テクノロジーがどのように世界を変えていくのか。新刊『 日経テクノロジー展望2027 世界を変える100の技術 』(日経BP)では、注目される100の技術を集め、その革新性やインパクト、将来性などを解説する。今回は100の技術のうち、ビジネスパーソンを対象とした調査で「2031年期待度」3位の「無人運転」を取り上げる。

人の監視が不要で、車両の制御を全面的にAIが担うE2E自動運転

AIを活用し、人の監視なしでクルマを制御する無人運転の実現へ向けた開発が本格化している。米テスラは無人運転向けに設計したロボタクシーの生産を始めた。もっとも、テスラも現状は無人だけでなく安全監視員が助手席に同乗する形でも運用しており、真の無人化にはAIを運転に活用する技術のさらなる成熟が欠かせない。

 車両の制御を全面的にAI(人工知能)が担うエンド・ツー・エンド(E2E)自動運転で、人の監視が要らない「レベル4」、いわば「無人運転」の実現が本格化しつつある。

 テスラは2026年2月、無人運転向けに設計したE2E搭載のロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」の試験生産を始めた。同社最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏は「車の中で眠り、目的地で目を覚ますことができる」と豪語する。

テスラのロボタクシー専用車「サイバーキャブ」。2人乗りの小型電気自動車(EV)である
テスラのロボタクシー専用車「サイバーキャブ」。2人乗りの小型電気自動車(EV)である
(写真提供:テスラ)
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 E2Eは車両周囲の認識や判断、制御を全てAIに任せる自動運転技術で、高精度地図を必要としないのが特徴だ。テスラはE2E搭載のロボタクシーを量産し、特定条件下で完全自動運転が可能なレベル4を様々な地域で展開することをもくろむ。同社は23年に人の監視がいる「レベル2」でE2Eを実用化した。そこから3年前後という速さでレベル4に引き上げる。

 テスラのE2Eは、センサーにカメラのみを使い認識処理から運転の判断や制御までを巨大な単一のAIモデルが担う。従来のロボタクシーはカメラに加えてミリ波レーダーや高価なLiDAR(レーザーライダー)を複数個搭載するのが主流だが、同社はカメラのみのセンサー構成にこだわりシステムの複雑さやコストを省く。

 サイバーキャブはステアリングホイールやアクセルペダルも搭載しない方針だ。無人運転車として最適化することでコストを下げ、3万ドル(約450万円)以下の価格を目指す。運用コストについても、マスク氏は「サイバーキャブでは1マイル(約1.6キロメートル)当たり30~40セント(45~60円)になる」と試算し、バスなどに比べて大幅に下げられると主張する。

 テスラは先進運転支援システム(ADAS)として展開する「FSD(フルセルフドライビング)」のソフトウエアを頻繁に更新し性能を高めてきた。23年にFSDの「バージョン12(V12)」を投入し、人がプログラムを組む「ルールベース」からE2Eに切り替えた。24年末に「V13」25年10月には「V14」を投入。13から14にかけてはAIモデルのパラメーター数を10倍に高め、技術的にはレベル4が視野に入る水準に近づきつつある。

ルールベースとE2Eの自動運転技術における構造の違い。E2Eは「Transformer(トランスフォーマー)」と呼ぶ生成AIに使われるアルゴリズムをベースとし、センサーの入力情報から直接将来の走行軌跡を出力する
ルールベースとE2Eの自動運転技術における構造の違い。E2Eは「Transformer(トランスフォーマー)」と呼ぶ生成AIに使われるアルゴリズムをベースとし、センサーの入力情報から直接将来の走行軌跡を出力する
(出所:日経クロステック)
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 25年6月にはロボタクシーを商用化した。米テキサス州オースティンに主力電気自動車(EV)「モデルY」をベースにしたロボタクシーを導入し、配車サービスを展開している。ただ当初は安全監視員が助手席に同乗する形で運用していた。規制当局の承認を経て無人運転に徐々に切り替え始めている。

 E2Eは高精度地図が不要であるため、ロボタクシーによる配車サービスの展開地域を広げやすいとされる。マスク氏は「26年末までに米国の12前後の州でロボタクシーや無人運転車を展開したい」と主張し、米国内での運行拡大を目指す。

 ルールベースのロボタクシーでは、米グーグルの自動運転部門から独立した米ウェイモが20年に商用化し先行した。ただルールベースは高精度地図が必要で、展開地域の拡大の速さでE2Eに比べ不利とされる。同社の配車サービスの展開地域は、20年から約5年間で米国の5都市にとどまっていた。

ウェイモの次世代ロボタクシー中国・浙江吉利控股集団(吉利グループ)のミニバンEVをベースとする
ウェイモの次世代ロボタクシー中国・浙江吉利控股集団(吉利グループ)のミニバンEVをベースとする
(写真提供:ウェイモ)
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 今後ロボタクシーはルールベースからE2Eへの置き換えが進みそうだ。ウェイモも出遅れが指摘されるE2Eで挽回を図るべく、24年後半ごろからグーグルの大規模言語モデル(LLM)「Gemini」を活用したE2Eの開発に乗り出し始めた。配車サービスの導入地域も26年中に新たに20都市以上増やす計画で、初の海外展開となる英ロンドンも含まれる。

 LLMを使ったE2Eでは中国勢が先行する。テスラを猛追しLLMベースのE2Eでレベル4を目指すのが中国新興の小鵬汽車(シャオペン)だ。同社は25年にLLMを基にした「VLA(ビジョン・ランゲージ・アクション)」と呼ぶAIモデルを使うADASを実用化した。VLAは画像と言語、運転行動を統合的に扱うAIモデルで、テスラなどが採用する画像ベースのE2Eの進化版と位置づけられる。シャオペンは26年にVLAモデルを搭載した3車種のロボタクシーを投入するとし、中国初のロボタクシーを量産する完成車メーカーになるとぶち上げた。

(書籍『日経テクノロジー展望2027 世界を変える100の技術』を基に再構成)

5年後の2031年に向けてビジネスパーソンが知っておくべきテクノロジーとは? 日経の専門誌編集長とラボ所長が「AI」「エレクトロニクス・モビリティー」「環境・エネルギー」「IT・通信」「建築・土木・素材」「ライフスタイル・ワークスタイル」「メディカル」の7分野から「世界を変える技術」100件を厳選、専門記者や研究員が分かりやすく解説します。

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