新刊『道具としてのアイデア』では、今注目の起業家が「天才でなくてもできること」を尽くして、逆境と困難を突破してきた「成功パターン」を、マインドセットと行動原則に分けてノウハウ化。アイデアを「ここぞ」の場面で繰り出す必殺技ではなく、日常的に役立てる「道具」として活用する術(すべ)が身につき、何が起きても「なんとかなる」と思えるようになります。今回は、道具としてのアイデアに欠かせない「マインド」を、本書から一部抜粋し、お届けします。

成功する人は、能力よりも「困難への対応力」が高い

(写真:komagym/stock.adobe.com)
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 人は本能的に未知の問題を「脅威」として認識します。
 だから、何らかの予期せぬ事態、障壁に遭遇したとき、私たちは「嫌だな」「怖いな」「面倒だな」という感情を抱きます。
 すると結果として、多くの人が手や思考を止めてしまいます。

 私はこうした逆境を乗り越えて前進し続けるために「AQ(Adversity Quotient)」の考え方を活用しています。

 この言葉に私が出合ったのは、東京大学の修士生のときにpopInを起業してしばらく経った頃でした。たまたま読んだ本で、アメリカの組織コミュニケーションおよび組織発展の専門家であるポール・G・ストルツ博士が提唱した概念を知り、「なるほど」と思ったのを覚えています。

 当時、私は「うまくいく起業家たちとそうではない人の間で、何が違うのだろう」という疑問を抱いていました。
 同じようなスタートを切り、同じような事業環境で、同じような課題に直面しているのに、信念を実現する起業家とそうでない起業家がいる。
 起業家に限らず、結果を出せる人と、途中で諦めてしまいがちな人の違いはどこにあるのか……。

 そんなことを考える中で、AQとCQ(この後、詳述)の概念に出合ったのです。
 「AQ」は、人が困難や逆境に直面した際にどの程度うまく対処できるかを測る指標で、今も組織心理学や教育分野で系統的な研究が続けられています。

 ただ、私は学者ではないので、AQを「逆境に負けない力。自ら進む力。行動を支えるエンジン」というイメージで捉えています。

 そして、成功する起業家、成果を上げる人に共通する能力だと気づいたのです。

 私たちが何かを実現したいときに必ずやってくる困難な状況。
 それに対応できるかどうかが、成功と挫折の最初の分かれ道となります。また、成功するためには、大きなチャンスが舞い込むまで忍耐強く行動し続けることも重要です。

 そして、最も大切なのは、前に進もうと考え、動きを止めないこと。

 その意味でAQの本質は、困難な状況を「対応可能だ」と捉え直すことにあります。
 つまり、AQが身についていれば、同じ状況を「面倒だけれど、対応可能なもの」に変換できるのです。こんなイメージです。

インプット:「困難」という状況
   ↓
アウトプット:「まだまだやれる」というマインド

 この変換能力を高めることで、どんな逆境も乗り越えていけるようになります。

マイナスから勝ち筋を見いだす「CQ」という考え方

(写真:木村 隆/stock.adobe.com)
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 AQが逆境に負けない力である一方、「CQ(Curiosity Quotient)」は好奇心をチャンスに変える力です。

 例えば、困難に直面しているとき、AQはマイナスをゼロにして行動し続けるエンジンになりますが、CQはネガティブな状況の中からも逆転のヒントを見つけ出す助けとなります。
 つまり、マイナスをゼロではなく、プラスに、それも2倍3倍のプラスに変えられるアイデアを探し出してくれるのです。

 CQの概念を提唱し始めたのは、社会心理学者でロンドン大学やコロンビア大学で研究を続けるトマス・チャモロ=プリミュージク教授です。私はちょうどAQを知ったのと同じ頃に、この言葉に出合いました。

 信念を実現する過程で諦めず、行動し続けられる人はAQが高い。
 しかし、成功している人たちは、別のマインドも備えているように感じていました。

 それはチャンスを見逃さない観察眼のよさであったり、他とは違う解決策を見つける創造性であったり、「ここぞ!」という場面を逃さない思いきりのよさです。
 日常でも、困難な状況でも、CQの高い人は隠れたチャンスや解決策を探し出すことができます。

「おもしろそうだから試してみよう」
「あれ? この方法とこのやり方を組み合わせたらうまくいくかも?」
「大ピンチになって注目を浴びている今こそ、大チャンスにひっくり返るのでは?」

 こうした新しい可能性を探知する力は一体どこからくるのだろうか。
 CQという概念を知ったとき、成功する人たちのマインドの根底には、レーダーのように働く「好奇心」があることに気づきました。

 好奇心を持ってあらゆる状況からチャンスを見つけ出す。
 そして、隠れていた可能性を探知する。
 それを現実的な解決策に変換する力。

 このレーダーのような機能を備えたマインドセットがCQの本質です。

頭の使い方をちょっと変えて、問題をチャンスにひっくり返す

(写真:Hanasaki/stock.adobe.com)
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 AQとCQのマインドを組み合わせると、「別の切り口から見た解決策はあるだろうか?」と探求していくことができます。

 多くの場合、1つの新たな切り口だけで厳しい状況を完全に覆すことはできません。
 しかし、60%の解決の可能性が見えれば、残り40%への対処法も見つかります。
 複数の切り口を組み合わせることで、よりよい解決策が生まれるのです。

 AQとCQを組み合わせてピンチを乗り越えていくマインドは、経験を重ねるほど磨かれていきます。

 ただ、そこに魔法のような手法があるわけではありません。
 信念に基づいた行動を繰り返すことで、AQが鍛えられ、CQによって別の切り口から考える思考も習慣化されていきます。

 CQは困難な状況に隠された可能性を探知し、それをチャンスに変える力です。
 このCQによって、「別の切り口から考える」思考が習慣化され、能力はらせんを描くように高まっていくのです。

1 「なぜ?」を3回繰り返す習慣で、好奇心を枯渇させない
2 課題を解決する「新しい切り口」を探す
3 すべての経験に「意味づけ」をする

 CQを鍛えるこの習慣を身につけると、ネガティブな状況をプラスに転換できるようになります。
 信念を持ち、AQとCQを組み合わせることで、どんな困難も成長の機会に変わります。

 困難は避けるのではなく、むしろ積極的に向き合い、そこから最大の価値を引き出していく。このマインドセットで、やる気にエンジンをかけ続けることで、真の行動力を得られます。

(写真:KSSM tomo/stock.adobe.com)
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今注目の起業家が「天才でなくてもできること」を尽くして、逆境と困難を突破してきた「成功パターン」を、マインドセットと行動原則に分けてノウハウ化。アイデアを「ここぞ」の場面で繰り出す必殺技ではなく、日常的に役立てる「道具」として活用する術(すべ)が身につき、何が起きても「なんとかなる」と思えるようになる1冊です。

程涛(著)/日経BP/1760円(税込み)