兵庫県芦屋市長の髙島崚輔(りょうすけ)さんは灘中・高校からハーバード大学に進学し、卒業後の2023年、芦屋市長選挙に当時最年少の26歳で当選しました。髙島さんに、中学受験や中学・高校時代の経験、そこで培われたまちづくりへの思いを聞きました。日経ムック『 中学受験を考えたらまず読む本 2025年版 』から抜粋・再構成。

芦屋市長の髙島崚輔さん
芦屋市長の髙島崚輔さん
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髙島崚輔(たかしま・りょうすけ)
兵庫県芦屋市長
1997年、大阪府生まれ。灘中学校・高等学校を卒業後、2015年に東京大学とハーバード大学に合格。ハーバード大在学中は学生の海外留学を支援するNPO活動や芦屋市でのインターンシップにも取り組んだ。2022年に大学を卒業し、翌年4月には兵庫県芦屋市長選に当選、全国最年少の市長(当時)となる。現在は「対話を中心としたまちづくり」や「公立小中学校の学びの質向上」の実現に向けてまい進中。

家族会議で自分のやりたいことが明確に

 芦屋市(兵庫県)では現在、「ちょうどの学び」というスローガンを掲げ、公立学校で子ども一人ひとりの個性や特性、興味関心、理解度に応じた学びの環境整備に力を入れています。というのも、人は皆それぞれ異なるもの。にもかかわらず全員が同じように学んでいるのは、結局、誰にも合っていない学びをしているのと同じではないかと考えたからです。

 では、私自身、公立の学校に不満があったから中学受験をしたのかというと、そんなことはありません。むしろとても楽しい時間を過ごしていました。そのため、小学4年生のときに友人が中学受験をすると聞いて、そんな選択肢もあるのかと興味を持ち、両親に中学受験をしたいと伝えたところ「急にどうした?」と驚かれました。

 髙島家では、家族に何か重大ごとが起こると家族会議が開かれます。このときは、両親から「なぜ中学受験をしたいのか」「灘に入って何がしたいのか」といった質問をされて、それに一つひとつ答えていきました。賛成や反対は一切なく、ただ私の考えを引き出してくれる感じで、今振り返ると、このやりとりがあったからこそ、私は自分がこの先やっていきたいことをはっきり認識できたのだと思います。

 両親とは、持病である喘息(ぜんそく)の発作が一度でも出たら受験を諦めることと、必ず塾より学校を優先することを約束しただけで、ほかに受験に関して干渉されることはありませんでした。こうした経験は、私が力を入れて取り組んでいる「対話を中心としたまちづくり」の原点にもなっていると思っています。

「自分で考えて決めたことは、どんなことがあっても楽しめます」
「自分で考えて決めたことは、どんなことがあっても楽しめます」
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理由がなければ中学受験をしない選択も

 灘を選んだ理由は、広い図書館がとても魅力的だったから。改築前だったので今の図書館とは違うのですが、ここで新しいことをたくさん学びたいと思いました。特に印象に残っているのは中高通して取り組んだ生徒会の活動です。被災地を訪れたり、小学校に出向いて出前授業をしたりするなかで、出合ったのが芦屋市でした。ロゲイニングというナビゲーションスポーツの大会を実施した際、開催地選びで困っているところを芦屋市民に助けていただきました。

 高3では、特別授業でサマーカーニバルに屋台を出店しました。その年はカーニバルの日程が予備校の東大模試と同じにもかかわらず多くの生徒がカーニバルに参加したため、ちょっとした騒動になったのです。そのときも先生たちは「保護者が何と言おうとお前たちの考えを尊重するぞ」と言ってくれて、生徒を大人扱いしてくれるところがうれしかったです。

 誤解を恐れずに言うと、灘という学校は人を選ぶと思います。「一番だから」というだけの理由でめざすのは考え直した方がよいかもしれません。生徒自治が尊重される校風を、放任だと感じる人もいるでしょう。特に親主導で中学受験をした生徒にはなじめないことも多かったはず。そのような生徒たちは、中1から大学受験のための塾に通い始めます。それで東大に合格できるのならいいじゃないかという人もいますが、私は「それなら何のために灘に入学したの?」と疑問に思っていました。

 いくら学力が高くても、自分で決めて行動することができなければ人は行き詰まることがあります。これは今の芦屋市が抱える教育課題にも通じるものです。

毎年9月下旬に開催される灘校の体育祭は、相撲や応援団による演舞、クラブ対抗リレーなどが人気。生徒会長を務めた髙島さんは、入場時に校旗を掲げて行進した
毎年9月下旬に開催される灘校の体育祭は、相撲や応援団による演舞、クラブ対抗リレーなどが人気。生徒会長を務めた髙島さんは、入場時に校旗を掲げて行進した
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中学受験の経験をもとに良いまちづくりを

 とはいえ私も、自分で決めて行動することが何より大切だと気づかされたのは、中学受験の際、自分で目標を設定し、自分の力でそれをやり遂げたという成功体験があったからです。結局、2年間は喘息の発作も出ず、大きな自信になりました。

 高校を出たら、帰国子女でもないのにハーバード大学へ行き、入学したら今度は現実世界とのつながりが感じられないと3度も休学して世界中を飛んで回り、卒業後は26歳でいきなり出身地でもない芦屋市の市長選に出馬する。そんな私の好奇心や行動力に驚かれる人もいるようですが、それも自分としては特別なことをしているつもりはなく、そのときにやりたいと思ったこと、おもしろそうだと思ったことをやってきただけにすぎません。

 失敗もありますが、自分で決めて行動したのであれば、どんなことでも頑張れるし、楽しめる。その思いを胸に、「市民との対話」と「教育」をテーマとした市政を推進し、世界に誇れる芦屋を築いていきたいです。

取材・文/石川遍 写真/町田安恵(体育祭の写真は髙島さん提供)

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