内容紹介

マネタリスト、シカゴ学派、新自由主義の元祖、レーガン、サッチャー政権に大きな影響を与えたノーベル経済学賞受賞者……。2006年11月、95歳で亡くなったミルトン・フリードマンには、多くのキャッチフレーズが付いている。ケインズと並ぶ20世紀を代表する経済学者の思想を一言で言えば、リバタリアニズム(自由至上主義)である。グリーンスパン・前アメリカ連邦準備理事会議長もリバタリアンであり、その思想的ルーツはアメリカ建国の父たちにまで遡る。最小の政府権力と最大の個人的自由を標榜する。これは、保守主義とは異なる思想である。
 フリードマンが1962年に刊行した『資本主義と自由』では、廃止すべき14の政策
が挙げられている。
 ●農産品のパリティ価格(政府による買取保証価格)制度●輸入関税または輸出
制限●産出規制●家賃統制、全面的な物価・賃金統制●法定の最低賃金や価格上限
●細部にわたる産業規制●連邦通信委員会によるラジオとテレビの規制●現行の社
会保障制度●特定事業・職業の免許制度●公営住宅●平時の徴兵制●国立公園●営
利目的での郵便事業の法的廃止●公営の有料道路。
 官営郵便事業の廃止は日本でもようやく小泉政権時に実現したが、市場機能への信頼に基づいたフリードマンの提言は、21世紀の潮流となるのかどうか。本書はフリードマンの生前に許可をもらって取材した「公認」の評伝であり、生い立ちから学者としての活躍までを関係者の証言などを基に丹念に描いた。