入るべき生命保険と、解約したほうがいい生命保険。この2つは、案外、簡単に見分けられます。新刊『 この保険、解約してもいいですか? 』著者の後田亨氏が、〇×形式で要点をご紹介します。初回のテーマは「掛け捨ての保険」と「貯蓄性のある保険」のどちらがいいか、です。

 筆者は、1995年から今日まで、生命保険に関する悩みを抱える人たちと接してきた。最初は大手生保の販売員として、次に乗り合い代理店(*)の販売員として、そして現在は著述業と並行して有料の保険相談を受ける自営業者と、業態を変えながら。

 近年、痛感しているのは、専門知識はなくても、生命保険を正しく利用することは難しくない、ということだ。

 読者の皆様も、試しに、以下の○×問題を解いてみてほしい。大人の常識で少し考えると全問正解も可能だろう。そして、生命保険の活用法における「正解」もおのずと見えてくるはずだ。

【問題】 以下の記述について、それぞれ適切(○)か、適切でない(×)かを、答えよ。

(1)生命保険の利用は「最小限」が望ましい。
(2)保険に入るなら「掛け捨て」は避けたい。
(3)販売員から終身保険を薦められた。販売員によると、「死亡保障に加え、貯蓄性もあり、保険料が掛け捨てにならない」という。仕組みがよく分からないので、加入しないでおく。

 次のページに、【解答・解説】を用意した。

*乗り合い代理店:複数の保険会社の商品を販売する保険代理店

【解答・解説】

(1)生命保険の利用は「最小限」が望ましい。 → ○

 加入者が支払う「保険料の使い道」を想像したら簡単だろう。

 保険会社は、加入者から集めた保険料で経費を賄う。さらに、不測の事態に遭遇した人たちやその家族などに各種給付金を支払った後、利益が残らなければ、保険会社は破綻してしまう。

 したがって、加入者全体で見ると、保険会社が保険料の設定を間違わない限り、「負担>受給」(支払った保険料の総額>受け取る各種給付金の総額)となる。つまり、あらかじめマイナス収支が約束された仕組みである。だから、「安心のために」と医療・死亡・介護など幅広く、長期にわたり利用するほど、家計が傷みやすくなる。

 そうであれば、限定的に利用するのが正解だ。具体的には「保険でしか用意できない大金が必要になる事態」にのみ、利用するのが望ましい。

他の金融商品にない、保険の「利点」は何か?

(2)保険に入るなら「掛け捨て」は避けたい。 → ×

 掛け捨ての保険を損だと感じる、という声をよく聞く。

 例えば、あるネット生保で30歳の男性が「死亡保険」に加入し、契約成立直後に交通事故で死亡した。遺族には1000万円の死亡保険金が支払われたが、その時点で払った保険料は1000円だった。

 これは現実にあり得ることだが、なぜ、そんなことが可能になるのか? 無事に過ごしている人たちが払った保険料が、この男性の死亡保険金の支払いに使われ、そのお金は払い戻しされないからだ。

 このように、無事に過ごしている人たちに保険料が払い戻しされないことを、俗に「掛け捨て」と呼ぶ。いつ、誰が、使い始めた言葉なのかは分からないが、人は損をするのが嫌いなので、広く定着したのだろう。

 ともあれ、無事に過ごしている人たちからすると「掛け捨てになった」と感じられるお金が、保険にしかない利点を支えているわけだ。1000円しか払っていなくても、不測の事態が起きたときに1000万円を受け取れるという利点は、他の金融商品にはない保険の特徴だ。掛け捨ては損ではなく、「掛け捨てだから保険に入る意味がある」と理解したい。

「裏がありそう」と思うのが、常識的では?

(3)販売員から終身保険を薦められた。販売員によると、「死亡保障に加え、貯蓄性もあり、保険料が掛け捨てにならない」という。仕組みがよく分からないので、加入しないでおく。 → ○

 このような勧誘に対して、一般の人が「大人の常識」で考えて出す結論とは、次のようなところではないか?

 「加入者が損をしないように見えるが、保険会社が損をするとも思えない。どんな仕組みなのか分からない。何か裏があるかもしれないので、加入しないでおく。」

  そして、このような常識的な判断は正しい。

 「掛け捨てではありません」と案内される保険に、終身保険がある。その仕組みについては『投資の大原則』(バートン・マルキール、チャールズ・エリス著、鹿毛 雄二 訳、鹿毛 房子 訳/日本経済新聞出版)という本にある一文が分かりやすい。

(写真:DESIGN ARTS/stock.adobe.com)
(写真:DESIGN ARTS/stock.adobe.com)

コストが高い投資プログラムが付け加えられている

 「終身保険はあなたが必要とする生命保険機能に、コストが高い投資プログラムが付け加えられている」

 終身保険と同じ仕組みの「養老保険」にも、そのまま通用する説明だ。

 販売員が「資産形成にも役に立ちます」と、終身保険や養老保険を顧客に薦めるのは、保険会社の営業部門で「高額な販売手数料は資産形成を妨げる要因になる」と教育されていないからなのだ。販売員には多くの場合、悪気はない。

 これらの保険の仕組みは、常識で考えても分からないと思うので、別稿で詳述するが、一般の人でも、次のように考えて、利用を控えることはできるはずだ。

 例えば、「死亡保障にかかる費用が発生する分、貯蓄性は下がるはずだ」と想像するのは難しくないだろう。「貯蓄なら、保険以外にも方法がある。なぜ、保障とセットなのだ?」と立ち止まってみるのもいい。その結果、「保険にしかできないのは保障だ。貯蓄とセットでなくても構わない」と判断できたら上出来だと思う。

 次回は、加入者数の多い医療保険と、広く関心の高い「がん保険」を対象に、入るべき保険と、入るべきではない保険を見分けるための、本質的な考え方をお伝えしたい。

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2023年10月18日付の記事を転載]

その保険、あなたに本当に必要ですか? ── 老後に保険は要りません。保険に入りすぎている「五十嵐夫婦」の素朴な疑問に、保険商品の仕組みから業界の裏事情まで知る著者が、とことんやさしく答えていきます。経済評論家・山崎元氏、推薦。

後田 亨(著)、日経BP、1760円(税込み)