使い方」について、熟練金融記者の大口克人が解説します。

お得? 邪道? 魅力と課題を改めて

 ふるさと納税は2008年に始まった国の制度です。納税と言っても実態は任意の自治体への寄附で、利用者としての魅力は「自分が応援したい自治体に用途を指定して寄附でき、一定額までの範囲なら自己負担は2000円までで済み、返礼品ももらえる」ことです。

 極めてユニークな制度ですが、特に外国人には不思議に見えるようで、英国の経済誌から「一体どういう仕組みなの?」と取材を受けたこともありました。

(『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』169ページより)
(『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』169ページより)
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 また、株主優待投資に対する反応と同じく「物をもらうために寄附をするなんて邪道だ」と、ふるさと納税は使うべきではないとする人もいます。

 私(大口)自身は「問題点は確かにあるものの、国の制度としてある以上、使って悪いことはない。物価高の中、家計の助けにもなる制度なので積極的に使おう」という立場です。

 ふるさと納税がいけないとする人の論拠は主に「住んでいる自治体に納めるべき税収が他の自治体に流出するから」で、それが本来の住民サービス(道路を直す、橋を架けるなど)を低下させるという見方です。実際は税収が減った分の75%までは地方交付税によって補てんできるのですが、これはほとんど知られていないので、批判の的になるわけです(東京23区や川崎市などは地方交付税を受け取れない不交付団体なので、実際かなりの財源流出になっている)。

 また、1人当たりの寄附額に明確な上限がないため、高額納税者ほど有利な制度になっているのは事実で、そこは問題だと思います。総務省は「返礼品の上限は寄附額の3割までとし、地域の産品に限る」という点には熱心に取り組んでいますが、もう一歩踏み込んで「寄附は1人当たり100万円までとする」といった制限はできないものでしょうか。

 さらに、ふるさと納税が多く利用されるようになるとポータルサイト運営業者が潤うことになり、業者の取り分は結構多いので全額が地方活性化に回っているわけではない、という批判もあります。ふるさと納税の愛好者も、こうした指摘があることは知っておくべきでしょう。

生産者応援、現地体験、災害支援……選択肢は多岐に

 もちろんこの制度にはそうした指摘を上回るだけの長所があります。制度をうまく使って全国から寄附を集めた自治体は多く、その額もかなりの水準に達しています。総務省の「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)」という資料で22年度に寄附受入額の多かった自治体を見ると、1位の宮崎県都城市は195億9300万円、2位の北海道紋別市は194億3300万円、3位の北海道根室市は176億1300万円……と、驚くような額です。これによりその地域の子育てや教育、環境保全、福祉などのサービスは確実に向上したでしょうし、返礼品事業を通じて地場の名産品の宣伝ができ、中小業者の仕事も増えるなど地域活性化に大きく役立ったことも間違いありません。

 寄附する側のメリットはどうでしょうか。まず返礼品ですが、これは以前のように「高価な肉、蟹、高級フルーツ」といった贅沢品ばかりではなく、パンや米、トイレットペーパーに洗剤、文房具など、生活に直結した物が増えています。まさに家計の足しになるわけです。

 「天候不順の影響で見た目が悪くなった果物」など「訳あり品」的な返礼品も増えていて、生産者を応援するという意味では非常にいいことだと思います。また最近は好きな時に好きな物をもらえるポイント制度も一般化し、他にも家電製品や楽器、スポーツ用品などももらえるようになっている、「その地域に来ないと味わえない体験型」が増えているなど、楽しみが広がっています(私は主に家電製品をもらっていますが、ポータルサイトを眺めているだけでも半日過ごせます)。

 もう1つ素晴らしいなと思うのは、地震や水害、山林火災などの自然災害が起こった時、ポータルサイトではすぐにそれらに対する支援(寄附募集)のページが作られ、実際にかなりの額がスピーディーに集まっていることです。

 ふるさとチョイスで「令和6年能登半島地震」の寄附状況を見ると、24年7月17日時点ですでに20億1252万円もの寄附があったことが分かります。災害支援金なので返礼品は原則ありませんが、そんなことはかまわない、という人が非常に多いわけですね(もちろん寄附する側にとっては持ち出しが2000円までで済む長所も)。

 またふるさとチョイスは、自治体がふるさと納税の仕組みを使って行う「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」にも取り組んでいて、罪のない動物の殺処分をなくす、厳しい生活環境の子供たちをふるさと納税で応援する、など多くのプロジェクトが展開されています。ふるさと納税の仕組みが、世の中のある部分を確実に良くしているのです。

(『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』171ページより)
(『日経マネーと正直FPが教える 一生迷わないお金の選択』171ページより)
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確定申告、忘れていませんか?

 最後に、寄附する人が注意すべきことも書いておきましょう。まず、ふるさと納税を利用したら確定申告しないと「ただの寄附」になり、非常に高い肉や果物になってしまう点です。実際、寄附だけして確定申告しない人や「収入がなく税金で取り返せないのに寄附をする専業主婦」は結構いるのだそうです。

 また、15年には「ワンストップ特例制度」ができており、寄附する自治体が5つまでなら確定申告しなくても済むようになっていますが、医療費控除などで確定申告した場合は、ワンストップ特例で申告した分は無効になります。これは結構大きな落とし穴です。医療費控除で申告する人は多いでしょうから、多少面倒でも「ふるさと納税は基本、確定申告の際に他と併せて申告する」と覚えておいた方がいいでしょう。

(写真:starmix/stock.adobe.com)
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菱田雅生・大口克人著、日経BP、1870円(税込み)