メディア出演や、クリエイティブ制作で大活躍の謎解きクリエイター・松丸亮吾さん。松丸さんは小学生の頃から東京大学をめざし、その目標達成のために自ら中学受験に挑みました。そこから学んだ経験、受験への向き合い方、独自の勉強法に加えて、麻布中学校・高等学校の6年間で培われたもの、そして、これから中学受験に臨む皆さんへのエールを2回にわたってお伝えします。今回は前編。日経ムック『中学受験を考えたらまず読む本 2024年版』から抜粋・再構成。
日常生活で見つけたきっかけ
小学4年生当時、フジテレビ系列で放送していた「脳内エステIQサプリ」というテレビ番組が、僕が謎解きをつくり始めたきっかけのひとつです。その番組では、“知識”ではなく、“ひらめき”で解く問題が出題されていて、自分で考えて答えがわかる瞬間がすごく楽しかったんです。
僕は男4人兄弟の四男。上3人の兄たちに勝てることがなかなかなくて、何か兄たちに勝てるものを探していました。そんなある日、「IQサプリ」を見ていたら、兄弟のなかで僕が最初に問題が解けたんです。しかも、その問題の難易度はIQ120の東大生レベル。今になって思えば、あれは番組の演出なんですけど、小学4年生当時の僕は「これが解けたから東大に入れる。僕は東大に行くぞ!」と考えたんですね。いちばん上の兄が東大をめざしていたこともあって、僕だって負けてないと思ったんです。
東大入学という目標があっての中学受験だったので、受験勉強を始めた当初は、明確な志望校はありませんでした。ただ、僕はゲームをやり込んでランキングの上位に入るのが好きだったので、中学受験もやるからにはランクが上のところをめざそうと思って、志望校選びでも偏差値表の上位にある学校に興味をもちました。
開成や筑波大学付属駒場……候補の学校を見比べて、麻布が志望校になった決め手は、文化祭でした。麻布は髪の毛が黒い生徒がほとんどいないほど自由な校風で、文化祭の運営も生徒主導。「俺たちがおもしろいものをつくるんだ」という意気込みを強く感じて、この学校に通ったら、勉強だけでなく自分の個性ややりたいこと、好きなことを見つけられそうだなと思えました。麻布生の姿がすごくきらきらして見えたんです。
両親は「レベルが高いし、ここが志望校で大丈夫?」と心配していましたが、すごくうまく、僕の中学受験に向き合ってくれていたなと感謝しています。
×が○になる瞬間こそが勉強
受験勉強を始めると、前回80点だったテストが今回は70点だったというときに、「10点下がった……」と点数や順位に反応する人もいると思います。でも実際は、その科目の勉強ができなくなったわけじゃなく、80点のテストの範囲より、70点のテストの範囲が苦手だっただけだと思うんです。
一生懸命勉強をして、いい結果が出て褒められる。それがいちばんいいとは思います。でも、時間をかけて勉強しても結果が伴わないときはありますよね。それで怒られると、子どもは勉強した努力までが無駄だったように感じてしまう。そんな状態でがんばり続けるのは、小学生にとってすごく大変なことです。
僕の両親が一貫していたのは、テストで×が多くても、×が嫌になる声かけや、モチベーションを下げる指摘をしなかったことです。「この×でわかっていないところがはっきりしたね」「勉強は、いい点を取ることでも、いい順位を取ることでもない。わからなかったことがわかるようになる、×が○に変わる瞬間が勉強なんだよ」とよく言っていました。
テストの結果が悪くても、「勉強しなかったら0点だったけど、勉強したからこれだけ点が取れた」「正解率2%の難しい問題が解けてる、すごいね」と、点数分の成長や褒めるポイントを探してくれました。なので、テストの点数が悪くても落ち込むことはなかったです。
怒られるのは勉強をやらなかったり、やるべきことをやらなかったりしたときくらい。どうすれば順位が上がるか、点数が取れるかを考えるのは、兄たちに勝つためにゲームの攻略法を研究していたのと感覚が近く、受験勉強は楽しかったです。
自分の性格に合った勉強法を親子で実践
僕は負けず嫌いで、ちょっと反抗的でした。算数が得意だったんですが、だからこそ計算ドリルとかを1問目から全部解くのが嫌でした。「わかっているのに、なんでやらなきゃいけないんだ」と思ってしまって。
両親は、僕に合う勉強法をいろいろ模索してくれていました。そんな両親がつくってくれたのが、テストや参考書で、僕が間違えた問題すべてをコピーしてまとめたノートでした。「ここにある問題が1問でも解ければ、成長したってことだからね」と渡されたんです。僕は「じゃあ、1問でも解いてやろう!」と取り組んでいました。すると、案外すんなり解ける問題もあったりして、僕自身も自分の成長を実感できる。「×の問題全部に○がつくまでがんばろう」と思いましたね。このノートは受験終盤までつくり続けてくれましたが、両親はモチベーションづくりがうまかったなと思います。
学校では×が悪者にされがちですが、全部○がつく問題を解くより、×をたくさん探して勉強したほうが、学びがあるんです。僕は、中学受験のおかげで、何かに挑戦するときの攻略がうまくなった感覚があって、これは今の仕事にも通じています。
テストは、自分の勉強へのフィードバック。謎解きイベントなどで来場者に書いてもらうアンケートも、それに近いんです。満足している部分もあれば、不満な部分、つまり、×もある。テストと同じように、商品やサービスもよりよくするために、×は絶対に見なきゃいけない。×が嫌な人は、人から意見をもらうと、自分自身が責められている気がするんだと思うんですけど、×が怖くなければ、どんなフィードバックもひとつの意見として受け止められるようになります。
取材・文/増田友梨(カラビナ) 写真/大木慎太郎(fort)
『 中学受験を考えたらまず読む本 2024年版 』
初歩的な部分から一通り必要な知識を丸ごと1冊で解説する入門書。Q&A方式で「そもそも」の疑問に答えるほか、首都圏・関西圏・中京圏の中学校の偏差値一覧、教育内容に特徴がある中学校の紹介、親子の合格体験記、中学受験に備えるマネープランなど、多角的に解説します。
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