しつこい肩こり、繰り返される腰痛……。そんな全身の不調の原因が、実は「首」にあるかもしれません。長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎで首に負担がかかり、それが肩こりや頭痛、腰痛、疲労感などの症状を引き起こしているのです。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが、「首の骨=頸椎(けいつい)」をケアすることで不調を一掃するメソッドを解説した『 すごい頸椎 首・肩・腰を一気によくする 』から一部を抜粋・再編集してお届けします。今回は、精神的なプレッシャーが原因で起きる首や肩のこりへの対処法です。
アスリートも肩こりで悩んでいる
前回(参照:ストレートネックを治そうとしても「骨盤の位置」が悪いとうまくいかない)、頸椎(首の骨)の自然なカーブが失われ、まっすぐな状態になる「ストレートネック」や「スマホ首」を解消しようとしても、骨盤が後ろに傾いた姿勢をとっていると難しいという話をしました。
私はフィジカルトレーナーとして、アスリートや一般の方の体を見ていますが、肩や首のこりに関してはどちらも同じ傾向があると感じています。
オリンピックに出場するような選手たちは、日々過酷なトレーニングを積み、強靭な筋力としなやかな柔軟性を兼ね備えています。そんな彼ら彼女らであっても、大事な試合や大会が近づくと、トレーナーに対して「首と肩がこって仕方がない。少しほぐしてもらえませんか?」とリクエストすることが多くなります。
大きな大会が近づくと、選手たちは試合を再優先に考えた環境に移行します。メディアの取材は制限され、自分の体に向き合える時間が長くなります。私たちトレーナーとのセッションも増え、調整のフェーズに入ります。
セッションに入る際はいつも、「今日は何をしたい?」と選手に聞きます。普段なら「動き出しをスムーズにしたい」とか「お尻の筋肉の出力を上げたい」といった競技のパフォーマンスに直結するオーダーが返ってきます。ところが大会が近づくにつれ、どの競技種目でもほとんどの選手が、首と肩のケアを求めるようになるのです。
首や肩のこりは、血行不良や筋力不足が主な原因です。しかし、十分な筋力を持ち、血行には問題ないはずの選手であっても、試合前になるとガチガチにこり固まってしまいます。試合前は練習量を落とし、コンディションを整える時期です。そのため肉体的な疲労もむしろ抜けています。それなのに、なぜ首や肩のこりを訴えるのでしょうか?
その答えは、肉体ではなく「心」にあります。
実は、全身の筋肉の中で、精神的なプレッシャーやストレスの影響をダイレクトに受けて硬くなるのが、首から肩にかけて広がる大きな筋肉である僧帽筋の上部です。

僧帽筋は上部・中部・下部と分かれていますが、そのうちの上部は自律神経の緊張を敏感に察知し、防衛反応として硬直する性質を持っています。背負っている期待、「勝ちたい」という強い執着、あるいは「失敗したらどうしよう」という恐怖。これらが交感神経を通じて、僧帽筋上部をガチガチに硬くしてしまうのです。
動的ストレッチで首と肩をほぐそう
この「ストレス肩こり」は、ビジネスパーソンのみなさんにも当てはまります。大事なプレゼンの前や、売上達成のプレッシャーなどで、首や肩のこりに悩んでいる人は多いでしょう。
また、プレッシャーが強くなると、頭が前に出る姿勢をとりやすくなります。私が指導する青山学院大学駅伝部の選手たちも、シーズンの佳境に入り緊張が高まると、ランニング中であっても頭が前に落ちることがあります。メンタルが落ちている人の背筋がピンと伸びていることもあまりないですよね。心が先か、姿勢が先かはわかりませんが、心と姿勢はつながっているのです。
首や肩がこっているときは、肩甲骨周りの動的ストレッチを行うと、症状がよくなることが多い。筋肉がほぐれ、血行がよくなり、老廃物も流れてこりがやわらぎます。
仕事中でもこうした動的ストレッチを行って体をリフレッシュすれば、精神的なストレスも少し軽減されるかもしれません。ここでは、オフィスで椅子に座った状態でもできる動的ストレッチを紹介しておきます。

精神的なストレスが原因の肩こりだけでなく、長時間同じ姿勢をとり続けたことによる肩こりで悩んでいる人は、こうした動的ストレッチを習慣的に行うと、症状を軽くできるでしょう。ぜひ試してみてください。

[日経ビジネス電子版 2026年9月28日付の記事を転載]
中野ジェームズ修一(著)/日経BP/1870円(税込み)
