知っておきたい今井むつみさんの認知科学の広くて深い世界を、体系的に学べるように、えりすぐってお届けしていきます。今週は、今井むつみさんが監修・解説を務める『 きょう、ゴリラをうえたよ 愉快で深いこどものいいまちがい集 』(水野太貴・文、今井むつみ・監修・解説、KADOKAWA)からの抜粋です。2回目は、今井むつみさんが驚嘆した「こどものいいまちがい」3選です。
「アブダクション推論」をするからこそ、こどもはまちがえる
『かいいち』なのかな」
(3歳ごろ)
小さいころ、お風呂で親と数を数えていた経験はありませんか。子どもにとって、数とは抽象的で難しい概念です。よくわからないんだけど、とりあえず復唱する。こうして数を覚えた人は少なくないはず。
こうして、この子は「いち=もっとも小さい」「じゅう=すごく大きい」という理解をしたのでしょう。そして「かいじゅう」もどれもすごく大きい。であれば小さいものは「かいいち」ではないか。改めて見ると、スキのない推論です。
同音異義語をこどもはどう理解しているのか
つぎは“さんしょく”でかくんだー」
(3〜4歳)
1色ずつ足していくなんて不思議なアプローチだな。そう思って姪(めい)っ子ちゃんに「もっとたくさん色を使ったら?」と言うと、「だって、さんしょくしかないんだよ!」となんだか噛(か)み合わない……。
詳しく聞くと、「この絵には“にくしょく”と“そうしょく”を描いたの。でも動物には“ざっしょく”もいるんでしょ? 次はざっしょくも描くの。だから“さんしょく”なんだよ」と説明してくれました。つまり、「色」ではなく「食」を数えていたのです!
肉食・草食・雑食ということばを聞いて、これらを助数詞で数えようとするのは、実はとっても高度で、動物にはまずできない推論です。
まちがえ方を見れば、言葉の学び方がわかる
きょうは“てんねんきねんび”だね!」
(5歳)
テレビで「天然記念物」ということばを知り、「どうやら木とか草花みたいな自然物を指すみたいだ」と考えた彼。親戚と一緒に旅行した際に多用し、「難しいことばを知ってるね」と褒められてニンマリ。その帰り、新幹線の降り際にこのひとことが飛び出すと、一同は大笑いののちにほっこりしたようです。 「天然記念物」の意味を推測する利口さもさることながら、「〜記念日」という既存のことばと結び付けて新語を生み出すその創造性には舌を巻くほかありません。


