前田智大さんは灘中・高校からマサチューセッツ工科大学(MIT)に進学し、オンライン学習サービス「スコラボ」と「ちゃんプロ」を運営する株式会社Minedを起業しました。前田さんが中学受験と中学・高校で得たもの、また、起業した理由や中学受験にのぞむ親子へのアドバイスを聞きました。日経ムック『中学受験を考えたらまず読む本 2025年版』から抜粋・再構成。
株式会社Mined CEO
何事にも全力だった灘での6年間
私が塾に通い始めたのが小学4年生の夏。それまでは中学受験の存在も知りませんでした。試しに夏期講習を受けてみたところ、塾の勉強のおもしろさにハマってしまったんです。当初は偏差値も高くなかったので、狙える学校をめざして勉強していたのですが、小5で相性のいい先生に出会ったことで算数が得意科目になり、成績も徐々に伸びていきました。そこで、背伸びをする形で私自身が志望するようになったのが、灘です。自分としては、受かる確率は30%くらいの覚悟で挑んだため、合格を知ったときは非常にうれしかったですね。
灘で印象に残っているのは、授業そのものというよりも、その合間の先生方の雑談です(笑)。私は、高校2年生のときに国際生物学オリンピックに出場したのですが、生物が好きになるきっかけになったのも、生物の先生の授業中の雑談でした。先生の話のおもしろさを入り口に生物に興味をもち、生物学関連の本を読みあさるようになりました。
学校行事も大好きで、体育祭で応援団を率いたり、演劇の監督を務めたり、文化祭でブレイクダンスを踊ったりと、何かしらリーダーシップを発揮するポジションについていましたね。
海外大学進学から起業へ
MITへの進学を選んだのは、海外の大学へ進学したOBの方から、「前田なら海外に行けるよ!」と声をかけていただいたことがきっかけです。高3での国際生物学オリンピックへの出場がルール変更でかなわず、同時期に受けた模試で東京大学理科二類の合格点が取れてしまったため、その1年間にエネルギーを注ぎ込む対象を模索していた時期でした。何の根拠もない言葉だったと思うのですが、エネルギーが余っていた私は、「行きます!」と宣言していました(笑)。
昔から、チャレンジングな状況にこそ燃える性格で、起業家になることを選んだのも同じ理由です。中でも教育分野での起業を選んだ理由は、日本とアメリカの教育環境に身を置いたとき、「両者の学生の成果に差があるのは、学びに対する意欲の差」だと感じたからです。それは、決して日本の学生がアメリカの学生より劣っているという意味ではありません。アメリカの学生は、好きなことを自分で選んでいるからこそ学びに対する意欲が高く、それが成果につながっているということです。
そのため、事業の根底には、子どもたちが好きなこと、夢中になれる学習に全力投球できる教育システムを作りたいという思いがあります。現在は、子どもの好奇心を引き出すオンライン・ライブ授業「スコラボ」と、スコラボで特に人気だった授業を独立させた「ちゃんと身につくプログラミング」略して「ちゃんプロ」の、主に2つの事業を展開しています。
中学受験で培われる「自分の頭で考える力」
今、中学受験を考えているお子さんが就職するときには9割の確率で、人間よりもAI(人工知能)が賢い未来が待っています。そのとき人間に求められるのは、AIを使いこなすこと。そこで欠かせないのが「自分の頭で考える力」です。私はこの力を、中学受験と灘での6年間で身につけました。
例えば、中学受験の算数トップ層には、「模範解答ではなく、別解で答えることがかっこいい」という謎の流行がありました(笑)。自分なりの解き方を見つけるためには、何度も試行錯誤をして、失敗も経験する必要があります。大人から見れば非効率かもしれませんが、私にとっては、このプロセスこそがのちの宝になっています。
受験本番はある意味、模試のようなもの。うまくいってもその先の成功が約束されているわけではありませんし、失敗しても人生が終わるわけではありません。大人が過度に介入して学力がついたとしても、試験前の詰め込みと同じで、そこに持続可能性はないのです。そのため、志望校選びは本人の意思を尊重するなど、お子さんが自分で決める余地を残してほしいです。中学受験を、自分の頭で考える力を養う機会にしてみてください。
取材・文/浅海里奈 写真/八藤まなみ
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