「生成AI(人工知能)を導入したけれど、どんな仕事を任せればよいのか分からない」「費用対効果を算出するにはどうしたらいい?」……そんな悩みに答えるのが2024年12月刊『AIに任せる技術 業務別「共生」戦略』(日本経済新聞出版)です。本書は営業やR&D、人事など8部署50業務を徹底分析し、活用方法から最新事例、想定されるリスク、費用対効果の測定方法まで幅広く解説しています。そんな本書から一部を抜粋します。1回目は、「AIを使うべき業務が分かる基本方針と判断軸」について。
AIの使いどころを見極める3つの基本方針
近年、AI技術は飛躍的に進化し、企業における様々な業務に活用されています。しかし、「AI万能」という考え方は誤解を招き、期待以上の成果を得られない可能性があります。
企業がAI活用に投資するからには、当然ながら一定の成果を出すことが期待されます。そのため、AIの導入ありきで進めてしまうと、「とりあえず簡単そうな業務でAIを使ってみたけど、お金がかかった割にはあまり役に立っていないな……」といった残念な結果に終わってしまうかもしれません。
そもそも自社ではAIを何に使うべきなのか? ということを考えていく必要があります。ここでは期待される成果に応じて、次の3つに分けて指針を提示します。
(2)人にできるがAIで高速化できること
(3)AIを組み合わせて人が行う作業の精度を高めること
(1)人にできないがAIなら実現できること
AIの卓越した処理能力を生かすことで、人にはできないような仕事をAIに任せられるようになります。ここでは生成AIに限って話を進めます。
高度な分析・予測:生成AIは膨大なデータを高速処理し、人間では困難なパターンや傾向を発見することができます。生産管理における需要予測などであれば、人の経験・勘よりも正確な予測結果を出力させることができます。
特定領域の創造的な作業:生成AIを用いることで、特定の領域であれば素人でも簡単に要求通りの出力結果を得ることができます。例えば、プログラマーでなくてもプログラムの簡単な仕様や希望条件を生成AIに入力することで、Python等のコードで記述されたプログラムを数秒のうちに作成することができます。
(2)人にできるがAIで高速化できること
人にできる作業であっても、生成AIに任せることで高速化するのであれば活用検討の候補になります。
単純作業・定型業務:自然言語の処理能力が高い生成AIを用いることで、単純作業や定型業務であれば作業内容の大部分を生成AIに任せてしまうことができます。例えば、自社の膨大な量の契約書を読み取らせて管理表をひたすら更新させるような作業、顧客からの簡単な問い合わせへの自動対応などです。
情報収集・分析:インターネット上の公開情報や社内データを大量に学習している生成AIであれば、その中から必要な情報を迅速に収集・分析することができます。例えば、新規参入を考えている製品についての初期的な市場調査などです。
(3)AIを組み合わせて人が行う作業の精度を高めること
(1)(2)が生成AI主体での作業を想定しているのに対して、(3)は人が主体の作業の中で生成AIを補助的に用いることで人がやることの精度を高める方向性です。
情報の補強:人の出力結果を生成AIに入力して、不足している情報を補強してもらうことができます。例えば、自社の新規事業の検討アイデアを生成AIに入力し、他の観点でのアイデアがあるかどうかを生成AIにチェックしてもらうことで網羅性を高めるなどです。
AIを使うべき業務が見える2軸
ここまでで、そもそも生成AIを何に使うべきなのかについての指針を提示してきました。前提の認識がそろったところで、次は自社・自部署の業務について、一つひとつ生成AIを使えるのかどうか整理していく必要があります。
ここからは、生成AIを使えるかどうかを判断するための業務整理の軸を提示していきます。
業務を整理するための軸は、「A 業務の中での判断に必要なデータ量」、「B 業務の中での判断に必要な変数の量」の2つです。
(A)については、生成AIが業務に必要な精度で判断できるようになるためには、一定量の学習データが必要です。そのため、生成AIの学習に必要なだけのデータを確保することができる業務なのかどうかが、生成AIを使える業務の選定において大事なポイントになります。
(B)については、人は業務の中で様々な変数を考慮した上で、総合的に判断しています。そこで重要な変数をすべてデータとして生成AIにインプットすることができれば、生成AIは高い精度で判断することができます。
とはいえ、業務の中で考慮するべき変数が多くなればなるほど、生成AIにインプットしなければいけない変数も増えます。属人的な業務であれば、職人が説明の難しい匠(たくみ)の勘で判断していることも多いので、生成AIにすべての重要な変数をインプットするのは難しくなります。そのため、判断に必要な変数が多い業務なのかどうかが、生成AIを使える業務を選定する上で大事なポイントです。
実際に業務を整理していく上では、(A)を縦軸、(B)を横軸においた4領域のフレームに自部署の業務をマッピングしていくと、どの業務がどの程度AI活用を検討できるのかについて各領域ごとに分析・解釈することができるようになります。
連載3回目以降で、実際に上のマトリクスを活用して部署ごとの業務を分析し、生成AIの活用方針について議論していきます。
アバナード株式会社編/日本経済新聞出版/2420円(税込み)


