「やっておくと後で役立つから」「君のためになる仕事だから」――。そんなことを言われたことはないだろうか。しかし、上司が『本当に』その仕事があなたの今後に役立つかどうか知っているはずがない。先のことは誰も分からないのだ。ただ、ある程度それを判断する基準はある。書籍『嫌な仕事のうまい断り方』(山本大平著/日経BP)から抜粋、再構成してお届けする。

「君のためになる仕事」は本当か

 なぜその仕事をしなければならないのか、やる意義が見えない。
 あなたはその仕事の意義を知りたいのに、それを説明するかわりに、こんなことを言う上司もいるかもしれません。

 「やっておくと後で役立つから」「君のためになる仕事だから」

 上司にそう言われると「そうなのかな」と思ってしまうかもしれません。

 しかし、上司が『本当に』その仕事があなたの今後に役立つかどうか、あなたのためになるのかどうかを知っているはずがありません。
 何があなたの役に立つことになるかは、あなた自身を含め、誰も知らないからです。

 それなのに後で役立つとか君のためになるとかいう説明は、はっきり言って詭弁(きべん)です。その場しのぎです。

 ですから、本当に役に立つ可能性があるのか、自分のためになるのかどうかは、自分で考えて自分で決めるべきです。

自分のためになるかどうかは、自分で考えて自分で決めるべき(写真:metamorworks/stock.adobe.com)
自分のためになるかどうかは、自分で考えて自分で決めるべき(写真:metamorworks/stock.adobe.com)
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 先のことは誰にも分からないというのが前提ですが、それでも、ある程度はそれが本当に役立つかどうかを判断する基準はあります。
 それは、技術の動向です。

 技術の動向とは、例えばこういったことです。
 上司から振られた仕事が「日本刀を作る」だったら、どうしますか。
 面白そうな仕事ではあります。ものづくりが好きな人なら、飛びつくかもしれません。日本刀を作りながら給与をもらえるなんて最高だと思うかもしれません。

 しかし、そこで身に付けた日本刀を作るというスキルは、今後のあなたの仕事のためになるでしょうか。

 そうしたユニークな経験が話の種になる、面白い人だと思ってもらえるといったメリットはあるでしょう。ただ、これから日本刀の市場が拡大しそうなので、やっておいたほうがいいと考える人はいないでしょう。

AIに奪われない仕事とは

 日本刀は極端な例にしても、ほかにも、これからは人間には求められなくなっていくスキルはいくつもあります。

 ここ何年かを振り返っても、AI(人工知能)によって奪われる仕事についての話題は事欠きません。普通に生活していても、例えば、コールセンターのオペレーターの需要がこれから劇的に高まることは想像できないはずです。

 そうしたときに、電話オペレーターとしてのスペシャリストを目指すのは、技術動向を見誤っていると言わざるを得ません。

 また、いまは仕事があるかもしれませんが、特定のデジタルプラットフォームやシステムのスペシャリストになるのもおすすめできません。スペシャリストになる前に、そのデジタルプラットフォームやシステムが、新しいものに取って代わられている可能性が高いからです。

 AIが人間の仕事を奪っていくのは確実です。そうであるならば、AIによって奪われそうな仕事より、【AIにされたら嫌な仕事】に着目すべきです。AIにされたら嫌な仕事は、人間の仕事として間違いなく残るからです。

AIによって奪われそうな仕事より、【AIにされたら嫌な仕事】に着目すべき(写真:alphaspirit/stock.adobe.com)
AIによって奪われそうな仕事より、【AIにされたら嫌な仕事】に着目すべき(写真:alphaspirit/stock.adobe.com)
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 話を元に戻すと、上司が、日本刀や電話オペレーターのような仕事を「君のためになるから」と言わないとも限りません。本当に自分のためになるか、というよりは、取り組むことが徒労に終わらないかを判断するのは、あなた自身です。

その仕事、やる意味あるのかな? 嫌なものは嫌。断っていいんです。辛い職場を脱出するテクニックから自分主体の人生を生きるためのキャリア構築まで、戦略コンサルタントが語ります。

山本大平著/日経BP/1650円(税込み)