現在、大活躍の謎解きクリエイター・松丸亮吾さん。前編では、中学受験に至った経緯や「×が○に変わる瞬間こそが勉強」という考え方などを聞きました。後編は、麻布中学校・高等学校の6年間で培われたもの、東大合格へと導いた目標の立て方や独自の勉強法、さらに、保護者はどのように子どもと向き合うべきかを松丸さんの経験を通してお伝えします。日経ムック『中学受験を考えたらまず読む本 2024年版』から抜粋・再構成。

前編「 松丸亮吾『テストで×になることに価値』麻布中合格の秘訣

苦手な科目は逆行しない目標で攻略

 僕は社会が苦手だったのですが、その理由は年号などを機械的に暗記するのが嫌いだったから。でも、麻布の入試は歴史に関する文章を読んで答える記述式問題だったので、国語力で解くことができました。なので、中学受験では、理科の暗記は努力しましたが、社会は特別な対策をせずに済みましたね。

 東大合格をめざして取り組んだ大学受験では、模造紙に苦手科目の単元を全部書き出し、表にして壁に貼っていました。その表のうち、できるものは赤の蛍光ペンで塗りつぶしていくんです。苦手は、大きく見えれば見えるほどキツい。それを細かく分けて、小さく見えたときに「できるかも」と思えるんですよね。

 例えば、数学が苦手でも、足し算はできるじゃないですか。苦手な部分ができるようになったら、表のマスを塗る。色つきのマスが増えていくのは陣取りゲームみたいで楽しいし、一度できるようになれば、まったくできなくなることもない。できることを増やしていくのは、逆行しない目標になるんです。

「テストの順位で100位以内に入る」という目標は、たくさん勉強をしても、達成できなかったら失敗になってしまう。それより、単元の表を塗りつぶすように、「100ページ勉強する」「100時間勉強する」のような、逆行しない目標を立てることが大切だと思います
「テストの順位で100位以内に入る」という目標は、たくさん勉強をしても、達成できなかったら失敗になってしまう。それより、単元の表を塗りつぶすように、「100ページ勉強する」「100時間勉強する」のような、逆行しない目標を立てることが大切だと思います
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受験の先にある環境が自分を高める

 中学受験をして入った学校には、成績が近しい人がそろいます。そうすると、自分に甘えなくなるというか、「もっともっとがんばろう」と思える環境になるんです。これも中学受験をする意味のひとつだと思います。

 麻布は、先生が「あれをやりなさい」「これをやりなさい」と指導するというよりは、「生徒自らの手で何かをつくりなさい」という校風で、何もしなければ6年間ボーッと過ごすこともできるんですよ。

 でも周りがみんなパワフルでエネルギッシュだから、触発されて各々が個性を見つけていくんです。絵を描く人、曲をつくる人、脚本を書く人…いろいろな個性がぶつかる学校でした。

 僕の持論では、好きなことに打ち込める子は、勉強で成績が伸びるのも早いんです。自分の好きなことで目的をかなえようと試行錯誤すると、いろいろな経験をします。マーケティングのことを考えたり、デザインを独学で修得したりして、独自の勉強癖がつくんですね。教科の勉強ではなくても、自分が好きなことで個性を爆発させるために、結局みんな何かしらの勉強をしているんです。

 例えば、ギターを弾ける友達が楽曲をつくってきて、「ドラムも叩けたんだっけ?」と聞いたら、楽曲ソフトをいくつも使って打ち込みのドラムで曲をつくっていたというように。その熱量が勉強に向くと、成績が伸びるのも早いです。

中学校入学式の日の松丸さん。麻布中学校・高等学校の創設者・江原素六の銅像と(画像提供:RIDDLER)
中学校入学式の日の松丸さん。麻布中学校・高等学校の創設者・江原素六の銅像と(画像提供:RIDDLER)
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受験の合否で人生は決まらない

 僕は、仕事のオファーを受けるときに、自分ができるかどうかではあまり判断していません。やりたかったら、できるかわからなくてもやってみる。これは「できないかもしれないからやらない、という子にはなってほしくない」という両親の教えのおかげです。

 保護者が子どもに中学受験をさせたくない理由が「子どもが嫌な思いをするかも」「失敗をして落ち込むかも」という心配なら、だからこそ挑戦させたほうがいいと僕は思います。いちばんもったいないのは、挑戦しないという選択肢。自分を成長させるのは、自分の限界を超えた瞬間なんです。

 人生、全部がうまくいくわけじゃない。親が守り続けても、絶対に人生のどこかで自信を失うタイミングが来ます。それが高校生、大学生となると、なかなか立ち直れないんですよね。

 だったら、中学受験に挑戦して、うまくいけば、がんばったことが実を結ぶんだと学べるし、うまくいかなかったとしても、がんばったことを褒め、がんばった分だけ絶対に成長しているし、その経験は今後の人生で必ず生きると教えてあげることができる。挫折したときに気持ちをどうコントロールすればいいかを伝えるいいチャンスが、小学校6年生で迎える中学受験じゃないかなと僕は思います。

 そして、受験で人生が決まるとは絶対に思ってほしくない。今はスキル評価の時代になっていて、学歴よりも、何ができるか、何をしてきたかという、スキルを磨く努力の積み重ねが重要になっています。その経験のひとつとして、中学受験に取り組んでほしいと思いますね。

松丸さん自身が塾長を務める「リドラボ」体験授業の様子。「リドラボ」では、「ひらめき学習」をカリキュラムの中心にして、楽しみながら考える力を伸ばすことができる(画像提供:RIDDLER)
松丸さん自身が塾長を務める「リドラボ」体験授業の様子。「リドラボ」では、「ひらめき学習」をカリキュラムの中心にして、楽しみながら考える力を伸ばすことができる(画像提供:RIDDLER)
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これから中学受験に挑戦する皆さんへ

 100%うまくいくなんてことは絶対にないけど、努力すれば100%成長することができます。なので、「自分は精一杯がんばった」と胸を張って言えるように本気で取り組んでほしい。

 その経験がこれからの人生で、自分の糧としてずっと残ります。とにかく、がんばる。昨日の自分より、今日の自分のほうができることが増えたな、わかっていることが多くなったなということが勉強でいちばん大切です。

 順位や点数に惑わされず、成長を積み重ねることを意識してほしいなと思います。

「自分の成長を含め、中学受験を楽しんでください!」
「自分の成長を含め、中学受験を楽しんでください!」
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取材・文/増田友梨(カラビナ) 写真/大木慎太郎(fort)

過熱する中学受験。親は何をすればいいのか徹底解説

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日本経済新聞出版編/日本経済新聞出版/1540円(税込み)