新刊『道具としてのアイデア』では、今注目の起業家が「天才でなくてもできること」を尽くして、逆境と困難を突破してきた「成功パターン」を、マインドセットと行動原則に分けてノウハウ化。アイデアを「ここぞ」の場面で繰り出す必殺技ではなく、日常的に役立てる「道具」として活用する術(すべ)が身につき、何が起きても「なんとかなる」と思えるようになります。今回はすべての物事の起点になる「信念」について、本書から一部抜粋し、お届けします。
失敗パターンの共通点は「信念の掘り下げ不足」
私たちは常に「何かを実現したい」という気持ちを心の中に持っているものです。
ところが、そんな思いを抱きながらも、なかなか一歩目が踏み出せない。
うまくことが運ばず、途中で挫折してしまう。
私は、個人的な取り組み、起業家と開発者として関わった数多くのプロジェクトを通じて、何度となく壁にぶつかってきました。
その繰り返しの中で、失敗する取り組みには、ある共通点があると気づきました。
それは、「自分の思いについて掘り下げる」ことの不足。
「なぜ、それを実現したいのか」という「行動の動機」が物凄く大切なのです。
特にビジネスは、なんとなく「実現できそうだから」「自分に向いていそうだから」「儲かりそうだから」「人から喜ばれそうだから」「指示されたから」といった理由で歩き始めてしまうことが少なくありません。
しかし、行動の動機となった思いを深掘りして、しっかりと納得しないまま前に進むと、必ずと言っていいほど道に迷ってしまいます。
どんな取り組みにも、必ず困難が待ち受けているからです。
「なぜ自分がこれを実現したいのか」がはっきりしていないとします。
するとまず、心が折れます。
あるいは、何かの誘惑に負けて、違う道に目移りしてしまいます。
例えば、新規事業を始めるとき、「既存事業を真似て、ひと儲け」くらいの動機で始めていたら、チームは空中分解してしまうでしょう。
即席の動機では、困難に立ち向かうエネルギーが出てこないからです。
コンパスが間違った方向を指し示しているのに気づかず動き出すと、悪い結果が待っています。
物事が動き出したら、トライ&エラー、エラー&ラーンで何度も試せばいい。
でも、スタート時点での方向性を間違えていたら、致命的です。
だから、自分の信念をしっかりと掘り下げること。
心が納得するまで手を動かさないことが大切です。
常に「今の信念」を持とう
私は、行動の動機となる思いを「信念」と表現しています。
信念は「心から納得して、従うことのできる価値観」であり、自分が進みたい方向を指し示すコンパス。
誰かが決めるものではなく、自分で決めるものです。
ただ、「信念」という言葉に「重たさ」を感じる人もいると思います。
一度決めたら貫かなければいけない。すべてをなげうってでも取り組まなければいけない。曲げてはいけないもの。そんなイメージがあるからだと思います。
しかし、「信念」を道具として捉えるなら、もっと軽やかで柔軟に活用できます。
信念は、行動の動機となり、自分の進む方向を指し示すコンパスだからです。
そのため、その時々の年齢や環境、状況によって変わっていくものでもあります。
10代、20代、30代、40代、50代、学生時代、社会人としての新人時代、中堅時代、ベテラン時代……。
信念は変化して当然で、そこに優劣はありません。
言葉として重たいようなら、「目標」「ゴール」「やりたいこと」「夢」と言い換えてもいいと思います。
信念は変化し、進化し続ける
信念は変化し、進化し続けるもの
大切なことなので、重ねてお伝えしたいのは「信念は変化し、進化し続けるものだ」ということです。
例えば、5年前の自分と今の自分を比べたら、信念の変化や進化に気づくのではないでしょうか。もしかすると、昨日と今日、今日と明日でも変わってくるかもしれません。
でも、それでいいと思います。
大切なのは、その時点での自分の信念を明確にしておくこと。
すると、自然と判断基準が定まります。
「なぜ自分がこれに取り組んでいるか」がはっきりしていれば、複数の選択肢があったとしても、進むべき道が見えてきます。信念は変化し、進化し続けるものだからこそ、現時点での自分の信念を掘り下げておく必要があるのです。
程涛(著)/日経BP/1760円(税込み)




